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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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反対株主の株式買取請求権について(その5)

引き続き、Delaware Block Methodの説明をしていきたいと思います。

ウ Investment/Earnings Value (投資/収益価値)について
これは日本で収益還元法や配当還元法と呼ばれる株式評価手法と同じく、対象会社の収益(通常は過去5年程度の平均収益)を利回りで割って会社の収益還元価値を計算するものです。後に述べるDCF法も収益還元法の一種ですが、DCF法は将来収益の現在価値を考慮する点で一応区別しておきたいと思います。DCF法とは異なり過去の収益のみを考慮した結果であるInvestment/Earnings Valueについては、「継続企業としての価値」を適正に評価できているか(例えば、成長企業における収益価値を正確に評価できるか)という疑問があります。

以上でDelaware Block Methodで主に考慮される3種類の評価方式についての説明を終わりますが、Delaware Block Methodでは、ここまでに述べた複数の評価手法を用いて出てきた数字のいずれかをピックアップして採用するのではなく、それらの金額について一定の割合で加重平均した数値が結論として採用されます。すなわち、例えば、
ア Net Asset Value: 1,000円
イ Market Value: 2,000円
ウ Investment/Earnings Value: 3,000円

と仮定すると、アを30%、イを20%、ウを50%といった割合で配合し(その割合は対象会社の置かれている状況と算定の目的に応じてケースバイケースで決める)、株価は
1,000円×0.3+2,000円×0.2+3,000円×0.5=2,200円
となります。

では、なぜ、特定の数値を採用せずに、全ての数値を少しずつ持ち寄って合計するのでしょうか?・・・それはシンプルに言えば、どの数字をとってみても、それ単独では会社の価値を適切に反映しているとはいいがたい、すなわち、単独では信頼できないからです。しかし、信頼できない数字を組み合わせれば結果が信頼できるものに生まれ変わるものではありません。一応、理論上は、
資産価値の按分比率: 企業の清算の可能性
市場価格の按分比率: 株主が所有する株式を売却する可能性
収益価値の按分比率: 一定期間に株主が所有株式から利益を得る可能性

を示していると言われています。しかし、株主や企業は選択を迫られたその瞬間において「極大の利益が得られる一つの行動」を選択しますので、それぞれの可能性が何%存在するというのは本来測定不能なものだと言えます。結局、必ずしも明確ではない理由付けによって、個別の計算結果に割り当てる按分率が「裁判所の裁量」によって決定されること、および、そもそも個別の算定手法で得られた数字自体に信頼性がないことに対する批判の声が高まり、Delaware Block Methodは、裁判所自らが「Delaware Block Method はもはや支配的な地位を有し得ない」と述べたWeinberger v. UOP, Inc., 457 A.2d 701 (Del. 1983)事件以降、DCF法にそのポジションを奪われることになります。

さて、日本では、国税庁の昭和39年の相続税財産評価基本通達が、Delaware Block Methodと同様に、類似業種比準価額、純資産価額、配当還元価額を使い分ける方式を提案して以来、裁判実務においてもこれらの複数の評価方法を組み合わせて使う実例が多く見られました。しかし、カネボウ事件の東京地裁が採用したのはDCF法でした。M&Aの実務では、日本でもアメリカの実務の影響で相当前からDCF法による株価や企業価値の算定が行われるようになっていますので、裁判所もその流れに乗ってきたと言えます。次回は、カネボウ事件の概要を紹介します。

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