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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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ディスカウントTOBの許容性

公開買付けで特定の大株主からだけ株式を取得したいときは,一般的に,ディスカウントTOBが用いられています。時代によって流行度合いの差はあるものの,これまでのデータを見ると,全TOBに占めるディスカウントTOBの割合が数割に達した年もあり,ディスカウントTOBは,上場廃止に至らないで大株主から株式を取得したい場合の便利な手段として用いられてきました。

また,会社法161条は,「市場価格を超えない価格による自己株式取得」を前提としていますので(この場合,他の株主に売主追加請求権を行使させずに特定の株主から相対で株式を取得することができる),ここでもやはり一種のディスカウント取引を認めていることになります。

ところで,こういった市場価格以下での株式売買については,売主側取締役の善管注意義務に反するのではないかという疑問が生じます。売主側取締役には,保有株式を含む会社資産について可能な限り高く売却する義務があるからです。実際に,フジテレビジョンが行ったニッポン放送株式の公開買付けに応じた東京電力に対し,東京電力の株主が,「ライブドアによる買付けの結果,(市場が動いて)買付価格が市場価格を下回ったにもかかわらず,応募を維持して株式を売却したのは善管注意義務・忠実義務違反である」と主張して株主代表訴訟を提起したケースがありました。

このケースは,当初から市場価格を下回る買付価格が提示されたわけではないという点で,計画されたディスカウントTOBではなかったかも知れませんが,結果としてはディスカウントTOB状態になりました。では,市場価格を下回る買付価格の公開買付けに応募することは許されるのでしょうか?・・・この点について東京地裁(東京地判平18・4・13判タ1226)は,市場価格を下回る買付価格の公開買付けに応募するか否かは「経営判断の問題」であると位置づけました。買付け価格は合理的である必要がありますが,何をもって買付け価格が合理的かを判断するに当たっては,裁判所は,単に値段が高い安いの問題だけではなく,要請元の企業やそのグループとの円滑な取引関係の維持や発展の要否など多様な諸要素も勘案する必要があると言っています。

その上で,東京地裁は,

① ニッポン放送株式の市場価格は買付価格を上回る価格で推移したものの,その差は1割程度であること
② 本件公開買付けに応じた目的が,経営上重要な取引先であるフジサンケイグループとの良好な関係の維持にあったこと
③ 本件買付価格は,公開買付け開始前の市場価格(3ヶ月平均)に約21%のプレミアムを加えた価格であったこと
④ ニッポン放送株式が上場廃止となった場合,株価が大幅に下落したり,換価が困難になる可能性を否定できないこと
⑤ 東京電力にとって,フジサンケイグループは大口の顧客であること
⑥ 東京電力の経営規模を勘案すれば,本件株式の処分が取締役会の決議事項に当たるとも解されないこと


といった要素を考慮した上で、東京電力の取締役の判断に善管注意義務違反は認められないと判示しました。

経営判断の原則というのは,要するにケース・バイ・ケースで判断しましょうということですので,買付価格と市場価格のバランスに留意しながらも,株式をその価格で手放す必要性と相当性に関し,訴訟になった場合に十分な攻撃防御ができるように準備しておく必要があると考えます。

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