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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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合併の税務(その1)

M&Aのストラクチャーを決める大事な考慮要素の一つに、税金の問題があります。合併を例に取りますと、「合併当事会社間で資産と負債が移転することによって発生する税金」と、「消滅会社の株主が合併対価を受け取ることによって発生する税金」の二種類について検討する必要があり、課税の有無・程度によってはストラクチャーの変更をも視野に入れなければなりません。

例えば、T社がA社に吸収合併されるケースで説明しますと、法律上は、T社とA社の法人格が一つになることによってT社の資産・負債は包括的にA社に帰属することになり、合併対価はA社からT社の株主に直接交付されますが、税務上は、①T社の資産・負債がA社に譲渡・承継され、②合併対価についてはA社からT社に交付された上で、改めて(直ちに)T社からT社の株主に交付されたものとみなされます。すなわち、①の局面において、資産・負債を移転したT社サイドで、その譲渡損益に関する法人税処理が必要となり、②の局面において、株主に対して株式譲渡益課税(*1)やみなし配当課税(*2)が行われます。

上記は、いわば税務における原則的な取扱いと言えますが、消滅会社の株主としては、税金を支払うために(現金が手元にない限り)持株を売却せざるを得ず、また、株が一斉に売られると株価が下がるために、売却によって更に損をする可能性もあります。そうすると、最初から合併そのものに対して反対票を投じることを考える消滅会社の株主も出てくるでしょう。また、資産の含み損を実現化させたい場合などは別として、合併に際して資産が時価評価され課税されることは避けたいと当事会社が考えるケースも多いと考えられます。

そこで、平成13年の税制改正によって「企業組織再編税制」が導入され、組織再編成によって法人がその資産を移転する場合には、時価取引として譲渡損益の額を認識すること、すなわち「時価譲渡」を原則としつつも、「資産を移転する場合であっても、実質的に当該資産に対する支配が継続していると認められる場合」については、特例として、資産が帳簿価額で移転するとみなして譲渡損益の額を認識しないこと、すなわち「簿価譲渡」が認められることになりました。

これは、資産移転の前後で経済的な実態に実質的な変更がない場合においては、当事者としては、「存続会社が消滅会社の資産・負債を帳簿価格で承継し、譲渡損益の認識を繰り延べてもらいたい」、「消滅会社の株主へ交付される合併対価については、その株主が将来実際に株式を売却するまでは課税されないようにしたい」と考えるのが通常であるし、それを認める合理性もあることから、移転する資産の譲渡損益の額を認識しない組織再編成を特例として認めたものです。この特例に該当する合併が「適格合併」と呼ばれ、「適格合併」に該当しないいわば原則的取扱いのケースは「非適格合併」と呼ばれます。

「適格合併」として資産の譲渡損益に対する課税が繰り延べられる組織再編成の特例は、
① 企業グループ内の組織再編成
② 共同事業を行うための組織再編成

に限定され、それぞれ一定の要件を充足しなければなりません。

課税の繰り延べ措置が認められるか、簿価承継となるかどうかは合併当事者とその株主にとって極めて重要な問題ですので、いかなる場合であれば「適格合併」に該当するかをチェックする必要がありますが、要件を列挙するだけではなかなか記憶に残りにくいことから、次回以降のコラムで、趣旨に遡って各要件を一つ一つ見ていきたいと思います。


(*1) 消滅会社の株主が存続会社株式以外の財産の交付を受けた場合には、譲渡損益に対する課税が生じます。譲渡損益は、「株主が交付を受けた財産の時価合計額から取得原価とみなし配当額を控除」して求めます。以下に述べるように、みなし配当が、「株主が交付を受けた財産の時価合計額」と「消滅会社の資本金および資本積立金」の差額であることを考えれば、譲渡損益は、「消滅会社の資本金および資本積立金」と「取得原価」の差額ということになります。
(*2) 合併における解散法人に留保利益があった場合、課税なくして合併が認められると、株主に対する配当課税のチャンスが失われてしまうため、消滅会社の利益を原資とする部分(利益積立金)が存続会社の資本金および資本積立金に組み入れられる場合、法人税法では、その資本組入部分について、「一旦株主に配当として分配し、その分配部分を再び株主から出資を受けた」ものとみなします。この株主への配当とみなされる部分(別の言い方をすれば、「株主が交付を受けた財産の時価合計額から消滅会社の資本金および資本積立金の額を控除した残額」)について行われる課税が、「みなし配当課税」です。みなし配当が発生する場合、合併法人は一株当たりのみなし配当額を株主に通知する義務があります。

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