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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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種類株式の上場に関する最近の議論について(その2)

無議決権株式・少議決権株式・多議決権株式を発行することに関しては以下のような弊害があると、前回書きました。
① 出資割合と支配比率に乖離が生じるため、特定の種類株主の利益が害される可能性がある。
② 特定の株主が多議決権を保有し続けることで、本来行われるべき「支配権の移転」が阻害される可能性がある。

かかる弊害があってもなお種類株式の上場を認めるべきか?・・・ということですが、「弊害があり得るということをもって一律に禁止するというアプローチは必ずしも適切ではない」とする企業価値研究会の立場に私も基本的に賛成です。ただ、問題は、適切・有効な弊害防止策が採れるかというところにあります。

企業価値研究会の提言を受けた東証の実務者懇談会(座長:黒沼悦郎早稲田大学教授)は、「投資者保護の観点から必要と認められる一定の要件を満たした株主の権利を尊重したスキームであり、かつ、投資者にわかりやすい商品から順次解禁していくことが望ましい」と述べた上で、少なくとも以下の要件を満たした無議決権株式・多議決権株式・少議決権株式については、株主の権利の尊重がなされているものとして、原則としてその上場を認めることとすべきとしました。

【以下の5つの方策の全てが取られていること。
① 既公開会社にあっては、上場株式より議決権の多い株式を上場させる場合にあたらないこと。
② 極めて小さい出資割合で会社を支配するような状況が生じた場合に議決権種類株式のスキームが解消できるような方策がとられていること。(例:ブレークスルー条項、サンセット条項等)(*1)
③ 種類株主間の利害が対立する場面における株主保護の方策がとられていること。
④ 支配株主と会社の利益相反取引の場面における少数株主の保護の方策がとられていること。
⑤ 新規公開時における無議決権株式の単独上場の場合は、議決権付株式の譲渡等の時に無議決権株式に転換する条項が付されていること。】


①は、既に投資している一般株主の利益が不測の損害を被らないようにする必要があることから設けられた要件ですが、「既上場会社による多議決権株式の発行」については今後議論が継続されるとしても、解禁されることは当面ないものと予測します(*2)。

②は、出資割合と支配比率の乖離が無視できないレベルにまで到達しないようにする必要があることから設けられた要件ですが、ブレークスルー条項の発動要件の定め方が問題になると考えます。具体的には、発行済株式総数の何%を取得した者が表れた場合にブレークスルーを起こさせるか、またその要件が充足された場合に、具体的にどうやって多議決権株式の「多議決権」を奪うかという問題です。前者については、議決権倍率と密接に関係してきます。例えば、(「単元」については一旦忘れて、シンプルに)A種株式にB種株式の3倍の議決権を与えると仮定します。この場合、A種株式は発行済株式総数の25.1%を握れば、B種株式に74.9%握られたとしても、25.1×3>74.9となるため議決権の過半数を取得できます。しかし、A種株式にB種株式の9倍の議決権を与えてみると、A種株式は発行済株式総数の10.1%を握れば、B種株式に89.9%握られたとしても、過半数の議決権を取得できることになります。
いずれにしても、これらの数字うちのいずれかをまず固定しなければなりません。この点、東証の報告書では、会社法115条が「議決権制限株式の発行数の上限を発行済株式総数の2分の1」と定めていることから、「会社支配権を取得するには25%を超える出資割合が必要」というテーゼを導き出しています。25%以下の、例えば、20%や10%しか出資していない者が会社を支配することは認められないという価値判断です。この25%という数字を固めてしまうと、後は計算式によって、他の数字を導き出すことが出来ます。例えば、上述の例のとおり、議決権倍率を3倍超とすることを認めれば、A種株式は25%以下の保有割合でB種株式による会社支配を阻止できることになりますので、「25%ルール」に反することになります。よって、この場合、議決権倍率は3倍以下でなければならないということになります。他方で、議決権倍率に制限を設けないとすれば、理論上は議決権が限りなくゼロに近いB種株式が登場することになりますので、その状況で「25%ルール」を守ろうとすれば、会社法115条と同様に、B種株式の発行数上限を発行済株式総数の2分の1と定める必要が出てきます。いずれにしても、この「25%ルール」を基準として東証のルールが整備されるものと思います。
続いて、具体的にどうやって多議決権株式の「多議決権」を奪うか(希釈化させるか)という問題ですが、無議決権株式を発行しているケースでは議決権復活要件の中に定めるという方法が、その他の場合には取得条項付株式を利用する方法が考えられます。この点は更に詳細な検討が必要でしょう。

③④を飛ばして⑤ですが、⑤は、「議決権付株主の個性に着目して投資がなされるのであるから、その議決権付株主が変更された場合にはスキームは解消されるべき」と考えられた結果設けられた要件で、Google社の複数議決権スキームでも取り入れられています(*3)。

③④については、次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) ブレークスルー条項: 発行済株式総数のうち一定割合の株式を取得した者が現れた場合、議決権種類株式の構造を解消するスキーム。
サンセット条項: 議決権種類株式導入の目的が終了した場合、同目的を逸脱した場合若しくは同目的を達することができないことが確定した場合、又はこれらの事由が生じたとみなすことのできる場合に、スキームを解消させる方策(例:目的が終了したか等の判断を株主の意思に委ねるものとして、一定期間経過後に一株一議決権とする株主総会の特別決議等によりスキームの解消を可能とするもの)
(*2) アメリカの<ニューヨーク証券取引所(NYSE)の規則>313条でも、上場会社が上場株式よりも議決権の大きい株式を発行することは、原則として禁止されています。
(*3) <Google社の定款>参照。

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