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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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今週のメッセージ(2008年5月18日)~少年事件とM&Aの共通点(その1)~

私のライフワークは訴訟と少年事件です。ここで「ライフワーク」とは、採算や利益に過度に囚われることなく、純粋に「やりがい」を動機として一生続けて行きたい仕事のことを指しています。訴訟は、当事者の代弁者となって相手方と粘り強く交渉し、中立的立場にある裁判官にこちらの主張を汲み取ってもらうべくあの手この手で説得作業を行なうという弁護士業の原点ですし、証人尋問・当事者尋問の難しさ、奥深さは、一生を掛けて追求するに値するテーマだと思っています。この訴訟の面白さと難しさについてはまた書きたいと思いますが、今日のトピックは、もう一つのライフワークである少年事件です。

少年事件は、通常は一本の電話からスタートします。電話の相手は大抵は弁護士会で、「○○警察署に、16歳の少年がバイク窃盗で捕まっているのですが、両親が弁護士と相談したいと言っていますので、面談に行ってあげて下さい。」・・・弁護士会は私が少年事件を頻繁にやっていることを知っていますので、当番弁護士(*1)でなくとも、月に1回はこのような電話が掛かって来ます。こちらはそのときややこしいM&Aの契約書とにらめっこをしていたり、Due Diligenceの資料の山に囲まれていたりしますが、何とか時間を作って必ずその日のうちに子ども本人と両親に会いに行きます。

子どもは知らない弁護士が突然やって来て質問攻めをすればそれだけで嫌気が差すでしょうから、まずは法律事務所で両親とじっくり話をし、子どもの生い立ちや性格、これまでの非行歴や学校での成績、趣味や部活動、兄弟との関係、友人関係などあらゆる点について聴き取りをしてから出掛けます。ビジネス→少年事件への頭の切り替えは警察に向かう電車の中で行ないます。警察で初めて出会った子どもは、通常あまり喋りませんし、嘘をついたり、隠し事をしたりするのも普通に見られることですので、細かいことは気にせず、子どもの気持ちになって静かにゆっくり、ときには笑いながら、時間が許す限り話をします。事件がバイク窃盗であれば、バイクの話をじっくりします。どんな種類のバイクが好きかとか、最近トレンディーな鍵の壊し方は何かとか、少年からいろいろ教えてもらいながら、こちらも負けじとバイクの話をします。私の得意技は大型バイクの話です。少年は免許もなくお金もなかったりしますので、盗むのは大抵「原付」ですが、本当に面白いのはもっと速い高性能バイクですので、高校を卒業して免許も取ってアルバイトをしてお金を貯めて大きなバイクを買えばどんなに楽しいかを延々と話して聞かせたりもします。根が素直な子どもは段々と目を輝かせてきますが、再犯で少年院に行くことを覚悟している少年はそれでもうつむいて泣いていたりもします。

多くの子どもは、家裁送致の後に観護措置が採られて少年鑑別所に収容されますが、弁護士はこの家裁送致の時に「弁護人」から「付添人」に名称を変え、その後、審判まで少年や家族と一緒に歩むことになります。事実でないことが調書に取られていたり、不当に拘留や観護措置が採られた(採られそうな)場合には弁護人あるいは付添人として懸命に抗議の活動を行ないますが、多くの事件では事実関係にはさほど争いがなく、後は、家庭裁判所で開かれる審判で、少年院に行くか、保護観察になるかという結論部分が関係者の最大の関心事です。「少年院に行くか、保護観察になるか」というのは子どもにとっては一生に関わる大問題です。逮捕されたり、鑑別所に入れられたことで、既に学校は退学の危機です。少年院に半年や1年行けば、退院後に別の学校が受け入れてくれたとしても、いわゆる「ダブリ」(留年)となり、一年下の後輩と机を並べて授業を受けなければなりません。私であれば、そんな状態で学校に行くのは嫌ですので、中退して、また悪いことをするかも知れません。少年院の効用を否定するものではありませんが、そういうわけで、付添人弁護士の最大の仕事は少年院送りを回避し、保護観察にしてもらうことであると考えています(この点は、家庭裁判所と意見がよく食い違う点です)。

そのために、弁護士がやるべきことは山のようにあります。最も大事なのは、子どもに度々会いに行くこと。それから、両親とも何度も面談し、ほとんど必ずと言っていいほど存在する「親子間のひずみ」の原因を探り、関係がうまく行っていない親と子どもとの間の関係を少しでも修復できるようにお膳立てすること。多くの場合既にその子どもの退学処分を決めている学校の校長先生や教頭先生を訪ねていって、担任の先生も交えて話をし、子どもに再度チャンスを与えてくれるよう頼んで説得すること(多くの学校が、その生徒が他の生徒に悪影響を及ぼす可能性や、再度事件が起きたときの責任問題を気にして保守的です)。家裁の調査官や裁判官と面談し、付添人としてはここまでやったから何とか保護観察、ダメでも試験観察にして欲しいと頼むこと。被害者の存在する事件であれば、被害者が被った損害を弁償し、「少年を許す。少年院送致は望まない。」という書面をもらうこと。裁判官が最も気にする「悪友との付き合い」を断ち切るための方策を考えること。・・・etc. 鑑別所に収容されてから審判までは通常1ヵ月ほどしかありませんので大忙しになりますが、休んでいる暇はありません。毎日のように動いていてもあっという間に審判当日を迎えます。

さて、いよいよ審判です。

嫌がる校長先生を説得して「再度、学校で受け入れ、継続的に面倒を見ていく」旨の約束も取り付けました。これまで子どもと仲が悪かったお父さんも、今回の事件をきっかけに考え方が変わり、毎日のように自主的に鑑別所に面談に行ってくれました。「悪友との付き合い」を断ち切るために、子どもの携帯電話はお母さんに持ってもらい、掛かって来る電話には逐一丁寧に対応し、今どれほど大事な時期を子どもが迎えているかを、その悪友一人一人に丁寧に説明してもらいました。子どもは鑑別所の中で、今の心境を感想文に書いてくれています。これから守ることを箇条書きにした書面も裁判所に提出済みです。被害者との間には示談が成立し、被害感情も収まっています。審判には両親ともに出席。万全の状態で臨んだ審判。

しかし、まだ足りないものがあります。それは何でしょうか?・・・次回に続きます。


(*1) 当番弁護士とは、日本弁護士連合会が全国都道府県の弁護士会と協議しながら創設した弁護士派遣制度で、逮捕された人が警察や家族を通じて所管の弁護士会へ依頼することによって、その日に待機している当番弁護士が駆けつけて必要なアドバイスを提供する制度です。

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