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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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インサイダー取引規制について(その6)~アメリカのルール~

アメリカにおける証券規制は1911年のカンザス州法を皮切りに当初州法ベースで始まりましたが、州法には、州をまたいだ大掛かりな証券詐欺を規制する力がなかったため連邦法制定の要請が強まり、1933年にSecurities Act(証券法)が、1934年にSecurities Exchange Act(証券取引所法)が制定されました。現在では、これらの連邦法による規制がメインとなっていますが、州内の証券発行・流通に関しては今でも通称Blue Sky Lawと呼ばれる州法の守備範囲ですので、連邦法と州法による二段構えの証券規制システムになっています。

ところで、アメリカの連邦証券法・証券取引所法には、日本のようにインサイダー取引を正面から禁止する規定が存在しません。これは、アメリカがコモンロー(判例法)の国であることに関係しています。インサイダー取引は1933年以前から存在していましたが、その違法性は、裁判所が通常の不法行為法を用いて判断していました。そこでの理論的枠組みは、「証券の売買を行う者は相手方に対して不実表示を行ってはならないが、インサイダー情報を持っていながらこれを隠して売買を行うことはその情報開示義務違反に当たる」というものでした。すなわち、特に証券法で規制するまでもなく、不法行為としてインサイダー取引が禁止されていたのです。ただ、1934年取引所法の10条(b)項に基づいて、1942年にSECが規則10b-5(詐欺防止条項)を制定したことにより、インサイダー取引はこの規則10b-5の証券詐欺に該当すると考えられるようになりました。すなわち、考え方の枠組みはさほど変わらないものの、制定法上の根拠として規則10b-5が利用されるようになりました。

SEC規則の中で最も重要な規定といっても過言ではない規則10b-5(Employment of Manipulative and Deceptive Practices、価格操作的または詐欺的取引の禁止)は、条文としてはとても短いもので、

It shall be unlawful for any person, directly or indirectly, by the use of any means or instrumentality of interstate commerce, or of the mails or of any facility of any national securities exchange,
(a) To employ any device, scheme, or artifice to defraud,
(b) To make any untrue statement of a material fact or to omit to state a material fact necessary in order to make the statements made, in the light of the circumstances under which they were made, not misleading, or
(c) To engage in any act, practice, or course of business which operates or would operate as a fraud or deceit upon any person,
in connection with the purchase or sale of any security.

(訳:
証券の売買に関し、直接または間接に、州際通商の手段、郵便または国の証券取引所の設備を利用して、以下の行為を行うことは違法となる。
(a) 詐欺を行うための策略、計略、技巧を用いること
(b) 重要事実について不実表示をすること、または、周囲の状況に照らせば誤解を避けるために必要な重要事実についてその表示を省略すること
(c) 詐欺もしくは欺罔となり、またはそのおそれがある行為、慣行または業務を行うこと)

とのみ定めています。そして、インサイダー取引は、証券の発行体、株主またはその他の情報源となる者に対して負う信認義務に違反して、重要な非公開情報に基づき当該証券の売買を行なう行為ですので、規則10b-5が禁止する「詐欺」に該当する・・・という解釈です。

何をもって「重要事実」というかに関しては、日本の金商法では既に述べたとおり類型ごとにある程度整理されていますが、アメリカでは、判例法が解釈基準を設けているに留まり、

Information is material if there is a “substantial likelihood that the disclosure … would have been viewed by the reasonable investor as having significantly altered the ‘total mix’ of information made available.”
(訳:
合理的な投資家が、その情報の開示が、入手可能な情報の総体実質的に変更することになると判断するであろう蓋然性が高い場合に、その情報は重要情報となる。)

とされています。モノサシとしては抽象的ですので、結局、ケースごとに事実と状況を精査しながら重要事実に該当するかどうかが判断されることになります。

アメリカのインサイダー取引規制を理解するには、誰がインサイダーに該当するかといった他の論点についても検討し、SECが近年追加で定めたレギュレーションFD(Fair Disclosureの略)や規則10b5-1、10b5-2などについても知っておく必要がありますが、細かくなりますので、また機会を改めて紹介したいと思います。

なお、1934年取引所法16条は、インサイダーに証券売買に関する報告義務を課し、かつ、短期売買差益を発行者に返還させる義務を負わせています。この点、日本でも、金商法163条は、役員および主要株主(総株主の議決権の10%以上を保有する株主)に対し、売買報告書の提出義務を負わせ(*1)、かつ、164 条は短期売買差益の返還請求について定めていますので(*2)、この点は日米ともに同様の規制となっています。


(*1) 役員および主要株主が自社の特定有価証券等の売買等をした場合には、当該売買等に関する報告書を売買のあった日の属する月の翌月15日までに、内閣総理大臣(財務局長等)宛てに提出しなければなりません。
(*2) 役員および主要株主が自社の特定有価証券等の短期売買(6ヶ月以内の反対売買)で得た利益について、当該上場会社は、役員および主要株主に返還請求することができます(会社が当該請求を行わない場合、株主が代位請求可)。

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