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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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今週のメッセージ(2008年3月2日)~事業再生におけるM&A~

まずは、ブログを開始して1週間しか経っていないにもかかわらず、既に、延べ250人もの方々に訪問していただいたことについて、お礼を申し上げたいと思います。

私の出発点が企業再建絡みのM&Aであったということについては、<はじめに>で書いたとおりですが、成長企業による戦略的M&Aのケースと異なり、企業再建のプロセスで発生するM&Aというのは、基本的に自力再建をあきらめた結果としてやむを得ず行われます。将来十分なキャッシュフローが見込めないが、今すぐスポンサーがついて債務の一部を一括弁済するのであれば、債権者の方も何とか更生計画案・再生計画案に同意してくれるかも知れないというギリギリのところでM&Aを選ぶのです。例えば、会社更生事件の管財人としては、破産させて従業員全員が路頭に迷うよりも、言葉は悪いですが、叩き売り価格であっても何とか売却し、事業を継続してくれる買主を探します。しかし、それでも、コストカットや経営改善のために、誰かが、それまで働いてくれていた従業員の一部に対して退職を打診せざるを得ないときがあります。法律家であれば、ここで「整理解雇の4要件の問題か」となりがちなところですが、実態はそうではありません。このような場面に遭遇して私が一番大事だと感じるのは、一人でも多くの従業員・役員と会って話を聞くことです。現在の給料や待遇を確認したり、会社に対する不満はないか等について聴くのはもちろんのこと、家族構成や住んでいる場所まで聞いてメモに取ります。仮に、スポンサー側から退職を要求されたとしたら、この人の小学生の娘さんと中学生の息子さんの学費はどうなるのか、通える距離の範囲内で転職が可能かまで、いろいろと想像を張り巡らせます。そこで出会う人たちは、大抵は自分よりも年上の方々ですし、再建事件ともなると常に雰囲気がピリピリしていますので、「弁護士さん、若いあんたには分からへんやろうけどな」と言われたこともありました。

こういった場面では、残念ながら本に書いてあることや法律はほとんど役に立たないようです。とにかく謙虚に、しかし、事業を再建するという信念を持って対話を続けるしかありません。結果としてある人に辞めていただかなければならないときは、役員さんに転職先の斡旋までお願いします。これは管財人や民事再生申立代理人の義務ではありませんが、疎かにしていては足元をすくわれる可能性があります。

他方で、スポンサー候補者に対しては、従業員の全員引継ぎをお願いします。しかし、この全員引継ぎを完全に実行してもらうのは容易ではありません。売却交渉を上手く進めれば、契約書に全員承継に関する条項を入れてもらうところまでは比較的簡単に進めます。しかし、一旦引き継いだ従業員がその後何年間もそのまま不利益待遇を受けないでいられるかどうかについては、基本的に監視する方法がないのです。再生・更生会社は事業を売却した後に清算しますので、売却後の運営状況を後からチェックする体制がありません。スポンサー側は、「レピュテーションの問題がありますから、約束は守ります」と言いますが、そうなるともはやお互い信用するかしないかのレベルの話になってきます。
しかし、従業員との対話に関してもそうだったように、ここでも信頼関係というのはとても重要になってくると感じます。スポンサーとの対話を通じて信頼関係を構築し、従業員の皆さんにも「私たちはここまでやりました。後は皆さんで頑張ってください」と言ってサヨナラができるような状態まで持っていく。これが再建絡みのM&A案件における弁護士の役割だと思います。

債権者に対しても公明正大であり続けなければなりません。従業員を全員引き継ぐということは人件費のカットがやりにくいということですので、債権者の中には反対者も出てきます。しかし、その債権者とも、ときにこちらから訪問してきちんと対話をします。理解していただけず、その結果、再建計画が承認されないのであれば、また別の案を捻り出さなければなりません。ここでも債権者との相互理解が築けるかどうかが大事になってきます。

大事なのは法律や契約ではなく信頼関係である。・・・実務では、契約を重視するアメリカ的進め方ではうまく行かないことも多いようです。

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