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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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取締役の義務違反の判断基準

善管注意義務・忠実義務が履行されたか否かを判断する基準に関する判例の表現は必ずしも統一されていませんが、例えば「意思決定が行われた当時の状況下において、取締役の一般的に期待される水準に照らして、当該判断をする前提となった事実の認識の過程(情報収集とその分析、検討)に不注意な誤りがあり、合理性を欠くものであったか否か、そして、その事実認識に基づく判断の推論過程及び内容が明らかに不合理なものであったか否かが問われる」と判示したものがあります(ヤクルト本社事件/東京地判平16.12.16)。

ここでのポイントは、判断の内容面については経営者の判断が原則として尊重されているのに対し、判断のプロセス面についてはその合理性が正面から検討されているということです。
まず、判断の内容面については、取締役に広い裁量が与えられているといえます。そこで、この点を捉えて、アメリカの州判例法上の「経営判断の原則」(Business Judgment Rule)に類似した判断枠組みであるとする立場もあります。しかし、アメリカのBusiness Judgment Ruleというのは、取締役と会社・株主間に利益相反状況がないことを前提に、取締役の意思決定過程に不合理がなかったかどうかだけを審査する方式と考えられます。上記ヤクルト本社事件の判旨を見ても、日本の裁判所は判断内容の合理性についても一応踏み込んで審査するわけですので、同じ判断枠組みとはいえないと考えます。

なお、何をもって不合理だったと認定するかに関しては、判例上、裁判所が取締役の行為がなされた当時の「会社の状況及び会社を取り巻く社会、経済、文化等の情勢の下において、当該会社の属する業界における通常の経営者の有すべき知見及び経験」を基準として不合理の有無を判断する(東京地判平成16年9月28日判例時報1886号111頁)とされています。

続いて、判断のプロセス面ですが、実務的にはこちらの方が更に重要になってくると考えます。裁判所の判断基準上も、プロセス面は内容面よりも厳格にチェックされることになりますし、今から判断する取締役としても、株主にとってより利益となる他の選択肢があるか否かに関し、十分な情報を収集し、それらをよく検討し、他の取締役や専門家と十分議論した上で決定に至るというプロセス自体は、意識すれば実行可能なことであると思われるからです。

この点、アメリカ(デラウェア州)には、Smith v. Van Gorkom (Del. Sup. Ct., 1985, 488 A.2d 858)事件という、取締役の判断プロセスが問題になった有名な事件があります。このケースでは、有名な買収専門家から提案された会社買収案に対し、事前の報告も受けずにとにかく集まった取締役たちが、前提知識がなかったにもかかわらず、わずか2時間検討しただけで賛成票を投じたのですが、このような取締役の判断プロセスについて裁判所は、判断ができるだけの情報すら十分に集めていないのに適切な判断ができるはずがないという考えに立ってBusiness Judgment Ruleの適用を否定し、取締役の責任を認めました。この点、日本においても参考にできるのではないでしょうか。

なお、アメリカのデラウエア州裁判所は、Business Judgment Ruleを原則としつつ、支配権の移転を伴うM&Aの場合にはいわゆるレブロン基準を、買収防衛策についてはユノカル基準を採用しています。各基準の内容については、それぞれの項目をご覧ください。

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