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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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M&Aと独禁法(その3)(日本の場合-合併・会社分割・事業譲渡について)

株式譲渡に続いて、合併(15条)、会社分割(15条の2)、事業譲渡(16条)に関する独禁法上の事前届出要件等についても、情報整理のために書いておきたいと思います。

1.合併について

15条2項は、「事前届出義務」について規定しています。具体的には、以下の2要件をいずれも充足する「会社」(*1)の合併については、公取委に対する事前届出義務が発生します。(*2)

① いずれか1つの会社:総資産合計額(当該会社の総資産額・当該会社の親会社の総資産額・当該会社の子会社の総資産額の合計額)が100億円
② 他のいずれか1つの会社:総資産合計額が10億円


<前回のコラム>でも書きましたように、以下のいずれかの場合には、届出義務がありません(同条2項但書)。以下の場合には、合併が競争に与える影響が類型的に大きいとはいえないからです。
① 合併会社のうちの1つが、他の全ての合併会社の親会社である場合
② 合併会社が全て兄弟会社である場合

手続的には、届出がなされると、待機期間(同条4項)がスタートします。具体的には、届出受理日から30日(公取委の判断で短縮可)が経過するまでは合併の効果を発生させることができません。公取委が排除措置命令を発する場合には、原則として待機期間内に(*3)「排除措置命令に先立つ意見申述・証拠提出の機会を付与する旨の事前通知」(49条5項)を行わなければならないことになっています(15条5項)。

届出義務を怠った場合、①200万円以下の罰金(91条の2)の可能性があるほか、②公取委による合併無効の訴え(18条1項)が提起されるおそれもあります。後者に関しては、届出規定違反そのものが無効原因となることに注意が必要です。

2.会社分割について

まず、16条の事業譲受け規制においては「譲受会社」が規制の名宛人であるのに対し、会社分割規制においては吸収分割における承継会社や新設分割における設立会社ではなく、「分割会社」が規制の名宛人になる点に注意が必要です。

さて、会社分割が以下の要件を充たす場合には、公取委に事前届出を行わなければなりません。届出義務があるのは「分割会社」のみです。(*4)

① 新設分割のケース:分割会社の中に総資産合計額(当該会社の総資産額・当該会社の親会社の総資産額・当該会社の子会社の総資産額の合計額)が100億円超であるものが一つ以上あり、そのほかに、総資産合計額が10億円超であるものが一つ以上ある場合
② 吸収分割のケース
 (i) 承継会社の総資産合計額が10億円以下:届出義務なし。
 (ii) 承継会社の総資産合計額が10億円100億円以下:分割会社の中に総資産合計額が100億円超であるものが一つ以上ある場合に届出義務発生。
 (iii) 承継会社の総資産合計額が100億円超:分割会社の中に総資産合計額が10億円超であるものが一つ以上ある場合に届出義務発生


①分割会社のうちの1つが、他の全ての分割会社の親会社である場合、②分割会社が全て兄弟会社である場合に届出義務がないのは合併時と同様です。また、待機期間や届出義務違反の効果も合併と同様です。

3.事業譲渡について

事業譲渡においては、「譲受会社」が規制の名宛人になります。
  
以下の2要件をいずれも充たす場合には、公取委に対する事前届出義務が発生します。届出義務があるのは「譲受会社」のみです。(*5)

① 譲受会社:総資産合計額が100億円超
② 譲渡会社
(i) 事業全部の譲渡のケース:総資産の額が10億円
(ii) 事業の重要部分または固定資産の譲渡のケース:「譲渡対象部分に係る最終の損益計算書上の売上高」が10億円


ここで、「重要部分」の解釈が問題となりますが、会社法上の「重要部分」の解釈とは同一ではありません。具体的には、独禁法上の「重要部分」とは、

【事業を承継させようとする会社にとっての重要部分を意味し、当該承継部分が一つの経営単位として機能し得るような形態を備え、事業を承継させようとする会社の事業の実態からみて客観的に価値を有していると認められる場合】に限り、
【事業を承継させようとする会社の年間売上高に占める承継対象部分に係る年間売上高の割合が5%以下であり、かつ、承継対象部分に係る年間売上高が1億円以下の場合には、通常「重要部分」には該当しない】とされています(企業結合ガイドライン9頁)。

①譲渡会社と譲受会社のうちの1つが、他の全ての会社の親会社である場合、②譲渡会社と譲受会社が全て兄弟会社である場合に届出義務がないことと、待機期間・届出義務違反の効果については、合併と同様です。


(*1) ここでいう「会社」には、会社法上の会社、保険業法上の相互会社等が含まれます。合併当事会社が外国会社であっても、日本市場に弊害をもたらすことはありうるので、外国会社も本条の「会社」に含まれることに注意が必要です。
(*2) 外国会社の場合は、「総資産合計額」を「国内売上高」と読み替えてください。
(*3) 公取委が追加の資料提出を求めた場合は、「届出受理の日から120日を経過した日」か「すべての報告等を受理した日から90日を経過した日」のいずれか遅い日まで延長されます。
(*4) 外国会社の場合は、「総資産合計額」を「国内売上高」と読み替えてください。また、部分分割のケースにおいては、「総資産合計額」を「承継対象部分に係る最終の損益計算書上の売上高」と読み替えます。
(*5) 外国会社の場合は、「総資産合計額」を「国内売上高」と読み替えてください。

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