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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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ゴールデン・パラシュートに対する考察(その2)

アメリカでなぜゴールデン・パラシュートが発展したのか?

アメリカでは、独立性の高い社外取締役が(防衛策についても報酬についても)判断します。ここで第一段階のスクリーニングはできていると考えられているわけです。

続いて、アメリカでは、<コーポレート・ガバナンス>のコラムでも述べたように、資本市場そのものが会社を監視しているという考え方が基本です。常識外れのゴールデン・パラシュートを導入したとすれば、例えば機関投資家が黙っていないというわけです。現に、機関投資家のうちのいくつかは、「ゴールデン・パラシュートについては株主総会の承認を得るべき」という見解を打ち出しています。ここにあるのは、「結局のところ、取締役は株主の目を盗んで好きなことはできないはずだ」という資本市場に対する信頼です。

更に、アメリカでのM&Aは常に司法判断によって形作られてきました。ゴールデン・パラシュートについては、平時での導入であればBusiness Judgment Ruleが適用され比較的自由に設定・導入ができますが、買収提案を受けた後であればユノカル基準が採用され、更に、取締役会が売却を決めた後になるとより厳しいレブロン基準が適用されるものと考えます。法外なゴールデン・パラシュートは司法が許さないはずだというわけです。

また、<ヤフーとマイクロソフトの攻防(Tin Parachutes)(その2)>でも述べたように、アメリカでは税法上、「過去5年間の平均報酬の3倍以上の退職金を役員に支払うとそれをもってゴールデン・パラシュートに該当するとされ、平均報酬を超える部分に関して20%の超過税が課される」ことになっています。つまり、「社外取締役が判断し、株主が監視し、司法が事後的にチェックし、税務上も多額のゴールデン・パラシュートについては不利益的取扱いをする」という体制が整っているからこそ、ゴールデン・パラシュートが減らないのです。これに加えて、前述の、「役員に十分な退職金を支給すると約束しておけば、自己のポジションに固執して株主に有利な買収提案を断る事態が減るだろう」という考え方が根強いというのもあります。

対して、日本では・・・、敵対的買収提案を受けた会社の取締役が買収完了後に数十億円の退職金をもらったことが判明すれば、「道義的」な批判が全面に出てきてしまうのではないでしょうか?しかし、今の日本の状況ではむしろこれは当然だと考えます。CEOの報酬水準が低いだけではなくて、上記のような「体制」が不十分だからです。「資本市場と司法判断が濫用的な経営陣と濫用的な買収者を規律する」という体制ができ、税務上の対策まで施されれば、(それが良いか悪いかは別として)日本にもゴールデン・パラシュートが普及するようになると予測しています。

なお、日本取締役協会の「資本市場を正しく使う委員会」(メンバー:日興コーディアルグループ会長金子昌資氏、早稲田大学法学部上村達男教授、久保利英明弁護士ほか)は、2005年6月17日付けで<「正しい敵対的企業買収に向けた提言」>と題する報告書を公表していますが、そこでは、ゴールデン・パラシュートは、「敵対的買収の局面における取締役の利益相反を減少させ、取締役が自己の保身を離れて、買収者の提案について、それが株主利益に資するか否かの観点から判断することを可能とする」から、「敵対的買収の局面における株主と経営者の利益相反を減少させるためには、適切に設計されたゴールデン・パラシュートを導入すべきである」との提言がなされています(12頁)。
この提言は、資本市場によるガバナンスを強化すること、証取法または証券取引所規則によって独立取締役の制度を導入することといった他の提案とともになされていますので、全体として見れば、アメリカ型コーポレート・ガバナンスシステムへの移行を提案しているものと考えられます。

「日本企業の出発点と拠って立つべき所は技術力(モノづくり)である」と考える私見からは、キャピタル・マーケットを過度に信頼したり、株価(株主)至上主義に陥ることについては、日本経済の持続的成長という観点から躊躇を覚えますが、少なくとも、ゴールデン・パラシュートについては、上記提言のように、金額の多寡だけを議論すべきではなく、ガバナンスや資本市場・裁判所の役割とも絡めて議論しなければならないということだと考えます。

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