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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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反対株主の株式買取請求権について(その4)

カネボウ事件について見る前に、米国デラウエア州における株式買取請求権の「買取価格」の算定方法について紹介しておきたいと思います。

デラウエア州では、1950年の最高裁判決(Tri-Continental Corp. v. Battye, 74 A.2d 71 (Del. 1950))において、①解散する会社の価値は、(清算企業ではなく)継続企業として評価される必要があることと、②株式の価格算定に当たっては、会社の価値に影響を与える全ての要素を考慮しなければならないことが示されました。そして、このうち、②の「全ての要素を考慮すべき」という考え方から、デラウエア州では、
ア Net Asset Value (純資産価値)
イ Market Value (市場価値)
ウ Investment/Earnings Value (投資/収益価値)

といった複数の算定結果をミックスさせて用いる、いわゆるDelaware Block Methodと呼ばれる手法が確立されました。

ア Net Asset Value(純資産価値)について
このうち、Net Asset Value(純資産価値)は、文字通り、対象会社の純資産の評価額を発行済株式総数で割って出てきた一株当たりの価値であり、この純資産評価額を利用する計算方法は、貸借対照表上の数字をそのまま用いる「簿価純資産方式」と、資産の含み損益や、退職金の引当不足などの簿外負債を反映させて純資産を算定する「時価純資産方式」に分けることができます。簿価は資産の含み損益を反映していない時点で企業の現在の価値を表現しているとは言えないため、指標としてはあまり利用されていません。他方、時価については、どこまで含み損益を反映させるのかが難しいという問題もあります。更には、「含み益に対する将来課税」をどこまで未払い税金(負債)として計算に含めるかといった困難な問題もあります(*1)。

イ Market Value (市場価値)について
続いて、Market Value (市場価値)は、上場株式であれば市場株価を参考に決められ、非上場株式であれば同一または類似業種の他の会社の株価と業績を参考に求めます(日本では類似業種比準方式または類似会社比準方式と呼ばれます)。ただし、これもそう容易な作業ではなく、上場会社のケースでは、「どの期間の平均株価を採用するか」といった問題があり(*2)、非上場会社のケースでは、①類似会社の選定が困難(*3)、②PER、PBR、EBITDAといった「比較のためのモノサシ」の選択が困難(恣意的になるおそれがある)(*4)といった問題点があります。

なお、対象会社が非上場会社で、参考にする類似会社が上場会社である場合には、非上場株式には「流通性の欠如から来る価値の低下」が存在することを理由に、いわゆるNon-Marketability Discount(非流動性割引)をすべきではないかが問題となりますが、株式買取請求がなされる文脈では、当該株式を買い取ると言うオファーが現実になされていることからMarketabilityがないとは言えず、また、少数株主のスクイーズ・アウトがなされているような状況でNon-Marketability Discountを考慮するとunfairになりますので、原則として考慮すべきでないとされています(州によって異なりますが、少なくともデラウエア州では株式買取請求の際には、Minority Discount(*5)もNon-Marketability Discountもなされません)。

長くなってきましたので、続きは次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) 一般的には、会社が事業を継続するためには必須の資産となる工場や本社ビルなどの不動産の含み益に対する将来の課税については考慮しないが、いずれ手放すことが確実な有価証券等の含み益に対する将来課税については「未払い税金」すなわち負債として資産から控除するといった考え方を採ることになると思われます。
(*2) M&Aの計画を公表すると株価がその影響を受けて変動するため、「計画公表前の市場価格」を参考にすることが多い(かつ妥当)と思われます。
(*3) 取扱商品の類似性のみならず、資産高、売上高、従業員数といった会社の規模、利益の額および率なども考慮して類似会社を探す必要があります。
(*4) 例えば、PER(Price-Earning Ration、株価収益率)を基準として用いる場合、類似会社の株価が1000円で一株当たり利益が50円であればPERは20倍となり、対象会社の利益が一株当たり30円であれば対象会社の株価は30円×PER20倍=600円という計算結果になります。
(*5) Minority Discount(少数株主であるがゆえにその株式を高値で売却できないという問題)を考慮することについては、MBCA(標準事業会社法)が明確に否定しているほか、デラウエア州では、(法律には明記されていないものの)「支配株主を不当に利することになる」という理由で判例上(Cavalier Oil Corp. v. Harnett, Del. Supr., 564 A.2d 1137, 1144 (1989))明確に否定されています。

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