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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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反対株主の株式買取請求権について(その1)

今回から数回のシリーズで、M&Aに関する重要問題の一つである「反対株主の株式買取請求権」について書いてみたいと思います。

合併や事業譲渡などのM&A取引は会社の事業運営の根幹に関わるものであり、株主の利益に重大な影響を及ぼしますので、原則として株主総会の承認が必要になりますが、株主が総会で反対票を投じても、資本多数決の原則の結果これらのM&A取引を阻止できない場合もあります。そこで、そのようなケースにおける反対株主の利益を守るために会社法で定められているのが「反対株主の株式買取請求権」です。具体的には、合併や事業譲渡などのM&A取引に反対する株主は、会社に対して、自己の所有する株式を公正な価格で買い取るように請求することによって、投下資本を回収することができます。

この「反対株主の株式買取請求権」は、アメリカの州会社法に倣って昭和25年の商法改正で導入されたものですが、平成18年5月から施行されている会社法によって内容の一部に変容を受け、部分的にアメリカとは異なる制度として歩み始めました。ここは少数株主保護に関する日米間の状況の違いとも関連するところですので、後ほどじっくりと考えてみたいと思います。まずは、会社法下で認められている「反対株主の株式買取請求権」の要件と内容について、旧商法とも比較しつつ見てみます。

1 請求権者について

会社法(785、797、806条)の下では、

① 株主総会決議を要するM&A: 「議案に反対した株主」と「総会において議決権を行使できない株主(*1)」
② 株主総会決議を要しないM&A(*2): 「すべての株主


に株式買取請求権が与えられています(簡易吸収分割における分割会社の株主には、株式買取請求権が与えられていません(会社法785条1項2号))。旧商法下では、議決権を行使できない、すなわち最初から「反対意見」を述べることすらできない株主に株式買取請求権が認められるか否かについては見解が分かれていましたが、会社法の制定によって、議決権を有するかどうかに関係なく株式買取請求権が与えられました。

この点、アメリカでは、元々、「株主総会で反対票を投じる権利を有する株主に合併等を拒否するパワーを与えない代わりに、その株式を買い取って投下資本回収の途を与えようという趣旨で、株式買取請求権制度が設けられた」と考えられているようです。よって、たとえば、多くの州が全部または一部の規定を採用している<Model Business Corporation Act(MBCA、模範事業会社法)>においても、総会において議決権を行使できる株主か、日本で言うところの略式組織再編(*3)における株主にのみ株式買取請求権が与えられており、およそ「賛成株主以外の全株主」に株式買取請求権が付与されているわけではありません(*4)。また、<デラウエア州法>ではShort Form Merger(略式組織再編)における株主の株式買取請求権についても否定されていますので、およそ「合併等の行為を承認する総会での議決権保有者で、かつ、賛成票を投じなかった者」にのみ株式買取請求権が与えられていることになります(*5)。

日本の会社法が株式買取請求権の範囲を広げたのは、株式買取請求権という制度に少数株主保護の機能を大いに期待しているからであると考えられます。アメリカと異なり、「支配株主の少数株主に対するFiduciary Duty」が判例上認められておらず、かつ、組織再編行為を事前に差し止める制度も存在しない日本では、今回の会社法の少数株主保護重視路線への変更は全体のバランスを採るという意味で妥当と考えます(ただし、株主に投機的利益追求の途を過度に与えるべきではありません)。

なお、手続上、株式買取請求権を行使したい株主は総会に先立って当該合併等に反対する旨を会社に通知する必要がありますが、「総会において議決権を行使できない株主」と「株主総会決議を要しない場合のすべての株主」についてはこの反対意思の通知が不要となっています。

続きは次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) 議決権制限株式の保有者や単位未満株主など
(*2) 簡易組織再編、略式組織再編によって株主総会の承認決議を必要としないケース
(*3) 略式組織再編とは、完全子会社に近い会社との組織再編について、子会社側株主の承認手続を不要とするもので、ある株式会社(支配会社)が他の株式会社(被支配会社)の総議決権の9割以上を保有している場合に適用されます。同じ行為は米国ではShort Form Mergerと呼ばれ、MBCLでは11.05条で定められています。
(*4) MBCA § 13.02. RIGHT TO APPRAISAL
(a) A shareholder is entitled to appraisal rights, and to obtain payment of the fair value of that
shareholder’s shares, in the event of any of the following corporate actions:
(1) consummation of a merger to which the corporation is a party (i) if shareholder approval is
required for the merger by section 11.04 and the shareholder is entitled to vote on the merger, except that appraisal rights shall not be available to any shareholder of the corporation with respect to shares of any class or series that remain outstanding after consummation of the merger, or (ii) if the corporation is a subsidiary and the merger is governed by section 11.05;
(*5) DGCL § 262. Appraisal rights.
(b) Appraisal rights shall be available for the shares of any class or series of stock of a constituent corporation in a merger or consolidation to be effected pursuant to § 251 (other than a merger effected pursuant to § 251(g) of this title), § 252, § 254, § 257, § 258, § 263 or § 264 of this title:
DGCL§ 253で規定されているShort Form Mergerは、Appraisal rightsの対象外とされています。

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