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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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会社分割に関する論点①~債務超過のケース~

リーマンブラザーズ破綻のニュースが金融界だけでなく世界中を駆け巡っていますが、それはさておき、ニューヨークから送ったM&A関連の文献や資料が昨日ようやく手元に届きましたので、ブログを再開したいと思います。

仕事上、ときどき、「債務超過の場合にも会社分割ができるのか」「分割する対象(資産や負債)は自由に決めてもよいのか」という質問を頂戴します。そこで、以下、簡単に検討してみたいと思います。

1 債務超過と会社分割

ここで「債務超過」と言う場合、①会社分割の結果分割会社が債務超過になってしまうケース、②承継会社に移転する負債が資産を超過しているケース(すなわち承継事業そのものが債務超過となる場合)の2パターンが考えられます。

①については、旧商法時代には、債務超過だと「債務の履行の見込みがあること」という要件(旧商法374条ノ2第1項3号、374条の18第1項3号)を充たさないので、100%親子会社間の無増資組織再編などの例外的ケースでなければ認められないという見解が有力だったわけですが(*1)、会社法においては、開示書類として分割会社の「債務の履行に関する事項」を準備すれば足りることとされましたので(すなわち、債務の履行の見込みがないことを開示しても構わない)、現行法上は、分割会社が分割の結果債務超過になる会社分割も認められています。現実の必要性を考えても、不採算部門を残して優良事業部門のみを切り出したいと考えるケースは数多くありますので、実務の要請に法律が合わせたと言えます。

なお、簿価上の債務超過にとどまらず、資産の含み益や営業権を反映させてもなお債務超過状態にある場合(=実質的債務超過の場合)には、債権者保護の観点などから会社分割を認めるべきでないとする見解もありますが、そもそもそこで行われる資産の再評価や営業権の計上には確立された評価基準が存在するわけではありませんので、「実質的債務超過かどうか」をメルクマールとして組織再編の有効性を判断することは適切ではないと考えます。また、債権者保護の要請については、別途用意されている債権者保護手続で満たされていると言うべきではないでしょうか。

続いて、②のケースについては、通常は会社分割の結果として承継会社が分割会社に株式を発行するわけですから、資本充実の観点から資産>負債になっていなければならないと考えるのが自然であり、実際に旧商法時代には「債務超過状態の事業の分割」は原則として認められていませんでした。しかし、会社法では、対価を交付しない会社分割も認められることとなり、会社分割により差損が生じる場合、すなわち、①承継会社が承継する負債の簿価が資産の簿価を超える場合、または、②会社分割に際して交付する対価の承継会社における簿価が当該会社分割により承継する純資産額を超える場合にも、その会社分割を承認する株主総会で当該状況を説明することによって会社分割が認められることになりました(会社法795条2項)。多様な会社分割を必要とする会社のニーズを満たしつつ、債権者については、会社法上の債権者保護手続(その手続の対象となっている債権者の場合)と、民法上の詐害行為取消請求権(会社法上の債権者保護手続の対象になっていない債権者の場合)によって保護する(この場合、会社分割そのものは無効にはならない)という構造ができあがったわけです。

次回は、会社分割における承継事業の範囲について検討したいと思います。


(*1) 資産の含み益等を勘案して実質的に債務超過でない場合には、債務の履行の見込みがあるとして有効とする見解もありました。

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