プロフィール

井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その6)

前回整理したとおり、アメリカの特別委員会については、
① 会社法に基づき、正式に交渉権限や判断権限を委譲される、
② 委員は取締役の中から利害関係のない者が選ばれる、
③ 外部専門家はアドバイザーとして特別委員会の外からアドバイスを行う、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確になっている、
⑤ 判例法上、最終判断権限のない特別委員会には立証責任の転換等の効果が与えられないことが明確にされつつある、

といった特徴が挙げられることになります。

他方、日本では、
① 任意に設置された特別委員会に交渉権限や判断権限を委譲する法的根拠がない、
② 特別委員会の委員は取締役会の外からも広く選ばれている、
③ 外部専門家が委員そのものに就任することが多い、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確にされていない、
⑤ 特別委員会の判断に拘束力を与えるべきケースが判例上明確になっていない、

という状況にあります。

これでは混乱が発生するのもやむを得ないと感じますが、それでも日本で特別委員会は普及しつつあります。それは、前述のように、経産省・法務省の指針や企業価値研究会の報告書において、特別委員会の設置が推奨されているからであり、また、機関投資家や議決権行使助言機関が、特別委員会とセットの買収防衛策であれば賛成に回る可能性があることを表明しているからであると考えます。ブルドック事件最高裁判決が、防衛策の是非は株主総会が決定すべきとしたことから、ほとんどの企業が防衛策導入ないし発動に当たって株主の承認を得るようになると予測しますが、そうであれば「株主の同意を得るために特別委員会を利用する」という発想も出てくるわけです。株主総会さえクリアすれば裁判所もクリアできると考える当事者、アドバイザーも多いでしょう。

しかし、特別委員会が、取締役会内部の利益相反問題を解決するために生み出された制度であることを忘れてはならないと思います。個々の委員の「独立性」が徹底していなければならない(すなわち、「社外」取締役や「社外」監査役という概念では足りない)のはもちろんですが、仮に委員の独立性が確保されていたとしても、特別委員会の判断結果に拘束力があるか、利益相反取締役の意思を排除したと評価できるだけの体制が整っていない限り、特別委員会は「利益相反問題を解決する道具」にはなりきれないと考えます。

現在、特別委員会の構成については、
「企業価値を毀損するか買収提案かどうかについての判断は本来業務執行の範囲に属するから、社外監査役は委員にすべきでない。」
「企業価値を毀損するか買収提案かどうかについての判断は業務執行の範囲には属しないから、社外監査役は委員にしてもよい。むしろ社外監査役を中心に構成すべきだ。」
「特別委員会の中立性を確保するために、社外取締役を委員から排除すべきだ。」
「社外取締役でも社外監査役でもない社外者の委員については、防衛策とセットで株主総会に提示し、その信任を得ておく必要がある。」
といった意見が出ていますが、独立取締役制度の存在しない日本において性急に特別委員会を普及させたために発生した制度のひずみを何とか人選でカバーし、足りない部分は株主の信任を得るというプロセスでフォローしようとしている状態であることが分かります。しかし、本来、委員の独立性の問題/委員の判断能力の問題と、特別委員会の権限・効果の問題は別の議論ですので、後者について、制度的な解決がなされない限り、どのような人選を行っても、裁判所の事実認定に与える影響は小さいままだと考えられますし、仮に株主総会が人選について承認したとしても、会社の役員でない委員に関して株主が事後的に善管注意義務違反を問えるわけではありませんので、その承認に利益相反問題をクリアさせるだけの効果を与えることはできないと考えます。

利益相反というのは、具体的にはその取引に利害関係を有する業務執行者と株主の利益相反、あるいは、支配株主(およびそれと利害を共通にする経営陣)と少数株主の利益相反です。社外独立チェック型ではない日本の取締役会や現状の特別委員会ではこの利益相反問題を解決できないと踏んで、裁判所は利益相反問題で損害を被る株主自身に直接意思決定をすることを求めています。取締役会も公正な判断が期待できない、裁判所も経営判断は行い難い、よって、株主に任せるしかないという流れです。しかし、株主といっても、多数派株主に少数株主の利益を考えた判断を要求することは困難ですので(アメリカと異なり支配株主に善管注意義務が課せられていない日本では尚更)、少数株主の利益保護が問題となっているようなケースでは、少数株主の過半数同意を要求するといったところまで整備しなければ万全とはいえないと考えます。

①支配株主が関与する取引、②会社の売却、③買収提案を受けている中での防衛策の発動といった利益相反リスクが高い場面(アメリカではいずれもBusiness Judgment Ruleの適用が否定されている場面)においては、特別委員会を設置し、その判断を「最大限尊重する」だけでは、裁判所において公正な取引であったとの認定を受けられる可能性は保証されていないと考えるべきでしょう。独立取締役制度が存在しない以上、株主総会の承認というプロセスを利用せざるを得ない場面も出てくると考えますが、その場合でも、株主総会を経たから安心と考えるべきではなく、不利益を被る株主のInformed Judgmentを得るために万全の準備をしなければならないと考えます。

なお、アメリカでは、特別委員会は、文字通り特別なケースにおいてしか設置されません。アメリカで独立委員会が利用されるようになったのは1970年代と言われていますが、独立委員会が利用されてきたのは、取締役の過半数が利益相反状況にある場合であり、具体的には、①MBO、②親子会社間の合併、③株主代表訴訟などのケースに限られていました。独立委員会が一旦設置されると相当の費用が発生するほか、「利益相反のある取締役グループ」と「特別委員会を構成する取締役グループ」がいずれも善管注意義務(損害賠償リスク)の下で真剣に判断し、交渉を展開する結果、両者の間に将来修復できない溝が発生する可能性すらあります。更には、「特別委員会を設置した」という事実のみで、裁判所から取締役会の利益相反性が疑われる可能性もあります。よって、アメリカのローファームは、メンバー選択はもちろんのこと、特別委員会の設置そのものに対してかなり慎重であると言えます。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/43-05f455d0

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。