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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その1)

今回からしばらく、米国では第4期M&Aブームが発生した1980年代から問題となり、日本でもここ数年注目を集め始めた「独立取締役」の意義や効果に焦点を当てて、買収防衛策導入やMBOの場面でよく耳にするようになった「特別委員会」に関する昨今の議論も含めて、日米の状況を整理していきたいと思います。

まずは、1985年の有名なUnocal判決(*1)についておさらいをします。
石油大手のUnocal社を、1回目は現金、2回目はジャンクボンドで支払うとする二段階強圧的TOBによって買収しようとしたMesa社が、Unocal社が採った防衛策(Mesa社を除く全株主を対象とする自社株のTOB)の適法性を争い、その差止めを求めたこの事件において、デラウエア州の最高裁判所(*2)は、買収防衛策を導入する場合には、取締役会が会社や株主の利益よりも自己の利益のために行動するおそれがあるため、取締役会の判断を尊重するBusiness Judgment Ruleではなく、より厳しい基準(Enhanced Scrutiny Testと呼ばれ、立証責任を取締役側が負う。)が妥当すると述べた上で(*3)、

① 会社の政策や効率性に対する脅威が迫っていると信じる合理的な根拠があり(*4)、
② 採られた防衛策が生じた脅威との関係で合理的であったこと(*5)

を取締役が立証することを要求し、更に、①については、「利害関係のない独立した取締役が多数を占める取締役会が承認した事実があれば、立証が相当程度強化される」と述べました(本件ではUnocal社が勝訴しましたが、同社の取締役会のメンバー14名のうち8名が独立社外取締役であったこともこの結論に影響を与えたと考えます。)。すなわち、「会社の経営方針や効率性に対する脅威」が迫っているかどうかを取締役が判断するに当たっては、取締役は合理的な調査を行い、誠実に(in good faith)検討しなければなりません。その場面で、自己の利益を重視して、当該提案は会社にとって脅威だと主張することは許されないわけです。しかし、取締役が自己の利益を重視したのか、会社や株主の利益を重視したのかは主観による部分が大きく、外から見て判断することは困難です。そこで、「利害関係のない独立した取締役が多数を占める取締役会」が判断した場合には、類型的に、「会社の経営方針や効率性に対する脅威」の存在が客観的に判断された可能性が高いと言うことによって、取締役の恣意的判断を減らそうとしたものだと考えられます。このように、米国ではプロセスの慎重性・中立性が既に20年以上前から重視されており、このUnocal判決によって、独立取締役を多数選任しようとする動きが活発化しました。

また、<ALI>(The American Law Institute、米国法律協会)は、有事の買収防衛策発動を認める条件として、上記ユノカル基準同様、「防衛策がTOBに対する合理的対応でなければならない」としていますが、前提として、「利害関係のない独立した取締役が構成する特別委員会」が防衛策の内容を決定しなければならないとしています。

さて、総論の次は、いかなる者であれば「独立取締役」といえるかが問題です。この点、アメリカでは、SOX法(サーベンス・オクスリー法: Sarbanes-Oxley Act of 2002)、SEC規則、NYSE規則、NASDAQ規則などにおいて独立性の概念が規定されています。例えば、<NYSE(ニューヨーク証券取引所)のウェブサイト>へ行き、”NYSE Regulation”⇒”Listed Companies”⇒”Listed Company Manual”と進みますと、NYSEの<上場会社規則>に到達できます。ここのSection 303A(Corporate Governance Standards)に独立取締役の定義や判断基準が書かれてあります。最初の303A.01には、

Listed companies must have a majority of independent directors.

とあり、上場企業の取締役の過半数は独立取締役(independent directors)でなければならないと定めています。
303A.02以降は、独立性の判断基準ですが、ここは少し長くなりますので、次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) Unocal v. Mesa Petroleum Co., 493 A.2d. 946 (Del. 1985))、日本語による解説としては、「M&A判例の分析と展開」(経済法令研究会)246頁など。
(*2) 米国においては、公開企業の50%以上、Fortune500企業の約60%がデラウエア州で設立されており、裁判の数も多いため、会社法やM&Aの論点に関するデラウエア州裁判所の判断は、米国での実務に多大な影響を与えています。
(*3) Unocal判決が出るまでは、防衛策の適法性判断にはBusiness Judgment Ruleが用いられていました。
(*4) Reasonableness Test: Satisfied by demonstration that the board of directors had reasonable grounds for believing that a danger or threat to corporate policy and effectiveness existed
(*5) Proportionality Test: Satisfied by a demonstration that the board of directors’ defensive response was reasonable and proportional in relation to the threat posed

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