プロフィール

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

成長を続けるSPACビジネス(その2)

さて、ここ数年でSPACが大流行しているその背景ですが・・・、投資家から見た場合は、まず、少額の資金で(SPACを通して)プライベート・エクイティ取引に参加できるというメリットがあります。また、SPACを運営する経営陣は、プライベート・エクイティ・カンパニーや投資銀行での経験が豊富な「投資のプロ」であるのが通常です。SPACには経営陣も一定程度の出資を行いますので(最初の出資を行いSPACを立ち上げた経営陣をスポンサーと呼びます)、彼ら自身、将来の買収によって収益を上げる自信がなければSPACを設立することはしないでしょう。よって、SPACの場合、SPAC経営陣の買収・投資に関する知識と経験が比較的はっきりと見え、それを信頼して投資ができるというメリットがあると言えます(通常の事業会社のIPOであれば、経営陣の事業運営能力は未知数である場合が多いと思われます)。

更に、前回のコラムでも述べたとおり、SPACの株主は具体的な買収案が出てきた時点で「投票」を行うことができ、賛成できない買収案が実行されようとしている場合には、エスクロー口座に入っている自分の投資額を(利子付きで)返還してもらうことができます。また、スポンサー(経営陣)の取り分は、最初のIPOの時点で決定され公表されているため(*1)、予想に反して、スポンサーに買収利益の大部分を持っていかれてしまったということにもなりません。この点で、1990年代に投資家に被害を与えたBlank Check Companyとは異なり、投資家保護が図られていると言うことができます。

しかし、これだけSPACが流行る原因の大部分は、投資家側というよりも、むしろSPACを設立するスポンサー側と買収されるターゲット会社の方にあると考えます。まずは、買収される会社/株式公開する会社から見た場合のSPACのメリットについて、IPOおよび事業会社またはフィナンシャル・バイヤーに対する事業売却のケースと比較しつつ見てみたいと思います。

 
SPAC
IPO(後に株を売却)
事業会社等への売却
株主が得られる現金
すぐに現金が手に入る
税務上の観点から、一定期間待つのが通常
すぐに現金が手に入る
対価
関係当事者間で協議して決められる
IPOが完了するまで値段が分からない
買い手側との(ときに熾烈な)交渉が必要
経営陣の続投
原則、続投
原則、続投
続投できない可能性が高い
手続に要する時間
IPOより数ヶ月は短い
準備、SECのレビューに相当の時間が掛かる
交渉の長期化、買主側の資金調達などで時間が掛かるおそれがある
経営陣の手間
SPAC側がIPO関連の作業をしてくれるので楽
ロードショーなどにかなりの手間が掛かる
DDや交渉の対応で相当の労力が必要
マーケットの状況
現在でもSPACのIPO市場はホット
事業会社のIPO市場は低迷中(IPOディスカウントを大きくする必要あり)
資金調達が困難になっているためディールが成立しにくい

このように、買収される会社/株式公開する会社から見た場合には、現金がすぐに手に入り、かつ、経営陣が続投できる、しかも面倒な手続や交渉が不要で取引成立の見込みも高いSPAC方式が魅力的であると言えます。また、SPACが好まれる理由は「Exitのフレキシブルさ」にあると言われます。すなわち、続けたい者は続ける、去りたい者は現金をもらって去るという柔軟な対応ができます。例えば、前回のコラムの冒頭で述べたJamba Juiceの案件でも、当初の出資者の一部分はキャッシュをもらって持分を売却しましたが、CEOのPaul Clayton氏とCFOのDonald Breen氏は経営陣として残る選択をしました。

他方、スポンサー側から見れば、短期間で資金を集めることができ、かつ、Management Contributionという形で数億円単位のフィーを受け取ったり、SPACの持株比率にして20%程度を保有し、IPO後にその株式を売却して現金化することができますので、小型版エクイティ・ファンドを運用しているのと同様の効果を得ることができます。SPAC自身の存続期間も最長2年と短くなっていますので、次から次にディールを処理していく能力がある買収のプロにとっては利用しやすい仕組みと言えるでしょう。

このような利点があるSPACですが、リスクを二つほど指摘しておきたいと思います。一つ目は、SPACの特徴とも言うべき「短期間で買収を完了させなければならない使命」が、期限ギリギリの駆け込み買収を促進する可能性があるという点です。実際の案件としても、例えば、American Apparelを買収したEndeavor Acquisitionが公表した委任状説明書においては、「締切日が迫っていたことが買収金額のアップに同意せざるを得なかった一つの理由であった」と書かれています。取引を成立させたい方が交渉上不利な立場に置かれるというのはよくある話であり、これによって「高い買い物」をしてしまったというケースが出てくるわけです。

二つ目は、当然といえば当然ですが、通常のIPOと同じく、買収した会社の業績変動によって、SPACに投資をした株主が損失を被ることがあるという点です。買収のプロが設立したSPACだから儲かる可能性が高いと考えることは危険です。スポンサーはディール完了後に株を売却して撤退するため損をする可能性は低いかも知れませんが、株式を持ち続ける場合や、スポンサーが売却する株式を購入する場合については、もともと未公開会社であった企業に対する投資を行う=その分リスクも大きい、と考えるべきではないでしょうか。冒頭のJamba Juiceの株価については、Services Acquisitionとの合併後、一時12ドルを超えていましたが、現状では残念ながら2ドル台にまで落ち込んでいるようです・・・(*2)。

(参考)最近設立されたSPACのForm S-1の例
http://www.secinfo.com/dr89b.tYs.d.htm (SIDHU Special Purpose Capital Corp.)


(*1) SPACにおける経営陣の持分は通常20%程度ですが、ゴールドマン・サックス・グループが2008年3月に設立したSPACであるLiberty Lane Acquisitionでは7.5%と低めに抑えられていました。経営陣の持分割合が大きければ大きいほど、一般株主の「希薄化」(買収の結果株主が増えるため、SPACの株主の持分比率は下がることになります)も大きくなるため、経営陣の持分を少なくすることでより魅力的な投資商品になると言えます。
(*2) http://ir.jambajuice.com/stockquote.cfm

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/82-ad17bd7c

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。