プロフィール

井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

M&Aに関する開示規制(金融商品取引法)

前回までのコラムで、「株式の10%以上を米国居住株主に保有されているケースでは、日本企業同士の合併であってもSECへ登録届出を行う必要がある」と書きましたが、逆に、会社法下で可能になった三角合併のケースにおいて、日本企業の株主に外国の存続会社の株式が交付される場合の開示規制はどうなっているでしょうか?

例えば、株式会社日興コーディアルグループ(以下「日興コーディアル」)は、2008年1月29日を効力発生日として、米国の金融大手であるシティグループ・インク(以下「米シティ」)の普通株式を対価とし、日興コーディアルを、米シティの100%子会社である日本法人シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社(以下「CJH」)の完全子会社とする株式交換を実施しました(*1)。この株式交換によって、日興コーディアルの株主はCJHから米シティの株式を交付されることになりますので、日興コーディアルの株主としては、米シティの企業情報を入手したいと考えるでしょう。このようなケースは、三角合併に限って発生するわけではありません。およそ、合併、会社分割、株式交換などに伴って対象会社の株主に存続会社・新設会社の株式が交付される場合には、対象会社の株主に対する情報開示の必要性および方法が問題となります。

この点、一般的には(すなわち、M&Aとは関係なく)、50名以上に対して勧誘がなされ、かつ、発行(売出し)価額の総額が1億円以上となる有価証券の募集(売出し)については、「有価証券届出書」の提出が義務付けられています。しかし、M&Aに伴う株式交付のケースについては、別途考える必要があります。すなわち、金融商品取引法の前身である旧証券取引法下においては、合併等のM&Aが行われた場合は、取引の結果として消滅会社の株主に存続会社株式が自動的に交付されるのであって、会社が勧誘行為を行うわけではないことから、そこでの株式の交付はそもそも「募集」「売出し」に該当しないと考えられており、その結果、有価証券届出書による開示規制の対象とはされていませんでした(*2)。しかし、米国において一定の場合にForm F-4の提出が義務付けられているように、投資家保護という観点からは、一定の組織再編行為に証券法上の開示規制を及ぼすことが妥当とも考えられます。そこで、金商法は、情報開示を強化するために、「組織再編成(合併、会社分割、株式交換等)による新株発行等にかかわる企業内容等開示制度」を新たに整備しました。

金商法によれば、組織再編成により、新たに有価証券が発行され、または既に発行された有価証券が交付される場合において、以下に該当する場合には、当該有価証券の発行または交付に関して届出を行う必要があります(<金融商品取引法2条の2、4条>)(*3)。

① 当該組織再編成対象会社(吸収合併消滅会社、株式交換完全子会社等)の株主等が多数(*4)であり、
② 当該組織再編成対象会社が発行者である株券等に関して開示が行われており、かつ、
③ 当該新たに発行され、または既に発行された有価証券に関して開示が行われていない場合


①については、いわゆる私募債を除外する趣旨で定められたものです。②③については、上場会社である対象会社がM&Aによって消滅し、代わりに非上場の存続会社の株式が交付される場合、対象会社の株主としては適切な投資判断(存続会社の株式をもらうか、株式買取請求権を行使するか、市場で売却するかといった判断)ができないことから定められました。

冒頭の例では、最初のプレスリリースの時点では米シティは日本の証券取引所で株式を公開していませんでしたので、そのままでは上記①から③の要件を充たし、組織再編成を理由とする有価証券届出書を提出する必要が生じたはずですが、米シティは2007年11月5日付けで東京証券取引所に上場しましたので、上記③の要件を欠くことになり、有価証券届出書を提出する必要がなくなりました。

なお、旧証券取引法時代の上場会社は、継続開示義務として、有価証券報告書と半期報告書の年2回の開示が求められ、これを該当期終了後3カ月以内に金融庁のEDINETを通じて提出していましたが、金商法では、年4回の決算期(第1四半期~第4四半期)毎に企業の概況、経営成績や財政状態などを記載した「四半期報告書」を作成し、各四半期終了後45日以内にEDINETを通じてこれを提出しなければならなくなりました(*5)。「四半期報告書」はアメリカのForm 10-Qの輸入版と言えますが、投資家保護のための情報開示の波は止まることなく押し寄せてきているようです。


(*1) プレスリリース:http://www.nikko.jp/GRP/citi/shares/index.html
(*2) 合併の当事会社が有価証券報告書を提出しておらず、かつ、合併に際して発行する株式の価額が総額で1億円を超えるケースについては「有価証券通知書」の提出が義務付けられていましたが、「有価証券通知書」はそもそも公開資料ではないため、株主のための開示規制そのものではなかったと言えます。
(*3) 組織再編成用の有価証券届出書の様式は、内国会社が第二号の六様式および第二号の七様式(新規公開用)、外国会社が第七号の四様式で、従来の有価証券届出書(第二号様式)の記載項目に加え、組織再編成に関する情報(概要・目的等、当事会社(組織再編成対象会社以外の会社)の概要、手続、統合財務情報等)が記載項目とされました。
(*4) ここでの「多数」の定義については、<金融商品取引法施行令>の第2条の4によって「50名以上」と定められています。
(*5) 四半期開示の実務は、金商法制定前から、証券取引所の適時開示の方法として行われていました。

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/56-74a4f787

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。