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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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震災関連法務(その2)

(3)倒産に関する特例
今回の大震災により、製造ラインの損壊、大口取引先の被災、原材料の不足等により既に多くの企業が破産申立てを行っていますが、前記のとおり、東日本大震災による災害が特定非常災害と認定されたことによって、債務超過会社については、自ら破産を申し立てた場合又は支払不能である場合等を除き、平成25年3月10日までは裁判所による破産手続開始決定が留保されます(特別措置法5条)。

ここでは、経済的に困窮した企業、その取引先債権者、金融機関等の立場を超えて一般的な震災復興支援策について概略を述べますが、まず政府系金融機関によって、セーフティネット貸付、災害復旧貸付、事業再建資金に関する協会による保証等のための制度が整備されました。また、震災を起因とする手形不渡りについては、中小企業倒産防止共済法施行規則の改正により共済金の貸付請求ができます。

更に、金融庁からは、債務の履行遅滞や収支上の赤字が一過性のものと判断されるときには債務者区分の引下げを行う必要がないこと(金融検査マニュアルの特例措置)と、債権放棄・返済猶予等による柔軟な対応が要請されています(中小企業金融円滑化法については、法律の存続期限が平成23年3月末から平成24年3月末に延期され、かつ、監督指針において東日本大震災に関連した規定が設けられています。)。なお、金融機関自体が被災しているケースがありますので、金融機能強化法の改正や柔軟化により、公的資金の予防的注入等を活用しつつ、経営責任を問うことなく被災地の企業と金融機関が一体となって復興できるよう制度整備が図られることが期待されます。

(4)国際取引に関する問題   
今回の震災により、多くの輸出企業において納品遅れが発生しているものと思われますが、これが不可抗力(Force Majeure)条項によって救済されるか否かが論点となっています。国際取引契約において不可抗力条項が適用されるためには、契約書の文言により個別の判断が必要になりますが、一般的には、契約上の義務の免責を主張する側が、①契約締結時に予見できない事情であったこと、②履行遅滞という結果を回避できなかったことに合理性があること、③履行遅滞の範囲及び期間が最小限であることを主張、立証していかなければなりません。

完成品メーカー自体が被災し、製造及び出荷が一定期間不可能になった場合は不可抗力と認められる可能性が高いと考えますが、完成品メーカーの施設自体は被災しなかったが部品工場の被災を理由に製造遅延が不可抗力であると主張する場合には、調達先を分散させていなかったことが上記②との関連で問題になる可能性があり、かつ、代替調達先を速やかに見つけられなかった場合は上記③との関連で完全免責を受けられない可能性が出てきます。ただし、顧客側が部品調達先を指定又は承認している例も多いことから、実際には交渉によって解決されるものと考えます。

なお、部品調達先の変更や製造ラインの修復等により製造コストが増加するケースの方が多いと考えられますが、これを理由に製品の値上げを要求する理屈となりうる事情変更の原則については、必ずしも国際的に承認されているわけではなく(ヨーロッパ契約法等、かかる原則について規定しているケースもあります。)、仲裁等の国際的紛争解決手段に踏み切る場合、最終的には契約書に記載されていない事情は考慮されない可能性が高いことに留意する必要があります。

なお、不可抗力条項が契約に含まれていなかったとしても、過失責任を原則とする国では、自然災害を起因とする履行遅滞・不能については一定範囲で免責される可能性があります。例えば、日本では帰責事由があって初めて債務不履行責任が問われるところ(民法415条)、阪神淡路大震災の際の裁判例で、過失の前提として具体的な予見可能性を要求した上で、「本件大震災は、未曾有の大地震であるところ、このような規模の大地震が発生するのを具体的に予見することはできなかった」と認定し、債務不履行責任を否定したケースがあります(東京地判平成11年6月22日(判例タイムズ1008号288頁))。

続いて、放射性物質漏洩の影響により世界各国で日本製品(特に食品)の輸入規制が行われていますが、これによる外国取引先側の受領拒否が契約違反になるかという問題もあります。不当な輸入制限措置については、まず国家間の問題であり、WTOの紛争解決手続(当該輸出先国がWTOの加盟国である場合)等により解決されるべきですが、私企業間の受領拒否については、製品の性質や用途に応じた個別判断をせざるを得ず、協議で解決しない場合には仲裁・裁判等に持ち込むことになります。なお、今回の震災に起因して、国際取引に絡んで自社に損害が発生した場合、貿易保険による補償、救済の検討が必要になります。

(5)独禁法・下請法上の問題   
今回の震災のような非常時においては競業者間で種々の協力が行われることがありますが、例えば、運送料金の取り決めや配送地の分担、原材料の共同調達、生産調整、価格調整などの協力行為がカルテル(独禁法2条6項、3条)にならないように留意する必要があります。この点については、公取委事務総局から平成23年3月18日付けで公表されている「被災地への救援物資配送に関する業界での調整について」に記載された3要件(①被災地に救援物資を円滑に輸送するという社会公共的な目的に基づくものであり、②物資不足が深刻な期間において実施されるものであり、③特定の事業者に対して差別的に行われるおそれがないこと)を参考に、競争の実質的制限とならないよう、具体的な協力行為の態様について専門家を交えて検討する必要があります。なお、公取委のウェブサイトには「東日本大震災に関連するQ&A」が掲載されています。

また、放射能汚染を理由とする受領拒否などは下請事業者の責に帰すべき理由が認められない限り下請法4条違反となりますので、親事業者側でコスト負担を行わない検査の強要等のケースでは慎重な対応が必要となります。

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