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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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今週のメッセージ(2008年5月19日)~少年事件とM&Aの共通点(その2)~

嫌がる校長先生を説得して「再度、学校で受け入れ、継続的に面倒を見ていく」旨の約束も取り付けました。これまで子どもと仲が悪かったお父さんも、今回の事件をきっかけに考え方が変わり、毎日のように自主的に鑑別所に面談に行ってくれました。「悪友との付き合い」を断ち切るために、子どもの携帯電話はお母さんに持ってもらい、掛かって来る電話には逐一丁寧に対応し、今どれほど大事な時期を子どもが迎えているかを、その悪友一人一人に丁寧に説明してもらいました。子どもは鑑別所の中で、今の心境を感想文に書いてくれています。これから守ることを箇条書きにした書面も裁判所に提出済みです。被害者との間には示談が成立し、被害感情も収まっています。審判には両親ともに出席。万全の状態で臨んだ審判。

しかし、まだ足りないものがあります。それは・・・審判の後に子どもに「大きな期待」を掛け続ける大人の存在です。もちろん、両親や学校の先生は子どもに期待をします。しかし、子どもはときにその期待に素直に応えたくなかったりします。また、保護観察処分になれば、保護監察官や保護司が子どもを見守ります。ただ、保護監察官や保護司さんには審判後に初めて会いますので、信頼関係を築くまでに少し時間が掛かります。

残念なことではありますが、上記のようにやるべきことを全てやって審判に臨み、審判後も引き続き両親や学校が頑張っても再犯に至る子どもが多いのが現実です。子どもは、最初は頑張りますが、半年、1年と経つと、徐々に「どうせ自分なんて」という思いを再び抱き始めることが多いのです。大人である私たちですら、仕事がうまく行ったときはいい気分になりますが、次に失敗するとすぐに暗い気分になります。精神的により不安定な子どもの場合、環境の微妙な変化や大人とのちょっとしたやり取りによって、自信を失って再度非行に走るのはむしろ自然な現象と言えます。ですから、どんなことをしてでも、子どもが再度「いい加減な気持ち」「自暴自棄」になって同じことを繰り返してしまうような「環境」を作らないようにしなければなりません。そのためには、両親や家族以外の誰か大人が子どもに期待を掛けて、「僕が、私が見ているから、頑張ってね」と声を掛け続ける必要があるのです。審判が終われば、これまで毎日のように話をしていた鑑別所のスタッフも、家裁の調査官も去っていきますが、彼らに、子どもの面倒を引き続きみるようにお願いすることは物理的に無理です。よって、その役目を引き受けるのは付添人弁護士しか居ません。

審判が終われば付添人弁護士の仕事も通常そこで終わりますが、私は、その後、保護観察期間が終わるまで、あるいは「1年間」「18歳になるまで」といった区切りの良い期間を定めて、最初は毎週、途中から月に1度、自分の法律事務所に子どもを呼び出すことにしています。両親と一緒に来てもらってもいいですし、活発な子なら独りで来てもらっても構いません。こちらからの宿題は、毎日つけてもらう「一行日記」です。日記に書くことは、①誰とご飯を食べたか、②誰と会ったかの2点で、あとは好きなことを書いてもらって構いません。子どもが家族とご飯を一緒に食べなくなれば再び危機が迫っていると考えます。子どもが「今日会った人」の欄に、非行事件の当時に遊んでいた友達の名前を書けば要注意です(もちろん嘘をつかれている可能性もありますが)。面談ごとにその日記を見ながら、毎日どのように暮らしているかを聞きます。もちろん取調べではありませんので、雰囲気は明るく、8割方は面白い話をしながら、さりげなく子どもの状態をチェックし、自分がどれほど彼・彼女を信頼しているか、期待しているかを肌で感じてもらいます。実際に期待しているわけですから、毎週、毎月会っていれば子どももしっかり感じ取ってくれます。また、興味があれば、子どもを法律事務所の中まで案内します。きれいなお姉さんがたくさん居てびっくりするかも知れませんが、普段は接しない大人の世界を肌で感じるのも、つまらない原付窃盗などに走る気分を喪失させる良い薬です。以前、再犯であったにも拘らず例外的に保護観察にしてもらった少年は、「六法全書」が欲しいと言って来ましたので、プレゼントしました。読んでいるかどうかは分かりませんが、原付の鍵の壊し方に興味を持つよりはよほどいい傾向だと思います。そういえば、その子どもの審判では、保護観察にする条件の一つとして、「保護観察期間終了まで、付添人弁護士の事務所に定期的に通うこと」という項目が設けられていました。裁判所がそこまで付添人弁護士を信頼してくれるのは有難いことです。そして、子どもは社会の宝ですので、こうやって裁判官や弁護士が役割分担をしながら子どもを育てていくのはむしろ当然のことなのかも知れません。

長くなりましたが、少年事件とM&Aの共通点は、アフターケアが重要だということです。少年事件の場合は、審判で保護観察にしてもらうことが一つのゴールですが、「本当にしんどい勝負」は審判後と言えます。その意味で、審判は子どもにとっても子どもの家族にとっても、長い戦いのスタートに過ぎないのです。M&Aでは、つい、合併すること、事業を譲り受けることなどをゴールとしてクロージングを目指しがちですが、本当の勝負はクロージング後に待っています。実は多くの案件が「失敗」と評価されているM&Aの世界で(*1)、本当に幸せな結婚を実現するには、無理な相手に手を出さないということも重要ですが、結婚後の「融和」「融合」もとても大切です。Post Merger Integration(合併後の融合)という言葉が使われるようになってしばらく経ちますが、M&Aの本当の難しさもクロージング後に存在すると感じます。この点は、また機会を改めて考えてみたいと思います。


(*1) M&Aの失敗に関する参考文献: ロバート・E・ブルーナー「M&Aは儲かるのか。なぜ企業買収に失敗するのか」(一灯舎)

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