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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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ニューヨーク州のM&A実務

米国の会社法やM&A実務に最も強い影響を及ぼしているのはデラウエア州であり、その結果、日本でも「米国実務」といえばデラウエア州の会社法や判例が紹介されることがほとんどですが、実際にはニューヨーク州で設立される会社も少なくないため、ニューヨーク州のM&A実務についても簡単に紹介しておきたいと思います。

まず、ニューヨーク州会社法(NYBCL)717条は、取締役に対して業務の誠実執行義務を課していますが(*1)、具体的な義務としてはDuty of CareとDuty of Loyaltyが挙げられることと、通常、Business Judgment Ruleによってその判断が尊重されることについては、デラウエア州の状況と同じです。ただ、ニューヨーク州法が適用される会社の取締役は、会社支配権が移動するM&Aの場面において、会社と株主の長期的及び短期的な利益(long-term and short-term interests)のみならず、従業員、顧客および債権者の利益に与える影響や会社の発展性、生産性や利益率などについても考慮して判断することが認められています。すなわち、法律上、会社と株主の「長期的な観点から見た場合の利益」についても追求することが要求され(すなわち、現時点で株主が得られるキャピタルゲインの大小のみで判断してはならない)、更に、株主以外のステイク・ホルダーの利益まで判断要素に入れることが認められているわけです。この点についてデラウエア州では法律上は何ら明記されておらず、株主以外のステイク・ホルダーの利益を考慮しても構わないとする判例が存在するに過ぎないため、ここに両者の違いが見られます。

続いて、買収防衛策であるライツプランですが、連邦裁判所は、1980年代に、「ニューヨーク州法上、Flip-in型(*2)のライツプランは、買収者を他の株主と別扱いする点で違法となる」と判示しました。ライツプランにおいては、買収者に与えられたライツのみを行使不能にする点が制度設計上最も重要なポイントですので、上記裁判所の判断の結果、New York Corporationではライツプランを導入できなくなってしまいました。しかし、ニューヨーク州は、実務界の要請を受けて、取締役会が「20%を超えて株式を取得した者は行使することができないライツを株主に与えること」を正面から認める条項(NYBCL505条)を設けました。よって、現在では、この法律に反しない限りライツプランは有効であるということになりそうですが、その場合でもライツプランの内容および発動が取締役の義務に違反しないと言えるためには、

“in the best long-term interests and short-term interests of the corporation and its shareholders considering, without limitation, the prospects for potential growth, development, productivity and profitability of the corporation”

というニューヨーク州会社法上の基準を充たしていなければなりません。

New York Corporationが導入したライツプランの内容および発動の適法性が裁判所で争われる場合、ニューヨーク州では、デラウエア州の判例法上確立された厳格な基準(UnocalUnitrinなど)や、会社のchange in controlが含まれる場合の基準(Revlon)が存在しない結果、Business Judgment Rule+上記会社法の文言が判断基準になるものと考えられます。Business Judgment Ruleにおける最重要ポイントは判断のプロセス面にありますので、取締役としては、十分な情報を入手し、外部の専門家の意見などを聴きつつ、ニューヨーク州会社法が求める上記基準を充たしているかどうかについて十分時間を掛けて判断し、その判断のプロセスを証拠に残しておくということが最低限必要なことと言えるでしょう。

そのほか、M&Aに関するニューヨーク州法で注意すべき条項は912条と513条です。
912条(b)は、特定の会社の20%以上の株式を保有する者を「利害関係株主(Interested Shareholder)」と位置付け、その「利害関係株主と当該会社とのBusiness Combinationは、当該株主が利害関係株主になってから5年間は認めない」としています(*3)。同様の規定はデラウエア州会社法にも存在しますが、こちらは禁止期間3年とされています(DGCL203条(a))。いずれも、その株主が20%以上の株式を取得する前に取締役会の承認を得ていればこの制限は課されないことになっていますので、この条項は敵対的買収を防止することを企図したものであると言えます。

続いて、513条は、「会社が発行済み株式の10%超を市場価格以上の値段で買い戻すには、取締役会と株主総会の承認が必要」であるとしています。ただし、この制限は、売り手が2年を越えてその株式を保有しているケースには適用されません。すなわち、株式を一定量買い占めてそれを会社に高額で売りつけるグリーンメーラーが簡単に利益を得られないよう、法律上の手当てがなされているわけです。


(*1) Directors must perform their duties in good faith and with that degree of care which an ordinary prudent person in a like position would use under similar circumstances.
(*2) ライツプランは、Flip-in型Flip-over型の2タイプに分類することが出来ます。Flip-in型は、買収の完了以前に発行会社株式を有利な値段で購入できる権利を付与するものであり、Flip-over型は、買収完了後に存続会社の株式を有利な値段で購入できる権利を付与するシステムになっています。
(*3) (b) Notwithstanding anything to the contrary contained in this chapter (except the provisions of paragraph (d) of this section), no domestic corporation shall engage in any business combination with any interested shareholder of such corporation for a period of five years following such interested shareholder’s stock acquisition date unless such business combination or the purchase of stock made by such interested shareholder on such interested shareholder’s stock acquisition date is approved by the board of directors of such corporation prior to such interested shareholder’s stock acquisition date.

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