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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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クロスボーダーM&Aで有利に交渉を進めるために必要なこと

昨年から私は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、アジア各国に20以上の関連会社を有する企業の買収案件に買主側として関与しています。ここまでの規模になると、ニューヨークから全てをコントロールすることは不可能であり、現地のローカル・カウンセルとの提携・協力関係が必須になってきます。各国特有の法規制(特に外資規制と証券法、独禁法、労働法などが重要です)を正確に調査・理解することは現地の弁護士でなければ不可能であり、かつ、現地での人脈も大切になってきますので、遠隔操作で物事を進めることは現実的ではないからです。

このような中で各国の当事者の行動パターンや、カウンセルの対応を見ていますと、クロスボーダーM&Aを考えている日本企業がこれから身につけていかなければならないいくつかのポイント(スキル)があることに気付きます。

1つ目は、「意思決定のスピード」を上げることです。日本の会社の多くには厳格な稟議・決裁システムが存在し、例えば買収条件の変更などを相手方から求められると、担当者が会社に持ち帰り、上司に相談し、正式に稟議書を作成した上で、最終的には取締役会に掛けて承認を得るというプロセスが踏まれるのが通常だと思います。これに対して、M&Aに慣れている欧米の企業は、現場で交渉に臨む担当者に一定の判断権限が与えられていたり、CEOの承認が迅速に得られる社内体制にあることから、日本企業よりも早く結論を出してくるケースが多いと感じます。M&Aでは「スピード」と「タイミング」が思いのほか重要で、競合者が複数存在する場合には、指定された締切りに間に合わなかったために負けてしまうケースもあります。

2つ目は、「買収後の詳細な事業計画」を作ることです。M&Aは買収・合併後のシナジー効果を期待して行うため、シナジー効果でカバーできないほどの「高額な買い物」をすると、それは「M&Aに失敗した」との評価を受けることになります。シナジー効果の予測は大変難しく、エクセル上の数字を一つ触るだけで買収額の上限は大きく変化するため、計画はあってないようなものと言われることもありますが、買収後の明確な事業計画が存在しないと、「買収金額をどこまで上げて良いかが分からない」という根本的な問題に遭遇します。そのような中で交渉を続けていると、必然的に相手の要求する条件を飲まされて、結果として「高すぎる買い物」をしてしまう可能性が高いと考えます。

3つ目は、「情報戦」に勝つことです。冒頭で述べたように、クロスボーダーM&Aでは、いわば「自分の庭の外」で戦うことになります。スポーツで言えば「アウェイ戦」です。アウェイ戦で交渉を有利に進めるためには、常に交渉の相手方や、現地のプラクティス、レギュレーションに関する情報収集を怠らないことが大切になってきます。国内M&Aよりも数段難しくなるデュー・ディリジェンスを効果的に進められるように、また、相手から直接受け取る情報を鵜呑みにすることには大きなリスクがありますので、各種問題点について自ら主体的に判断できるように、信頼できるローカル・カウンセルとのネットワークを築くことが求められます。

日本の会社の場合クロスボーダーM&Aの実績と経験がまだまだ少なく、これからしばらくは不利な交渉を強いられる可能性があると予想していますが、世界規模での業界再編の流れは止まりそうにありませんので、上記の点に留意しつつ、M&A交渉に負けないように、また、買収後に苦しまないで済むように万全の準備を行っていきたいところです。

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