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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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成長を続けるSPACビジネス(その1)

アメリカの街を歩いていると、Jamba Juiceというフレッシュジュース屋さんをよく見かけます。Jamba Juice は全米に500以上の店舗を展開するジュースやスムージーのお店で、夏になるとお客さんでいつも混雑していますが、実は、このJamba Juiceは、2006年3月にServices Acquisition Corp. Internationalという会社に2億6500万ドルで買収されました。今日は、このServices Acquisition の正体について探ってみたいと思います。

Services Acquisitionは通常の事業会社ではなく、Special Purpose Acquisition Corporations (通称SPAC、特別目的買収会社)と呼ばれる買収専門会社です。アメリカでは1990年代にBlank Check Company(白紙小切手会社)と呼ばれる「現在は事業を行っていないが、将来どこかの会社を買収することを謳い文句に投資家から資金を集めて、それを運用する会社」の設立が流行しました。当時は、このBlank Check Companyが悪用され、投資家からお金を集められるだけ集めて起業家が逃げてしまうという詐欺事件が多発し、あるいは、明白な詐欺とまでは言えないまでも、資金運用がうまく行かず結局は倒産してしまうケースも多数発生しました。そこで、SECは投資家保護のためにRule 419を制定して規制を行いました。その結果、Blank Check Companyはしばらく下火になっていたわけですが、近年、IPOによって集めた資金で買収を行うことのみを目的とする会社の利用が再び盛んになりつつあります。統計の数字を見ると、SPACは、
・ 2004年: 12社、4億8200万ドル
・ 2005年: 28社、21億ドル
・ 2006年: 37社、34億ドル
・ 2007年: 66社、120億ドル  *金額はIPOによって集めた資金額の合計
というように、明らかな成長を見せており、私が現在所属するアメリカのローファームでもSPAC案件の取扱い件数が増えてきています。今後はM&Aの一手法としてSPACが利用されるケースが益々増えるものと予測します。

さて、SPACというのは、上で述べたとおり、具体的な事業は行っておらず、将来他社を買収ないし他社と合併することを存在目的に掲げてIPOを行い、集めた資金でM&Aを完了させることで投資家との約束を果たすいわば投資専門のShell Companyであり、「第2のプライベート・エクイティ・ファンド」と呼ばれることもあります。これまで、非上場会社のExit(創業者持分のキャッシュ化)の方法としては、IPOか、Strategic BuyerないしFinancial Buyerへの売却という手段が一般的でしたが、そこに「SPACに買収されるプラン」が加わったということができます。

SPACを設立するためにはSECに対してRegistration StatementであるForm S-1(外国民間証券発行者の場合はForm F-1)を提出する必要がありますが、そこでは具体的な保有資産を挙げる必要はなく(そもそも資産を持っていないため)、公募の内容に加えて、買収のターゲットとする業界や地理的範囲、経営陣の経歴、資本構造(経営陣が何パーセントの株を保有するかなど)や一般的なリスクファクターを開示すれば足ります。また、投資家から集めた資金は最低でも80%はエスクロー口座に入れる必要があり、将来の買収が完了するまでそれを引き出すことはできません(エスクローに入れなかった残りの部分がSPACの運営費用として使われます)。SPACはSECの分類上はBlank Check Companyの一種ですので、Rule 419に定めるガイドラインに従う必要もあります。そして、上場する以上は、他のSEC規則やサーベンス・オクスリー法に基づく規制にも従わなければなりません(*1)。

SECのガイドラインに従い、SPACの存続期間は通常、18ヶ月から24ヶ月までに設定されます。この期間内に、その存在目的である他社の買収ができなければ、SPACは当然に解散となり(厳密には、期間内に買収または合併のLetter of Intentが締結されれば足りますが、その後一定期間が経過しても最終合意書の締結に至らなければ、やはり解散となります)、エスクロー口座に預けてあった出資金は投資家に返還されます。また、買収案件は何でも良いわけではありません。SPACに投資した株主には選択権が与えられ、例えば20%の株主の賛成票がなければ特定の買収案件を進めることができないといった制約が定款に入れられます。また、特定の買収案件に反対の株主には株式買取請求権が与えられ、当該反対株主はその時点で資金を回収することができる仕組みになっています。

このSPACがなぜ急に流行りだしたのか?・・・次回のコラムでは、ヘッジファンドや投資銀行が矢継ぎ早にSPACを設立しているその背景について、これまでの伝統的なIPOやM&Aの手法と比較しながら考えてみたいと思います。


(*1) SPACの上場は、現時点では、米国の<OTC Bulletin Board(店頭公開市場)><American Stock Exchange>で行われていますが、ナスダックとニューヨーク証券取引所での上場も2008年に認められる予定です。

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