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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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企業結合に関する独禁法問題をクリアする方法(その3)

今回は,実質的審査に入った場合に策定が必要となる問題解消措置の種類について述べます。

公取委における審査手続としては,原則として,事前相談の申し出があった日から20日以内に第1次審査が始まり,特段の問題が見当たらなければ審査開始日から30日以内にその旨通知され,第1次審査の結果,独禁法上の問題が考えられるという場合には,第2次審査に進みます。第2次審査においては,企業側が必要な資料を提出した日から原則として90日以内に結果の通知がなされます,公取委は,第2次審査に進むと取引先等にヒアリングを行ったり,広く一般から意見を受け付けます。そのようなプロセスの中で,公取委が「このままでは独占禁止法に違反する」という心証を抱いた場合,当事会社は当該M&Aがもたらす競争減殺効果を抑えるために「問題解消措置」を申し出ることが通例です。この「問題解消措置」は,公取委が案件の効力発生後に行う排除措置命令とは異なり,あくまで当事者が事前相談の中で任意に提案するプランということになります。

問題解消措置に関するデータを若干ご紹介しますと,平成8年~17年度の事前相談事例125件中,問題解消措置の実施を前提として問題がないと判断された事例は32件(25.6%)で,
① 事業譲渡等の措置14件
② 輸入・参入を促進する措置 11件
③ 行動に関する措置 16件

となっています。

最初の「事業譲渡等の措置」というのは,構造的措置と呼ばれ,当事会社の事業部門や生産・販売設備の売却,議決権処分などを指します。これらの措置はその効果が直ちに発生しますし,事後的監視の必要がなくコストも掛からないため,(特に水平型結合の場合に)頻繁に利用されます(*1)。ただし,当事会社にとっては事業や関係会社を切り離すことによる事業収益/事業構造上のインパクトが大きいために,企業結合計画自体を白紙に戻すことにつながることもあります。問題解消措置として事業譲渡が選択された例としては,大日本インキ化学・旭化成ライフ&リビング事業統合事例(平成16年度事例3)議決権処分が選択された例としては,昭和電工・日本石油化学ポリオレフィン樹脂事業統合事例(平成7年度事例1)などがあります。

また,メディセオ・パルタックとコバショウの統合事案においては,中国ブロック(70%),鳥取(90%),島根(85%),岡山(90%),広島(75%)という統合後のシェア率を前提に,コバショウが,中国地方を事業エリアとする子会社に対する保有株式の一部を同業を営む複数の事業者に売却し議決権保有比率を引き下げること,および,コバショウの子会社に対する役員派遣を解消することという問題解消措置(企業結合関係の解消)が採られて適法とされました。

ところで,これは公取委からの視点にもなるかと思いますが,構造的措置には,それが具体的に実行に移されるかどうかが確実でないという問題点があります。例えば,A社とB社が合併を計画しており,問題解消措置としてA社が行っている事業の一部を第三者に譲渡するプランが公取委に対して示されたとします。抽象的には競争力減殺効果を抑制する望ましいプランと言えますが,具体的に,いつどんな会社に事業譲渡されるかによって競争制限効果の抑制レベルは異なってきます。仮に譲渡先の会社とA社またはB社との間に資本関係があったり,役員の兼任があったりすれば,新規の競争者創出にはつながらないでしょう。また,事業譲渡時期が合併の効力発生日後に予定されている場合,実行予定と説明しつつ実際には何年経っても実行されない可能性もあります(事業譲渡や株式譲渡は相手のある話ですから,当事会社が努力をしても最終合意に至らないこともある)。この場合,事業譲渡プランは絵に描いた餅となってしまいます。そこで,企業結合ガイドライン上は,譲渡先がどこになるかといった点を含む事業譲渡計画の内容について,公取委の事前の了解を採ることが必要とされています。

また,事業譲渡や議決権処分が実行に移されるまでの間に発生しうる反競争効果を防ぐための措置も必要です。例えば,ブリヂストン・メタルファ役員兼任事件(平成7年度事例6)では,関連会社に対する株式所有比率を10%未満にまで下げるという問題解消措置が提案された上で,実際に株式を処分するまでの間の暫定的措置として情報遮断措置(当事会社と当該関連会社との間で情報交換を禁止すること)を採ることも併せて決められました。

その他の問題解消措置については,次のエントリーで書きたいと思います。


(*1) 企業結合ガイドラインにおいては,「競争の実質的制限を解消するために最も有効な措置は,新規の独立した競争者を創出し,あるいは,既存の競争者が有効な牽制力を有することとなるよう強化する措置である。このような措置としては,当事会社グループの事業部門の全部又は一部の譲渡,当事会社グループと結合関係にある会社の結合関係の解消(議決権保有の取止め又は議決権保有比率の引下げ,役員兼任の取止め等),第三者との業務連携の解消などがある。」と書かれています。なお,最後の「第三者との業務連携の解消」は,平成16年ガイドラインには存在せず,平成19年ガイドラインから追加されています。

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