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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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Go-Shop条項の存在意義と内容

今回は、<取引保護措置とは?(その2)>で少し取り上げたGo-Shop条項について説明したいと思います。

Go-Shop条項とは、M&A契約において、本契約締結「後」に、当事者双方が合意した一定期間、売主が他の買主候補を積極的に探し、交渉することを認める条項です。Go-ShopはNo-Shop条項と呼び方が似ていますが、「No」と「Go」という言葉の違いのとおり、向いている方向は反対になります。No-Shop条項は、売主が他の買主候補を探し、競合する条件提示を行うことを勧誘したり、買収の検討に利用できるような非公開情報を提供してはならないとするものであって、独占交渉権条項とその趣旨を同じくするものといえます。これに対して、Go-Shop条項は、売主がM&Aの本契約締結後に、他の売主候補者を探すことを認める条項です。

Go-Shop条項は、具体的には(少し簡略化しますが)、以下のような表現をもって規定されます。

“During the period beginning on the date of this Agreement and continuing until August 31, 2007, Seller shall have the right to: (i) initiate, solicit and encourage any Acquisition Proposal; and (ii) enter into and maintain or continue discussions or negotiations with respect to Acquisition Proposals or otherwise facilitate any inquiries, proposals, discussions or negotiations with respect to Acquisition Proposals.”
(本契約締結日から2007年8月31日までの間、売主は、(i) 競合買収提案を勧誘し、かつ、(ii) 競合買収提案に関する協議または交渉を開始・継続し、あるいは、競合買収提案に関する質問・提案・協議・交渉を促進する権利を有する。)

日本では、「せっかく特定の相手と買収や合併の本契約に至ったのに、なぜ今更別の買主を探さなければならないのか?」と感じるのが通常ではないかと思います。契約書にサインする買主側も、容易にはこの条項に対して首を縦に振らないと思われます。では、なぜ、アメリカでは、このような一見面倒な条項が契約書に盛り込まれるようになったのでしょうか?(*1)

理論的な理由としては、取締役が負うFiduciary Dutyの結果、支配権移転の場合にはいわゆるレブロン基準が適用され、取締役は「株主にとって最高の提案を探す旅」に出なければならないという点が指摘できます。また、実務的な理由としては、本来、レブロン基準のことを考えれば最も安全で確実な「オークション」を行うべきなのですが、買主が交渉のプロセスにおいてこのオークションを嫌う傾向が強いということが挙げられます。アメリカでGo-Shop条項が盛り込まれたM&A取引の背景を調べると、いくつかのケースで「買主がオークションに発展する場合はディールから降りる」と明言したためにGo-Shop条項で対応せざるを得なかったというストーリーが書かれてあります。買主としては、オークションを行うと、買収価格が釣り上がる可能性が高いが、本契約締結後に割って入る第三者はそれほど多くはないだろう(よって、オークションよりはGo-Shopの方が望ましい)と考えるのでしょう。

デラウエア州衡平法裁判所は、このGo-Shop条項について、会社の価値を最大化させるための合理的なアプローチであり、レブロン事件で示された「合理的に達成しうるベスト・プライスを獲得する」取締役の義務に合致すると判示しています。しかし、Go-Shop条項は契約書に入れれば足りるというものではありません。権利であるから行使しなくとも良いと考えるべきではなく、取締役の義務を履行する方策の一つである以上、株主にとって最も有利な条件を獲得するために、実際に、インベストメント・バンクなどに依頼して、可能な限り声掛けを行うべきでと考えます(米国の実務では、実際に声掛けを行っています)。また、Go-Shop期間を極端に短く設定すると実質的には機能しなくなってしまいます。オークションの代わりにGo-Shop条項を利用する以上、競合買主候補を実際に探す期間、提示された競合提案を取締役会で吟味する期間、買主候補を絞り込み個別の交渉を行う期間の合計として、40日程度のGo-Shop期間は用意されるべきだと考えます(*2)。

Go-Shop条項に関しては、実際に競合買主候補が出てきた場合に、どちらを優先提案として受け入れるべきかに関する判断が難しいといった問題もあるのですが、これについてはまた機会を見つけて書きたいと思います。


(*1) アメリカではM&Aに関する多くの契約書がSECへの報告書(主に委任状説明書)の別紙として添付されているためにこれを詳細にチェックすることが可能です。このSECへの報告書を確認する限り、Go-Shop条項については、2004年から利用されているようです。
(*2) Go-Shop期間は、SECへの報告書から調査した範囲では、概ね15日から60日となっており、30日から50日が最もよく見られました。一般に、他者を排除したい当初買主候補は短いGo-Shop期間を希望します。

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