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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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MAC条項について(その3)

MAC条項に関して当事者間で最も白熱した交渉がなされるのは、Carve Out事由(例外事由)をどこまで定めるかという点です。特に、プライベート・エクイティ・ファンドの増大によって売り手市場になっていた近年の米国M&A業界では、売主側が有利になるよう(すなわち、買主は容易に撤退できないよう)、多くのCarve Out事由が定められました。

例えば、COUNTRYWIDE FINANCIAL CORPORATIONとBank of Americaの合併契約書(*1)を見ると、以下のようなCarve Out条項が盛り込まれています。

“provided, however, that, with respect to this clause (i), a “Material Adverse Effect” shall not be deemed to include effects to the extent resulting from (A) changes, after the date hereof, in GAAP or regulatory accounting requirements applicable generally to companies in the industries in which such party and its Subsidiaries operate, (B) changes, after the date hereof, in laws, rules or regulations of general applicability to companies in the industries in which such party and its Subsidiaries operate, (C) actions or omissions taken with the prior written consent of the other party, (D) changes, after the date hereof, in global or national political conditions or general economic or market conditions generally affecting other companies in the industries in which such party and its Subsidiaries operate or (E) the public disclosure of this Agreement or the transactions contemplated hereby, except, with respect to clauses (A) and (B), to the extent that the effects of such change are disproportionately adverse to the financial condition, results of operations or business of such party and its Subsidiaries, taken as a whole, as compared to other companies in the industry in which such party and its Subsidiaries operate”
(サマリー的訳:
(A) GAAPや会計基準の変更、(B) 法令の変更、(C) 他方当事者が事前に書面で同意した行動、(D) 国内外の政治的状況または経済・市場の状況の全体的な変化、または、(E) 本契約の開示、から発生した影響については、「重大な悪影響」には含まないものとする(ただし、(A)(B)のうち、対象会社の財務状況、営業成績や事業に特に悪影響を及ぼすものについてはMAEに該当する))

上記のようなCarve Out条項に従う限り、買主は、例えばサブプライム・ローン問題に端を発した市場全体の信用収縮などを理由に、(Termination Feeを支払うことなく)買収案を撤回することが困難となります。実際、Finish Line社がUBSから資金提供を受けてGenesco社を買収しようとしたケース(15億ドルのCash Merger)において、UBS がGenesco社の収益が落ち込んだことを理由に融資を拒否したため訴訟に発展したのですが、テネシー州衡平裁判所は、「Genesco社の収益悪化は経済の全体的な落ち込みによるものであり、同じ業界に属する他社と比較してGenesco社の業績がとりわけ悪化した(disproportionate impact)わけではないから、MAC条項に基づく解除はできない」と判示しました(*2)。

なお、MAC条項は、実務上は、「契約解除に至れるかどうかはさておき、とりあえず再交渉するため」の道具として使われることが多いと思われます。買主としては、理由の如何を問わずReverse Termination Feeさえ支払えばディールから撤退することはできるわけですが、買主側の取締役のFiduciary Dutyについても注目され始めている今日においては、経済状況が変化したり、対象会社のビジネスに重大な変化が生じたにも拘らず従前の契約条件のままクロージングを迎えると、買主の取締役の責任が問われるリスクがあります。そこで、MAC条項を持ち出して「契約の解除か、減額か」を売主に迫ることで、どうにかして再交渉に持ち込みたい場合があるということです。実際に、そのような過程を経て、訴訟に至ることなく「少し減額してクロージングを迎えた」ケースは少なくないものと思われます。

MAC条項に関連して一つ注意したいのは、プライベート・エクイティ・ファンドがサインするEquity Commitment Letter(出資契約書)には、いわゆるMarket MAC条項が入っているケースがあるということです。Market MAC条項によって必要な資金が買主に提供されないにも拘らず、Carve Out条項によって買収そのものは撤回できないという事態が発生しうるからです。Market MAC条項については、最近米国で注目を浴びたSolutia社のケースがありますので、次回のコラムで簡単に紹介したいと思います。


(*1) http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/25191/000089882208000107/exhibit21.htm
(*2) 本件は結局和解にて終了(買収は撤回)しましたが、Finish Lineは、訴訟や和解などの関連費用8150万ドルを計上した結果、2007年の第4四半期決算において赤字となりました。

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