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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その4)

さて、独立取締役とは、当該企業およびその親子会社またはそれらの経営陣との間で、自己または自己の近親者が特定の利害関係(雇用関係や取引関係など)を有していないことを指し、会社法が定める「社外取締役」の概念とは異なり、実質的に判断すべき部分が大きいものということで、概ね理解の一致が得られているように思います(*1)。その中でも、独立性の要件を厳格に規定する方向へ既に動いたのがエンロン事件を経験したアメリカであり、その辺りは議論が固まるまでもうしばらく様子を見ようというのが日本の現在の状況だと考えますが、社外取締役・社外監査役の独立性判断に関係する事実の存在(人間関係、資本関係、取引関係など)は、既に有価証券報告書の開示項目に含まれていますし、金融庁はNYSE型あるいはそれに近い形で独立取締役の要件を設定することを検討していると思われますので、日本において「独立取締役」という概念が定着するのも時間の問題だろうと感じます。このようにしてアメリカ型コーポレート・ガバナンスが留まることなく日本に流入してきているわけですが・・・、アメリカ型コーポレート・ガバナンスとは、少なくとも現時点においては「株主利益の飽くなき追求から導かれる合理的制度の数々」であり(判例や州法は必ずしもそうではありませんが、企業側の認識として。)、その結果、多くの投資家・企業・経営者が「高株価経営」というマジックワードに心を奪われています。「独立取締役」という制度一つを取り上げてみても、日本は、世界のキャピタル・マーケットを最大限有効活用したいと考えているステイクホルダーの存在を忘れることなく、「モノづくりと貯蓄」をベースに堅実な経済発展を遂げてきた国として、自らの適性をよく考えてベストな手法を導入しなければならないと感じさせられます。

「アメリカ型コーポレート・ガバナンスの輸入」といえば、2003年の商法特例法改正によって導入された委員会等設置会社(会社法下における現在の名称は「委員会設置会社」)です。当時は、商法特例法上の大会社のみが導入することができましたが、2006年に施行された会社法によって、定款に委員会を置く旨の定めを設けることで、その規模を問わず委員会設置会社を選択できることになりました。委員会設置会社には取締役会と執行役が置かれ、取締役会の中には指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会が設置されます(*2)。その一方で、監査役(監査役会)を設置することはできません。この仕組みはまさにアメリカの会社統治の仕組みと同じです。アメリカでは、SP500社(*3)の100%が監査委員会を設置し、報酬委員会は99%、指名委員会は88%程度設置されていると言われています。そして、いずれの委員会においても、独立取締役が80~90%超を占めています。日本もいずれ同じような状況になるのでしょうか。

日本では、アメリカと比べて経営者の労働市場が流動的でないため監督能力を有した社外取締役を数多く確保できるのかが危惧されており、また、執行役・委員・取締役の兼任が一部において認められていることから、業務の執行と監督が分離しきれていないという指摘もあります(つまり、取締役と独立した監査役を置く従来型の方が有効ではないかという議論)。更にアメリカの独立取締役と異なり、親会社や取引先の関係者など、執行役からの独立性が疑われる者も社外取締役の資格を満たすため、社外取締役による監視機能の実効性には疑問があるとの批判もあります。しかし、経営者市場が発達していないという点は時の経過を待つほかないとしても、残り2つの批判については、独立取締役の要件を明確に定め、NYSE規則のように監査委員会と報酬委員会は全委員が独立取締役でなければならないと定めることによって、あるいは、ドイツのように執行役と取締役は兼任することができないと制度変更することによって解決することが出来ます。したがって、これまでの経緯を観察する限り、今後の日本は、上記のいずれかの方向に流れていくように思われます。今回の会社法制定によって、公開株式市場を利用しないような小さな会社に対する取扱いが定められた一方で、会社の規模に関係なく委員会設置型を選べるようになりました。この変更は、少なくとも市場で株式を流通させる公開会社についてはアメリカ型企業統治体制を浸透させるステップの第一歩になる可能性があると考えています。

話題が逸れてしまいましたが、独立委員会の構成、効用などについては、次回のコラムで改めて述べたいと思います。


(*1) <平成17年5月27日付け「企業価値報告書」>は、以下のように述べています。
【独立性とは、防衛策の是非をチェックする社外取締役と社外監査役が、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えるために要求される概念であり、会社との実質的な独立性が要請される。例えば、主要取引先、顧問アドバイザー、メインバンク等の債権者、親族、元従業員などは、防衛策を監視する「独立社外者」として適正か否かについて、その実態を慎重に精査し、株主の納得と理解が得られるものでなければならない。
独立性の議論は、制度としては試行錯誤を続けている状況だが、要は、取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えていることが重要であり、会社との実質的な独立性が最も問われることとなる。防衛策の是非をチェックする第三者のあり方について、社外取締役と社外監査役を軸に、独立性を確保するような自主的な工夫が必要である。例えば、取締役会に占める社外取締役の割合が少ない場合、独立性のある社外取締役や社外監査役の意見が十分反映され得る企業統治委員会を組織し、有事においては、買収防衛策の発動について、この委員会の勧告を尊重するといった工夫が必要となる。
今後は、こうした各企業独自の工夫に加えて、第三者の要件についてルール化の検討も急がねばならない。】
(*2) 各委員会の決定は拘束力を持ち、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならないとされています。しかし、取締役と執行役の兼任は許されていますので(会社法402条6項。これはアメリカでも同様。)、執行役が委員を選解任する取締役会のメンバーの多数を占め、かつ、監査委員会を除いて(400条3項)、委員会の中にも50%未満であれば執行役が入り込むことができます。この点、アメリカのNYSE規則は、監査委員会と報酬委員会は全委員が独立取締役でなければならないと定めていますので、日本の委員会では、独立性が徹底されていないことが分かります。
(*3) Standard & Poor's 500 Stock Indexに含まれる500社

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