プロフィール

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

インサイダー取引規制について(その3)~規制対象者の範囲~

続いて、誰がインサイダー取引の規制を受けるのかについて見ておきたいと思います。金融商品取引法上、インサイダーとして扱われるのは、
ア 未公表の「重要事実」を知った「会社関係者」及び過去1年間に「会社関係者」だった人(166条1項)
イ  「情報受領者」に該当する人(166条3項)

の二種類です。

まずは、アの「会社関係者」の意味ですが、次の①~⑤に該当する人たちがインサイダー取引の規制を受ける「会社関係者」になります。

① 自己の職務に関し重要事実を知った、上場会社等(*1)の役員及び従業員
② 会社法上の閲覧権の行使に関し重要事実を知った、上場会社等の帳簿閲覧権者(*2)
③ 権限の行使に関し重要事実を知った、上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者(*3)
④ 契約の締結、交渉又は履行に関し重要事実を知った、上場会社等と契約を締結している者または契約締結交渉中の者(*4)
⑤ 上記②、④が法人である場合、職務に関し重要事実を知った、当該法人の他の役員及び従業員等


ここでは、③を除いて、「派遣社員、パートタイムおよびアルバイト」も含まれる点に注意する必要があります。また、「役員及び従業員」というのは、正確には、「役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者」を指します。したがって、通常、会社法上の役員には該当しないと考えられている顧問や相談役も、会社との関係によっては、「代理人、使用人その他の従業者」に該当する可能性がありますので、この点も要注意です。

続いて、イの「情報受領者」というのは、インサイダー取引規制を受ける関係者から情報を受け取った者を指しますが、正確には、次の①・②に該当する人たちが含まれます。

① 会社関係者又は過去1年間に会社関係者だった者から直接「重要事実」の伝達を受けた者
② 職務上の情報受領者(*5)と同一法人の他の役員又は従業員等が、その職務に関し「重要事実」を知った場合


ここでは、いわゆる「第一次情報受領者」のみが規制対象となっており、第一次情報受領者から更に伝達を受けた「第二次情報受領者」は規制対象から外されています。ただし、上記②はその例外を定めるもので、第一次情報受領者が職務上情報伝達を受けていた場合には、その第一次情報受領者と同じ会社に勤める同僚は、本来は第二次情報受領者となるところを格上げされて、あたかも第一次情報受領者であるかのように規制を受けることになります。

整理しますと、合併案を検討している会社の役員や従業員は「会社関係者」、その役員や従業員の家族や友人で合併案を聞かされた者は「情報受領者」に該当します。合併に関して直接相談を受けている弁護士等の専門家は「会社関係者」の④に該当し、直接相談を受けているわけではないがディールの過程で大なり小なり関与した者は少なくとも「情報受領者」になると考えられます(関与の度合いが大きかったり、会社との間で委任契約やアドバイザリー契約を結んでいれば「会社関係者」に該当します)。他方で、二回「又聞き」を挟めば、第二次情報受領者になりますので、原則として金商法166条3項が定める「情報受領者」ではないことになります。ただし、情報受領者の②の類型には注意が必要です。また、落ちていた資料から合併計画の存在を知ったに過ぎない者や、エレベーターの中でたまたま他人の話を立ち聞きしたに過ぎない者は、規制を受ける「情報受領者」とはなりません。

一般的には、情報共有者の数が増えれば増えるほど、情報漏洩のリスクも高まると言えます。そこで、実務上は、案件にコードネームを付し、重要書類はパスワード管理を行うなどの方法によって、厳格な情報管理を行っています。また、会社、法律事務所、会計事務所を問わず、プロジェクトチームのメンバーには、当該M&Aの計画が「公表」されるまでの間、当事会社の株式売買を禁止し、秘密を厳守することを求める文書を配布するのが通常です。


(*1) 親会社および子会社を含みます。
(*2) 総株主の議決権の3%以上を保有する株主(法人の場合はその役員等)
(*3) 上場会社の監督官庁に勤務する公務員等
(*4) 取引先・顧問弁護士・会計監査人・元引受証券会社(法人の場合はその役員等)等。日本エム・アイ・シー事件最高裁判決(平成15年12月3日、判例時報1845号147頁)は、ここでいう「契約」は、「重要事実」の前提となる契約に限定されないという見解を示しました。よって、アドバイザリー契約、委任契約、守秘義務契約、融資契約などが広く含まれることになります。
(*5) 「職務上の情報受領者」とは、職務に関し、上場会社の責任者や担当者から「重要事実」を直接伝達される者を意味します(例: 企業業績の分析等を行う証券アナリストや新聞記者など)。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/93-db0605ed

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。