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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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日本企業同士のM&Aでも必要なSECへの登録(その2)

Form F-4ファイリングについては、前回述べた「10%テスト」が最も重要な点ですが、それ以外に、スケジュール財務諸表の作成義務についても留意する必要があります。

まず、スケジュールについては、該当するM&A取引に関し株主総会の承認を得るため株主に招集通知を送付する時点でForm F-4による登録の効果が発生している必要がありますので、これをゴールに設定します。Form F-4による登録の効果を発生させるためには、SECによるForm F-4および添付資料のレビューを受けて、指示に応じて必要な項目を追加したり、訂正したりしなければなりません。このレビューを受けてSECと非公開でやり取りをする手続のことをConfidential Filingと言いますが、このConfidential Filingの期間は案件の大きさ、複雑さ、提出資料の分量によって変わってきますので、時間的に余裕を持ってSECに草案を提出する必要があります(通常、2~3ヶ月程度前に提出)。

なお、「10%テスト」はいつの時点での10%かが問題となりますが、合併などの"business combination"のケースにおいては「勧誘開始日の30日前の時点」において、公開買付け(exchange offer)のケースでは、「公開買付け開始時点」において判断するとされています(*1)。しかし、実務上は、SECに草案を提出する時点(合併のケースであれば勧誘=株主総会招集の2~3ヶ月程度前)の方が、上記「10%テスト」の基準時よりも早く到来しますので、まだForm F-4を提出する必要があるかが分からないうちに、暫定的に10%テストを行った上で「U.S. holderの株式保有割合が10%超である」可能性があるのであれば、見切り発車をして準備を始める必要があるということになります。

続いて、SECが公開している<Form F-4>のインストラクションを見ますと、Item 5として、<Regulation S-Xの11条>が定める"Pro Forma Financial Information"を記載しなければならないと書かれてあります。”Pro Forma”というのはラテン語で、「形式上の」「見積もりの」という意味を有しますが、この文脈では、「M&A取引完了後の新会社における」財務情報を示しています。株主としては、株式買取請求権を行使するか、当事会社の提案に応じて新会社の株式を受け取るかといった投資判断を迫られることになりますので、新会社において両事業がどのように運営され、どの程度のシナジー効果が発生するかを知る必要があります。そこで、Form F-4において、この"Pro Forma Financial Information"の開示が求められています。

さて、この"Pro Forma Financial Information"については、日本の会計基準で作成したものをそのまま使用することが出来ません。Form F-4を提出する当事会社としては、

① 米国のGAAP(*2)に基づいて作成し、監査も受けた財務諸表
② 日本の会計基準に基づいて作成した財務諸表に、米国GAAPを適用した場合の調整事項(reconciliation)を加えた資料


のいずれかを提出しなければなりません。これら財務諸表の作成に当たっては通常監査法人のサポートを受けることになりますので、この点でも時間と費用が掛かってきます。SECに提出する草案には既にこの"Pro Forma Financial Information"が添付されている必要があることを考えれば、株主総会開催日の半年ほど前から準備を開始しなければならないことが分かります。

このように、株式の10%以上を米国居住株主に保有されているケースでは、SECへの登録のために、米国のGAAPに沿った財務諸表を作ったり、SECと登録関係書類を巡ってやり取りをしなければならない結果、相当の時間と労力が費やされることになります。ときに統合のスケジュール面に深刻な影響を及ぼすこともある手続ですので、M&Aに関与している当事者・実務家としては常に注意が必要です。なお、日本企業同士のM&Aであっても海外の法規制をチェックする必要があるという点では競争法も同じですが、外国の競争法については別の機会に述べたいと思います。


以上がForm F-4に関する基本的手続になりますが、Form F-4を提出した会社は1934年証券取引所法が定める継続開示義務に服することになりますので、各事業年度の終了後120日以内に<Form 20-F(年次報告書)>を、報告事項が発生する度に<Form 6-K(臨時報告書)>をSECに提出しなければなりません。

* Form F-4の具体例(John Hancock Financial Services, Inc.とManulife Financial Corporationの合併の際にSECに提出されたもの):http://www.manulife.com/corporate/corporate2.nsf/Public/formF4.html


(*1) 条文:Calculate percentage of outstanding securities held by U.S. holders as of the record date for a rights offering, or 30 days before the commencement of an exchange offer or the solicitation for a business combination.
(*2) Generally Accepted Accounting Principles(一般に公正妥当と認められた会計原則):米国のGAAPは、会計基準設定主体である<財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)>が設定する権限を有しています。なお、FASBは、「GAAPを遵守させる権限」は有していませんが、SECが公開企業に対してその全ての財務報告書がFASB基準に適合していることを求めていることによって、また、アメリカ公認会計士協会(AICPA)が公開会社・非公開会社を問わず監査報告書を付す条件としてその財務諸表がGAAPによるものであることを求めていることによって、GAAP基準が遵守されるメカニズムが形成されています。

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