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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その3)

前回はNYSEが定める「独立性」テストについて紹介しましたが、アメリカにおける「独立性」の基準がNYSEのマニュアルに記載されている一種類しか存在しないわけではありません。例えば、<NASDAQマニュアル>のRule 4200では、「過去3年間」「10万ドルの報酬」といった数値はNYSEマニュアルと同様ですが、「会社の売上の2%または100万ドル以上の大口取引先の従業員ではないこと」というNYSE基準については異なる数値が設定されています。また、判例の中には、取締役が報酬を受領していた点を問題にするもの(Kranser v. Moffett 826 A.2d 277 (Del. Supr., 2003))、取締役が受ける非金銭的利益や交友関係・社会的関係にも注目するもの(In re Oracle Corp. Derivative Litigation, 824 A.2d 917 (Del. Ch.2003))などがあり、裁判所が多くの要素を考慮して「独立性」に関する実質的な判断を行っていることが分かります。

これに対して、日本における議論の状況はどうでしょうか。最近の日本では、「敵対的買収時における独立取締役の役割」と「MBOにおける独立取締役の役割」という2つのトピックの中で独立取締役の議論が展開されることが多いため、この2つに関して順番に書いていきたいと思います。

1. 敵対的買収時における独立取締役

経産省と法務省は、平成17年5月27日付け<「買収防衛策指針」>の中で、

(独立社外者の判断の重視)
「買収の開始後に買収防衛策としての新株予約権等を消却するかどうかの判断は、その対象が高度な経営事項を含む可能性がある一方で、内部取締役の保身行動に左右されるという特徴を有する。したがって、会社の経営事項を理解できる社外者が、株主には入手困難な企業秘密等の情報も入手した上で、買収提案等を評価することには合理性がある。さらに、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を備えた独立性の高い社外取締役や社外監査役(独立社外者)の判断を重視するよう設計しておけば、株主や投資家に対し、取締役会の判断の公正さに対する信頼を生じさせる効果があり 、こうした社外者と会社との間の独立性が高まるほど、その効果はより向上する。
このため、買収防衛策は、消却条件の客観性の度合いに応じて、社外者あるいは独立社外者の関与の度合いを高める工夫が必要となる。特に、客観的な消却条項を設けない場合には、原則として、取締役会の恣意的判断を排除するために、独立社外者の判断を重視する仕組みが必要となる。」
(13頁)

と述べた上で、

「独立性とは、買収防衛策の是非をチェックする社外取締役と社外監査役が、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えるために要求される概念であり、会社からの実質的な独立性が要請される。買収防衛策を監視する「独立社外者」として適正か否かについては、その実態を慎重に精査し、防衛策の内容に応じて、株主の納得と理解が得られるものでなければならない。また、独立社外取締役や独立社外監査役の割合が少ない場合には、その数を増やす努力や、独立社外取締役や独立社外監査役から構成される企業統治委員会を組織し、有事においては、買収防衛策の発動について、この委員会が取締役会に勧告するといった工夫が必要となる。」

としています。すなわち、「意思決定の中立性」が大事であるとの理解の下で独立社外者の関与ないし独立第三者委員会の設置を要求し、ただ、独立性の有無や程度については、「会社からの実質的な独立性が要請される」として、アメリカ同様、実質的判断によってケース・バイ・ケースに確定していこうとする基本姿勢を示しています。

2. MBOにおける独立取締役

続いて、MBOに関しては、企業価値研究会による平成19年8月2日付け<「報告書」>と、経産省による平成19年9月4日付け<「指針」>が存在しますが、内容はほぼ同じですので、「指針」(14頁)から関連箇所(「意思決定過程における恣意性の排除」)を抜粋しますと、

【意思決定において、不当に恣意的な判断がなされないように、意思決定のプロセスにおける工夫を行うことが考えられる。例えば、以下のような対応例が考えられ、実際の案件に応じてこれらの対応を組み合わせる等して、意思決定のプロセスを工夫することが考えられる。

(社外役員が存在する場合には)当該役員、又は独立した第三者委員会等に対するMBO の是非及び条件についての諮問(又はこれらの者によるMBO を行う取締役との交渉)、及びその結果なされた判断の尊重
② 取締役及び監査役全員の承認(特別の利害関係を有する取締役を除く)
③ 意思決定方法に関し、弁護士・アドバイザー等による独立したアドバイスを取得すること及びその名称を明らかにすること
④ MBO において提示されている価格に関し、対象会社において、独立した第三者評価機関からの算定書等を取得すること】


とされており、「独立性」要件については、

「端的には、構造的な利益相反状態にあることによる不透明感を払拭するだけの、実質的に独立した監督能力・アドバイス能力等を備えている必要がある。かかる観点から、社外役員や第三者委員会の委員が有する会社との利害関係については十分に精査される必要があり、「独立性」の内容についても、対象会社から株主に対して十分な説明がなされる必要がある。」

と述べられています。よって、ここでも、独立性の要件は具体的に定められておらず、①経営陣から実質的に独立していること、②それを会社が十分説明すること、の2点が挙げられているに留まります。

このように、日本においては、「独立性」の要件を明確化しようという動きが一部あるものの(*2)、具体的な基準が定立される段階には至っておらず、裁判例も乏しいため(独立委員会が絡んだ裁判はありますが、「独立性」が正面から論点になっていない)、参考にできる前例が存在しない状態にあります。

しかし、具体的要件が提示されていないとしても、経産省・法務省が「独立取締役」「特別委員会(*1)」の利用を推奨しているわけですから、日本で近年流行している事前警告型買収防衛策においては特別委員会の利用が当たり前のような雰囲気になっています(*3)。独立委員会の構成、効用、アメリカとの比較などについては、次回のコラムで述べたいと思います。

(*1) 名称としては、「特別委員会」のほかにも、「独立委員会」「第三者委員会」「企業価値評価委員会」などが利用されています。
(*2)  山田剛志「「独立取締役」が企業経営に果たす役割」(ビジネス法務2005.7、53頁)など。
(*3) 例として、TBSは楽天からの買収提案に関して、企業価値評価特別委員会に防衛策発動の是非に関する勧告を諮問しました。また、北越製紙は王子製紙からの買収提案に関し独立委員会を招集した結果、防衛策発動勧告が発せられました。

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