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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その2)

前回に引き続き、NYSEの上場会社マニュアルが定める取締役の「独立性」基準について紹介したいと思います。なお、米国では、エンロン社の破綻後にSOX法が定められ、証券取引所が上場企業に対して独立取締役の過半数採用を義務化したため、現在、大企業においては、かかる独立取締役が取締役の約8割を占めていると言われています。この点からも、米国のコーポレート弁護士が頻繁に参照しているNYSEのマニュアル基準を知っておくことは有用だと考えます。

マニュアルの303A.02 Independence Tests(独立性テスト)は、総論として、

(a) No director qualifies as "independent" unless the board of directors affirmatively determines that the director has no material relationship with the listed company (either directly or as a partner, shareholder or officer of an organization that has a relationship with the company). Companies must identify which directors are independent and disclose the basis for that determination.
((a) 取締役は、当該取締役が上場会社と重要な関係(*1)を(直接に、または当該企業と関係を有する組織のパートナー、株主もしくは業務執行者として)有していないことが取締役会によって判断されない限り、「独立」しているということはできない。会社は、取締役のうちの誰が独立取締役であるかを特定し、その判断の根拠を公表しなければならない。)

と定めた上で、(b)項以下で、以下の取締役は独立性を有しないと定めています(英文は省略します)。

(i) 現在もしくは過去3年間の間に当該上場会社(*2)の従業員であった者、または近親者(*3)が現在もしくは過去3年間の間に当該上場会社の業務執行者(executive officer) であった者
(ii) 当該取締役または近親者が、過去3年間におけるある12ヶ月の期間内に、取締役または委員会のメンバーとしての報酬および年金その他の形式の従前の業務遂行に対する対価としての繰延給与 (但し、かかる報酬は、継続的な業務を提供することを条件としたものであってはならない) を除いて、10万ドル超の報酬を当該上場会社から受け取っている者
(iii)
(A) 当該取締役またはその近親者が、当該上場会社の内部監査人または外部監査人である事務所のパートナーである者
(B) かかる事務所の従業員である取締役
(C) かかる事務所の従業員であって、かかる事務所の監査業務、保証業務または税務コンプライアンス業務(タックスプラニングを除く)に従事している近親者を有する取締役
(D) 当該取締役またはその近親者が(現在はパートナー又は従業員ではない場合であっても)、過去3年間の間に、当該事務所のパートナーまたは従業員であり、その時に当該上場会社に関する業務に直接従事していた者
(iV) 当該取締役またはその近親者が、現在もしくは過去3年間の間に、当該上場会社の現在の業務執行者がその期間に報酬委員会に所属していたことがある会社において、業務執行者として雇用されている者もしくは雇用されていた者
(v) 過去3年間の会計年度の間に、100万ドルもしくはその会社の連結総収入の2%を超える額について、当該上場会社に対して資産またはサービスに対する支払を行い、または当該上場会社から支払を受けている会社の現在の従業員である取締役、または近親者がかかる会社の現在の業務執行者である者


細部を省略して概要をまとめると、

① 現在および過去3年間、会社との雇用関係がないこと、
② 現在および過去3年間、本人または家族が会社から10万ドル以上の報酬を受け取っていないこと、
③ 本人および家族が会社の監査関係者ではないこと、
④ 会社の売上の2%または100万ドル以上の大口取引先の従業員ではないこと、


がNYSEが定める独立取締役の要件ということになります。これについて、企業価値研究会は、「基本的には、取引関係者、外部アドバイザー、親族関係者は独立とみなされない点で日本の社外の概念より厳しいが、過去に会社と雇用関係にあった者のうち、離職後3年経っていて金銭的関係がない者の場合は独立の概念に合致するとされている点は日本の社外の概念よりも広い」と述べています(<平成17年5月27日付け企業価値報告書>94頁)。

さて、そうすると日本における「社外取締役」の意義が問題となりますが、日本では、会社法によって「社外取締役」という類型が設けられています(*4)。
会作法373条1項2号によると、社外取締役になるためには、

① 現在、その会社または子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく、かつ、
② 過去に、その会社または子会社の業務執行取締役・執行役・使用人となったことがないこと

が必要です。

このように日米の「独立取締役」「社外取締役」の定義を並べると、確かに、企業価値研究会が述べているような比較検討ができるようにも見えます。しかし、そもそも日本の会社法が定める「社外」性と、アメリカで発達した「独立」性の概念は重なる部分はありますが、同じものではありません。後者は前者よりもかなり実質的な判断を要求する基準です。
また、歴史的経緯を見ると、日本は、アメリカ型コーポレート・ガバナンス体制への移行を求めるアメリカから、NYSEレベルの独立性基準を採用するよう強く求められてきたわけですが(*5)、私見では、日本では未だ独立取締役市場が充実しておらず、会社と利害関係を有しないいわば部外者が会社に入ってくることを好まない風土も残っているため(これは、「株主利益の最大化は、経営陣を有効に監視できる外部の第三者でなければ実現できない」と考える近年のアメリカ型発想が根付いていないことによると思われます。)、アメリカほどの詳細で厳格な独立性基準を導入するに至っておらず、とりあえず形式的な社外性基準を置いて実務での議論の進展を待っている状況にあるのではないかと考えます。

実際に、東京証券取引所が「有価証券上場規程」等の一部改正を行った平成17年末に、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に独立取締役(監査役)に関する報告事項を盛り込むかどうかを巡って、以下のようなやりとりがありました(<パブリック・コメント>における議論)。

パブリック・コメント
「独立取締役(監査役)」という新たな概念を盛り込むことには反対であり、これについては社外取締役・社外監査役に関する従来の開示等で充分である。」
「現在、独立性についての概念は曖昧であり、コンセンサスが得られているわけでない。議論が未成熟なまま、「独立」か否かについて、各社が主観的に判断・開示することになれば、むしろ、投資家の混乱を招くおそれや投資家をミスリードする可能性がある。まずは、実証分析を行った上で、開示の必要性の有無について検討すべきであり、一律に記載を強制するのは、時期尚早である。各社の自主的な判断に応じて、「社外の人材の活用」について自由に記載できる仕組みとし、「独立取締役」等の定義付けが困難な項目は削除すべきである。」

東証の回答
「企業不祥事の防止などに当たっては、一般の株主の利益を代表する独立した社外の人材による経営に対するチェックが、ガバナンス上有効に機能することが期待できるため、我が国における経営の外部チェックを担う社外取締役・社外監査役のいずれについても、一定の独立性があることが有用であると考えます。
一方で、ご指摘のとおり、独立性については各方面で多様な議論がなされている最中であることから、今回は、形式的な定義を定めることは考えておりませんが、投資家の関心も高いと考えられることから、従来開示していただいている社外取締役・社外監査役と当該会社との関係に加え、当該関係の人材を採用している理由等を説明していただく中で、各社が実際にその社外性を十分に活用しているか、独立性についてどのように認識しているのかについて明らかにしていただくこととします。これにより、企業経営の実態と有機した形で独立性についての議論が一層深まるものと考えられますし、経営者自身にあらためて自社の経営監視機能について熟慮していただく契機になるものと考えます。」

上記の議論を見ると、東証が用いている「一般の株主の利益を代表する独立した社外の人材による経営に対するチェック」というのはまさにアメリカ型コーポレート・ガバナンス体制を意味しており、これに対して産業界の一部からは反対または躊躇する意見が出ていることが分かります。日本では、会社法において「社外」の概念を定めているに過ぎず、独立取締役に関する議論も始まったばかりですので、現在の混沌とした状況は当然と感じます。

アメリカでも実は1950年頃には独立取締役は全体の20%を占めているに過ぎませんでした。それが2005年には75%まで増加したわけですが、さて、日本はアメリカがこの50年間に歩んできた道を同じように歩むのか・・・もし歩むのであれば、アメリカでこの50年間に発生した多くのトラブルやそれを解決するために編み出された工夫についても学ばなければならないでしょう。

いずれにしても、この独立取締役の問題は、コーポレート・ガバナンスを考えるに当たって極めて重要なテーマですので、次回のコラムで更に詳細に検討してみたいと思います。


(*1)取締役と上場会社の関係の重要性を評価する際には、当該取締役が関係を有している個人又は組織からの独立性についてもチェックされます。ここでいう「重要な関係」とは、商業、産業、銀行、コンサルティング、法律、会計、慈善、親族その他の関係を含みうるとされていますが、株式保有は、独立性の障害とは見なさないとされています。また、取締役の独立性について、会社は毎年の委任状説明書(proxy statement)または年次報告書(10-K)に明記しなければなりません。
(*2) 「会社」とは、当該会社の属する連結集団における全ての親会社および子会社を含みます。
(*3) 「近親者」とは、当該人の配偶者、親、子、兄弟姉妹、法律上の父・母、法律上の息子・娘及び法律上の兄弟姉妹、並びにかかる人と住居を同じくしている全ての人 (家事奉公人を除く) を含みます。
(*4) 社外取締役は、会社に対する責任について通常の取締役とは異なる扱いを受け(会社法427条1項)、また、取締役設置会社において、取締役会が会社法362条4項1号・2号に掲げる事項の決定を特別取締役(373条)の決議に委ねるためには、社外取締役を選任しなければなりません。なお、取締役の数が6人以上でうち1人以上が社外取締役である株式会社においては、本来取締役会の決議事項とされる、重要財産の処分及び譲り受けと多額の借財(362条4項1号2号)について、あらかじめ選定した3名以上の取締役の過半数の賛成で決議することができますが、この選定された取締役のことを特別取締役といいます。
(*5) http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j098.html

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