プロフィール

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その5)

経産省・法務省の買収防衛策指針において、特別委員会が防衛策発動の是非を判断することが推奨されている結果、ここ2年間に公表された事前警告型買収防衛策においては特別委員会の設置を含むものが相次ぎました。特別委員会の構成については、
① 社外監査役+社外者
② 社外者のみ
③ 社外取締役+社外監査役+社外者
④ 社外取締役+社外監査役
⑤ 社外監査役のみ
⑥ 社外取締役のみ
といったパターンに分けられますが(①と②の割合が大きい)、ここで社外取締役と社外監査役が多く登用されているのは、<平成17年5月27日付け「企業価値報告書」>が、以下のように述べていることの影響であろうと考えています。

【(法律上の責任と権限のある社外取締役や社外監査役の判断の重視)
第三者は、会社(株主)に対する責任と権限を有しているほど、合理性が高まり、株主などの支持を集めやすい。この点に関して、社外取締役は他の取締役と同様に、株主総会で選任され、会社に対する善管注意義務と忠実義務を負い、業務執行の決定権限を有する取締役会の構成員である。
社外監査役は、株主総会で選任され、会社に対して善管注意義務を負い、取締役会で違法又は著しく不当な決議がなされる場合には意見を述べる義務を負い、取締役の法令・定款違反行為の結果、会社に著しい損害を生じるおそれがある場合には、その行為の差し止めを請求することができる。また、任期が4年である、選解任に関して監査役会の意見が反映されるなど、その法的地位には、業務執行者からの高度の独立性が商法の規定によって担保されている。さらに、会社が取締役に対し訴訟を提起する場合の会社側の代表権限を有する、取締役に対する責任減免や代表訴訟における訴訟上の和解に対する同意権が付与されているなど、株主の利害と経営者の利害とが相反する局面において間に入る機能も付与されている。
これらの意味で、まずは、社外取締役や社外監査役が有事における防衛策の維持解除の判断を担うことが合理的な方策となる。そして、社外取締役や社外監査役の判断を重視して、取締役会が防衛策の維持解除を決定する仕組みを明確に導入することが必要となる。】


さて、誰が特別委員会の委員として適切かという問題を考える前に、特別委員会の位置付けとその効果について考えてみたいと思います。なぜなら、特別委員会については、ニレコ東京地裁決定において、「特別委員会の勧告を最大限尊重して取締役会が決定するという仕組みは、取締役会が勧告に従わない余地を残している以上、取締役会の恣意的判断を防止する仕組みとはいえない」と判断され、このような考え方に対して「そのとおりである。最終的に独立性に疑問のある取締役会が判断するのであれば、欠陥防衛策である。」という支持意見(*1)が出てきた一方で、「特別委員会は取締役会の単なる諮問機関であるから、その判断は法的に意味を持たないし、善管注意義務を負う取締役が善管注意義務を負わない特別委員会の判断に拘束されることは問題である。」という反対意見(*2)も度々耳にするからです。

確かに、特別委員会の委員は、結果として社外取締役や社外監査役が務めることがあったとしても、株主総会で改めて選任されるわけでもなく(逆に言えば、現経営陣が依頼するケースが多い)、取締役や監査役という地位を離れて会社法上の責任(善管注意義務)を負担するわけでもありません(そこで、次善の策として、会社との間で、善管注意義務を盛り込んだ契約を締結するのが最近の流行)。すなわち、特別委員会は会社法上の根拠を有しない任意機関であり、業務執行に関する決定権限は(取締役会設置会社の場合)完全に取締役会に残されています。
では、このような特別委員会の位置付けや効用についてどう考えればよいのでしょうか。特別委員会制度もアメリカからの輸入品と言えますので、ここで再度、アメリカ(デラウエア州)の状況を整理しておきたいと思います。

まず、アメリカでも、特別委員会が当然に拘束力のある最終判断権限を有しているわけではありません。デラウエア州会社法上、取締役会全体で判断しなければならない事項(合併、資産譲渡、定款変更など)が定められており、少なくともこれらの重要事項については特別委員会に最終決定させるわけにはいきません。ただし、デラウエア州会社法§141(c)は、

"to the extent provided in the resolution of the board of directors [creating the committee], or in the by-laws of the corporation . . . may exercise all the powers and authority of the board of directors in the management of the business and affairs of the corporation . . . "

と規定していますので、特別委員会を組成する際の取締役会の決議または付属定款で定められた範囲内において、取締役会の判断権限を特別委員会に委譲することが認められています。この点、日本の会社法においては、取締役会が委員会設置会社の委員会ではない任意設置の委員会に権限を委譲できると定める規定が存在しませんので、特別委員会については判断権限を付与する法的根拠がないことになり、ここに最初の違いが発生します。

続いて、アメリカでは、「特別委員会の判断に拘束力を持たせなければ、特別委員会に期待されている効果は付与することができない」と判示されたケースが複数存在します。有名なのは、Going Private取引に関するKahn v. Lynch事件(*3)です。この事件で裁判所は、「特別委員会は、一般株主にとって最大利益となる取引のみを承認し、それ以外の取引については拒絶できる権限を有していなければならない」(*4)としました。ニレコ地裁決定は、この判例の影響を受けた可能性があります。

前提知識として、デラウエア州の判例法理によれば、特別委員会については、

① 支配株主(controlling stockholder)が存在しない取引で特別委員会を利用すれば、審査基準がEntire Fairness StandardからBusiness Judgment Ruleに変更される。
② 支配株主(controlling stockholder)が存在する取引で特別委員会を利用すれば、審査基準はEntire Fairness Standardのままであるが、Entire Fairness(が存在しないこと)の立証責任が原告側に転換される。


という効果があります。Kahn v. Lynch事件は後者のケースでした。よって、Kahn v. Lynch事件に当てはめると、仮に、特別委員会の判断に拘束力を持たせなければ、立証責任の転換という効果を得られないことになります。立証責任の転換といえば単にプロセスの問題であるかのようにも聞こえますが、実際は原告側に立証責任が転換されてもなお取締役側が敗訴したケースはほとんど聞いたことがありません。実務上は、勝訴・敗訴をはっきり分けるほど重要な効果だと言ってよいと考えます。よって、アメリカのM&A実務では、とりわけGoing Private取引の場合には特別委員会に拒否権を与えるとともに、特別委員会が拒否権を行使するのをためらうような脅しの存在や力関係上の問題点を裁判所に指摘されないように細心の注意を払います。

また、別の例として、会社の売却について検討するための特別交渉委員会が設置された場合には、多数派株主や利害関係ある取締役が契約書の文言や条件について指示をすると、やはり特別委員会の効用を奪われてしまいます。よって、特別交渉委員会については、①真の交渉力を備えていることと、②多数派株主が契約書の条件を指示しないことが求められています(*5)。いずれにしても、特別委員会を利用することの意味・効果と、特別委員会が有していなければならない権限が明確になっています。

更に、デラウエア州判例法上、特別委員会には、独自の判断で外部の専門家アドバイザーを雇う権限が付与されていなければならないと言われています。よって、実務でも必ず社内のGeneral Counselとは別に外部の法律事務所が関与します。しかし、彼らは特別委員会の委員になるわけではありません。

まとめますと、アメリカの特別委員会については、
① 会社法に基づき、正式に交渉権限や判断権限を委譲される、
② 委員は取締役の中から利害関係のない者が選ばれる、
③ 外部専門家はアドバイザーとして特別委員会の外からアドバイスを行う、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確になっている、
⑤ 判例法上、最終判断権限のない特別委員会には立証責任の転換等の効果が与えられないことが明確にされつつある、

といった特徴が挙げられることになります。

他方、日本では、
① 任意に設置された特別委員会に交渉権限や判断権限を委譲する法的根拠がない、
② 特別委員会の委員は取締役会の外からも広く選ばれている、
③ 外部専門家が委員そのものに就任することが多い、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確にされていない、
⑤ 特別委員会の判断に拘束力を与えるべきケースが判例上明確になっていない、

という状況にあります。

次回のコラムでは、これらの違いに関して更に検討を続けてみたいと思います。


(*1) http://www.nobuosayama.com/ithink/archives/2005/06/index.html
(*2) 例えば、山田剛志・金融商事判例1219号8頁など。
(*3) Kahn v. Lynch Communications Systems, Inc., 638 A.2d 1110 (Del. 1994)
(*4) ”a special committee of the target's independent directors was empowered to negotiate and veto the merger”
(*5) Rabkin v. Olin Corp., C.A. No. 7547, 1990 WL 47648, Del. Ch.(1990)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/42-18b47bbc

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。