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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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クロスボーダーM&Aと外資規制(その1)~日本の状況~

前回のコラムで述べたように、オーストラリアのマッコーリー銀行が、2007年夏に、羽田空港ターミナルビルを所有する「日本空港ビルデング」(東証1部上場)の株式約20%を取得したことをきっかけに、「空港外資規制」の可否が永田町と霞ヶ関で議論されていますが、天下りの問題など政治的な論争も盛んなようですので、これには深く立ち入らずに、まずはクロスボーダーM&Aを扱う実務家として知っておくべき法的知識を整理しておきたいと思います。

クロスボーダーM&A取引を行うにあたっては、投資対象会社の所在地国の外資規制を確認し、必要に応じて事前届出、事後報告などの手続を行う必要があります。まずは、日本が外国人および外国企業に対して課している外資規制について見ていきます。

外国人または外国企業が日本企業の株式を取得するケースについては、外国為替及び外国貿易法(「外為法」)が規制しています。外為法の規制は、「対内直接投資」(*1)と「資本取引」(*2)に適用がありますが、ここではまず前者について紹介します。

「対内直接投資」に関する外為法の規制については、手続に着目して、「事前届出」類型と「事後報告」類型に分けることが出来ます(法55条の51項、法27条1項)。新聞等を賑わせる「安全保障」関連の外資規制は、主に前者の「事前届出」類型に該当します。すなわち、安全保障などの観点から、武器、航空機、原子力、宇宙開発、火薬類、電力・ガスなどの業種について、外国投資家が該当企業の株式を10%以上保有する場合、財務大臣や事業所管大臣への「事前届出」が必要になります。他方、上記の業種に該当しない場合は、一定の条件の下で「事後報告」が必要です。以下、各種概念について整理した上で、順に説明していきたいと思います。

1 「外国投資家」の意義

外為法では、対内直接投資の当事者として「外国投資家」という概念を設けて、次のとおり規定しています(法26条1項)。
(1) 非居住者である個人。
(2) 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体または外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(外国法人の在日支店を含みます)。
(3) 上記(1)または(2)に掲げる者により直接または間接に保有される議決権の合計が50%以上を占める法人(*3)。
(4) 非居住者である個人が役員または代表権限を有する役員の過半数を占める本邦の法人その他の団体。


2 「対内直接投資」の意義

対内直接投資とは、外国投資家が行う、次の取引または行為をいいます(法26条、直投令2条9項1、2号)。
(1) 国内の上場会社(店頭公開会社を含みます)の株式の取得で、出資比率が10%以上(*4)となるもの。なお、この場合の出資比率には、当該取得者と特別の関係にある外国投資家の所有株式を含みます。
(2) 国内の非上場会社の株式または持分を、外国投資家以外(*5)から取得すること。
(3) 個人が居住者であるときに取得(昭55.12.1以降に取得したものに限る)した国内の非上場会社の株式または持分を、非居住者となった後に外国投資家に譲渡すること。
(4) 外国投資家が国内の会社の事業目的の実質的な変更について同意(同会社が株式会社の場合、総議決権の3分の1以上を保有している外国投資家が行う同意に限る)すること。
(5) 非居住者個人または外国法人である外国投資家が、国内に支店、工場その他の事業所を設置(*6)し、またはその種類や事業目的を実質的に変更すること。
(6) 国内法人に対する1年を超える金銭の貸付け(居住者外国投資家が行う本邦通貨による貸付けを除く)であって、次のaおよびbの、いずれにも該当するもの。
 a 当該貸付け後における当該外国投資家から当該国内法人への金銭の貸付けの残高が1億円に相当する額を超える
 b 当該貸付け後における当該外国投資家から当該国内法人への金銭の貸付けの残高と、当該外国投資家が保有する当該国内法人が発行した社債との残高の合計額が、当該貸付け後における当該国内法人の負債額の50%に相当する額を超える
(7) 国内会社の発行した社債で、取得日から元本の償還日までの期間が1年超であり、その募集が特定の外国投資家に対してされるものを取得する(居住者外国投資家が行う本邦通貨をもって表示される社債の取得を除く)場合であって、次のaおよびbの、いずれにも該当するもの。
 a 当該社債の取得後において当該外国投資家が保有する当該国内会社の社債の残高が1億円に相当する額を超える
 b 当該社債の取得後において当該外国投資家が保有する当該国内会社の社債の残高と、当該外国投資家から当該国内会社への金銭の貸付けの残高の合計額が、当該社債の取得後における当該国内会社の負債額の50%に相当する額を超える
(8) 日本銀行など特別の法律に基づいて設立された法人の発行する出資証券の取得


なお、上記の定義にも更に詳細な例外規定などが存在しますので、実際の適用判断に当たっては専門家にお問い合わせいただく必要があります。次回以降、「届出が不要な場合」「事前届出が必要な場合」「事後報告が必要な場合」について紹介します。


(*1) 日本法人に参画するか、または、実質的に日本法人の経営を支配することを目的とする株式取得
(*2) 資産運用を目的として行われるポートフォリオ投資
(*3) 「間接に保有される議決権」は、外国法人等が50%以上の議決権を有する国内会社が保有する議決権をいいます(直投令2条1項)。
(*4) 居住者・非居住者間で行われる場合、出資比率が10%未満のときは「資本取引」となります。
(*5) 国内の非上場会社の株式または持分の「外国投資家」からの譲受けは、居住者・非居住者間で行われる場合には「資本取引」となります。
(*6) 事業目的が銀行、外国保険会社、ガス事業、電気事業、第一種金融商品取引業、投資運用業および外国信託会社であるもの、および駐在員事務所を除きます。

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