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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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日本企業同士のM&Aでも必要なSECへの登録(その1)

日本企業A社と日本企業B社が合併し、B社が消滅するとします。仮にB社の株主に米国在住者が15%含まれていた場合、当事会社はSECに対して報告書を提出する義務を負うでしょうか?B社の株主のうち米国在住者は7%しかいなかったが、B社に40%の株式を保有する大株主が居た場合はどうでしょうか?

結論としては、いずれのケースについても、①存続会社であるA社が、②SECに対してForm F-4と呼ばれる登録届出書を提出する義務があり、③しかも、Form F-4の登録の効力が株主総会招集通知の発送日までに発生するようスケジュールを立てなければならない、④更に、Form F-4には日本の会計基準に拠って作成した財務諸表は添付できないので別途作成する必要がある、ということになります。このように、米国証券法・証券取引所法の規制は日本企業にも無関係ではないため、以下、具体的な要件と手続について整理して紹介したいと思います。

1 日本企業同士のM&Aと米国証券(取引所)法との関係

例えば、日本企業同士が株式を対価とする合併を行うケースにおいて、消滅会社の株主に米国在住の株主が含まれている場合、当該米国株主には存続会社の株式が交付されることになります。これは合併という事業統合の結果として不可避的に発生するものであるため、証券の「募集」そのものには該当しないように見えますが、投資家から見た場合には、その株式を受け取る代わりに株式買取請求権を行使して現金に換えてもらう方法もあるわけですから、しっかり情報開示をしてもらって投資判断ができるようにしてもらわなければ困ります。よって、M&Aに伴う米国居住者に対する株式発行に関しては、1933年証券法において、SECに対してForm F-4(*1)と呼ばれる登録届出書を提出しなければならないと定められています。すなわち、ここでのポイントは、アメリカから見れば国外の企業同士が国外でM&Aを行う場合であっても、米国居住株主を含んでいる限り、米国証券法の規制が及ぶ可能性があるということです。


2 SECへの登録届出が必要な場合

まず、M&Aの結果株式を発行する会社(合併であれば存続会社、株式交換であれば完全親会社となる会社、株式移転では当事会社の両方)に「米国の株主」(U.S. holder)が含まれていることが必要です。
次に、ここで言うU.S. holderとは、Rule 800の(h)において、「U.S. holder means any security holder resident in the United States」と規定されていることから、米国に居住していれば国籍は関係ないことが分かります。

続いて、株主にU.S. holderが含まれている場合のうち、以下に該当するケースについては登録届出が免除されます(*3) 。
① U.S. holderの株式保有割合が10%以下であること
② U.S. holderが対象会社の他の株主と平等に取り扱われること
③ 株主に対して一定の情報開示がなされること


なお、ここでのポイントは、上記①の計算においては、「自己株式」「保有割合10%超の大株主の株式」「役員等関係者の持株」についてはその保有割合を分母から除外しなければならないという点です。冒頭のケースで言えば、「B社の株主のうち米国在住者は7%しかいなかったが、B社に40%の株式を保有する大株主が居た場合」、大株主を除いた60%のうち、7%を米国在住者が占めていることになりますので、10%テストをクリアできません。よって、この場合は、SECへForm F-4を提出しなければなりません。

また、株主がU.S. holderか否かを判断するためには、「実質株主を確定する作業」が必要になります。すなわち、日本の上場企業の場合は通常半期ごとに作成される株主名簿に記載された株主の住所を基準にすることになりますが、ブローカー、ディーラー、銀行等のNomineeが顧客のために株式を保有している場合には、当該Nomineeに対して実質株主に米国居住者が含まれているかと照会するといった”reasonable inquiry”を行う必要があり(*4)、その他にも、証券取引所に対して提出されている報告書などから実質株主が判明した場合にはこれを計算結果に反映させなければならないと規定されており、注意が必要です(いずれもRule800において規定されています)。

本手続に関するその他のポイントについては、次回のコラムで書きたいと思います。


(*1) Form F-4は、「米国から見た場合の外国企業が米国において証券の公募を行うときにSECに提出するForm F-1または Form F-3と呼ばれるRegistration Statement(登録届出書)」とは別のフォームになります。
(*2) Rule 800は、1933年証券法の<General Rules and Regulations>の中に規定されています。
(*3) より詳細なルールについては、<Rule 802>参照
(*4) ”reasonable inquiry”を行っても実質株主が判明しなかった場合については、Nomineeの主たる営業所を当該株主の居住地と見なすことができるとされています。

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