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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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種類株式の上場に関する最近の議論について(その1)

現在の東京証券取引所の規則においては、上場会社が、
① 多議決権株式(上場している株券より議決権の多い株式)を発行する場合、または、
② 上場済み株券を、定款変更その他の方法により、重要事項(取締役の選解任等)に関する議決権を制限する種類の株式に変更する場合

上場廃止となります(目的・条件等に照らして、株主及び投資者の利益を侵害する恐れが少ないと認められる場合を除く)。つまり、上場株式に関しては、「一株一議決権の原則」が維持されているということになります。しかし、昨年(2007年)10月に日本経団連が会員企業に対して実施した調査では、73社中46社が「多議決権株式を特定のものに対して発行することに感心を持っている」と回答したようです。ニーズはあるが現状では制限されているということになりますので、企業価値研究会が公表した<平成19年12月18日付け「上場会社による種類株式の発行に関する提言」>や、それを受けて東証が公表した<平成20年1月16日付け「議決権種類株式の上場制度に関する報告書」>を参照しながら、ここでの問題点を検討してみたいと思います。

多議決権株式といえば、すぐに思いつくのがアメリカのGoogle社です。
Google社がSECに提出した<2004年8月18日付けフォームS-1>(*1)を見ますと、以下のような記載があります。

In the transition to public ownership, we have set up a corporate structure that will make it harder for outside parties to take over or influence Google. This structure will also make it easier for our management team to follow the long term, innovative approach emphasized earlier. This structure, called a dual class voting structure, is described elsewhere in this prospectus. The Class A common stock we are offering has one vote per share, while the Class B common stock held by many current shareholders has 10 votes per share.

すなわち、Google社は、「外部の者によって会社が乗っ取られたり、会社に影響を与えられたりすると困るので、1株1議決権のクラスA株式を公開するとともに、公開前の株主(主に経営陣)は1株10議決権のクラスB株式を保有し続ける」と明言しています。Googleとしては、株式公開によってキャッシュは集めたい、しかし、長期的・安定的に経営を行っていきたいという思いがあり、そのためにDual Class Voting Structure(株主総会における議決権行使に関する二重構造)を採用したというわけです。

このように、会社によっては、まとまったキャッシュが欲しい(ので、株式を上場させたい)、あるいは、議決権がたくさん欲しいというニーズがあるわけですが、他方で、無議決権株式・少議決権株式・多議決権株式を発行することに関しては、以下のような弊害があります(*2)。
① 出資割合と支配比率に乖離が生じるため、特定の種類株主の利益が害される可能性がある。
② 特定の株主が多議決権を保有し続けることで、本来行われるべき「支配権の移転」が阻害される可能性がある。


では、かかる弊害があってもなお、ニーズを重視し、種類株式の上場を認めるべきでしょうか?

企業価値研究会は、「『議決権型』『キャッシュフロー型』の類型のいずれの利用についても、その利用にはメリットが存在しうるので、弊害があり得るということをもって一律に禁止するというアプローチは必ずしも適切ではない」と述べています。では、どのような要件の下に、種類株式の上場を認めるべきか?・・・続きは次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) アメリカの会社が証券を公募発行する際には、1933年証券法に基づき登録届出書(Registration Statement)を提出する必要がありますが、この登録届出の際に利用される開示様式がFormS-1ないしS-3になります。
(*2) これら2つの弊害以外に、「既上場会社が新たに種類株式を発行する場合には、既存株主が不測の損害を被るおそれがある」という点も、前述の企業価値研究会の提言では指摘されています。この視点からは、既上場会社が多議決権株式を発行するケースに関しては一層慎重な検討が必要であるところ、今回の検討の対象からはひとまず外されています(東証も同じく、今後更に議論が必要としています)。よって、当面は、「新規公開時に議決権種類株式を上場させるケース」と「既上場会社が上場株式よりも議決権の少ない株式を上場させるケース」が検討され、結果として、これらの全部又は一部が認められるようになるものと考えます。また、「種類株式を買収防衛策目的に用いる場合」「黄金株(拒否権条項付株式)についても、今回の検討の対象外とされています。

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