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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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タックス・プランニングのためのケース・スタディ(その4)

【ケース4】会社分割によるM&A(法人株主のケース)

(事案) ~T社(法人株主Cが発行済み株式の100%を所有)の全事業を買収受皿会社V社に会社分割によって承継させ、V社が分割対価としてT社に発行したV社株式をA社が買い取ることでV社をA社の子会社とするスキーム(CにはT社から残余財産の分配を行う)~

① 対象会社の貸借対照表
 
簿価
時価
 
簿価
時価
資産
100億円
100億円
負債
70億円
70億円
営業権
 
60億円
純資産
30億円
90億円
総資産合計
100億円
160億円
負債資本合計
100億円
160億円
* 純資産の内訳: 資本金2億円、利益準備金5000万円、利益積立金27億5000万円

② その他の前提条件
・ Cは対象会社株式を2億円で取得
・ その株式を今回はA社が純資産相当額の90億円で買取り予定
・ 法人税の実効税率は40%とする

(検討)
<タックス・プランニングのためのケース・スタディ(その2)>で述べたように、本件においては、T社と受皿会社V社との間に事業関連性がなく、かつ、T社は株式分割によって交付されたV社株をすぐにA社に譲渡する結果、株式継続保有要件も充たさないため、本件会社分割は非適格会社分割として扱われます。

① 買収会社A社の税負担
株式を買うだけなので、課税関係は発生しません。

② 買収受皿会社V社の税負担
非適格分割ですので、T社の資産・負債が時価でV社に承継され、V社は営業権の減価償却を行うことで将来における課税所得を圧縮することができます。本件では、営業権は60億円ですので、
60億円×法人税の実効税率40%=24億円 の税負担の軽減につながります。

③ 対象会社T社の税負担
T社は自己の資産・負債を時価でV社に移転する結果、60億円の会社分割益を得ますので、
60億円×法人税の実効税率40%=24億円
の税負担がT社に発生します。

④ 対象会社株主Cの税負担
個人株主であればT社を清算して残余財産を分配するプロセスにおいて配当所得課税がなされ、その際に配当控除が適用されましたが、本件のような法人株主の場合、法人税法上の「受取配当金の益金不算入」が適用されます。すなわち、配当金はそもそも配当を行う法人の課税後利益から支払われるものですので、これに対して更に課税すると二重課税となります。そこでこの二重課税を避けるために用意されたのが、個人株主の場合は「配当控除」であり、法人株主の場合は「受取配当金の益金不算入」です。
その結果、法人が内国法人から受けた配当については会計上は収益として計上されますが、税務上は益金に算入されず、課税所得の計算上控除されることになります。

具体的には、以下の金額を、各事業年度の益金の額から控除することができます。

ア 連結法人株式等: 配当金の全額
イ 関係法人株式等: 関係法人株式にかかる受取配当等の額-控除負債利子の額
ウ 一般法人株式等: (一般法人株式の受取配当等の額-控除負債利子の額)×50%


ここで、「関係法人株式等」とは、内国法人(公益法人等及び人格のない社団等を除く)の発行済株式または出資金額の25%以上を、その配当等の額の支払義務が確定する日以前6ヶ月以上保有している場合の当該株式または出資を言います(法人税法23条⑤、法人税法施行令22条の2①)。また、「控除負債利子」は、配当金を得るために借入れ等をしたと判定される負債利子額で、
支払利子×当該株式の帳簿価額(*1)/総資産価額(*1)
で求められます。
本件では、CはT社の100%株主ですので、上記アが適用され、結局CがT社から残余財産の分配として受け取った金額は全額「益金不算入」となります。

(まとめ)
以下のまとめの表のとおり、個人株主Iのケース1およびケース2では会社分割方式よりも株式譲渡方式の方が税務上有利でしたが、法人株主Cのケース3およびケース4では、逆に会社分割方式の方が有利(*2)であることが分かります。ただし、株式譲渡方式を用いる場合でも、株式譲渡の前にT社からCへの配当を行えば、当該配当に関しては「益金不算入」となる結果、株式譲渡によって株主Cに発生する譲渡益課税を減らすことができます。

個人株主のケース
株式譲渡方式(ケース1)
会社分割方式(ケース2)
T社と株主Iの負担
176000万円
51億9040万円
A社とV社の負担
0円
24億円
実質的なトータル
176000万円
27億9040万円

法人株主のケース
株式譲渡方式(ケース3)
会社分割方式(ケース4)
T社と株主Cの負担
352000万円
24億円
A社とV社の負担
0円
24億円
実質的なトータル
352000万円
0円


(*1) 前期末と当期末の合計額。
(*2) もっとも、会社分割方式では、登録免許税、資本金が増加することによる住民税均等割部分および事業税資本割部分の増加などが発生しますので、この点の更に詳細な比較検討が必要になってきます。

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