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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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M&Aのスケジューリング(その3)~上場会社間M&Aのシミュレーション~

2.上場会社間のM&Aのケース

続いて、上場会社間の吸収分割のケースでスケジュールがどうなるか、シミュレーションしてみたいと思います。設例中の当事会社については、市場シェアがそれなりにあるため独禁法上の問題が生じるほか、税制適格分割への該当性に関しても事前に国税庁に問い合わせる必要があるものと仮定します。また、会社法上は、会社分割の効力発生日の前日までに株主総会の承認決議を取れば足りるとされているわけですが、株主が多数に上る上場会社同士のM&Aにおいてはなるべくスムーズに手続が進むように特別の配慮をする必要があります。例えば、株主総会の承認が得られるかどうかが未だ明らかでないにもかかわらず、反対株主に株式買取請求権を行使するよう求めたり、債権者の異議申述を求めたりすると、混乱が発生する可能性があります。そこで、以下では、先に株主総会の承認決議を得た上で、そこから反対株主の株式買取請求権行使期間と債権者の異議申述期間が開始するというスケジュールを組んでみました。

 
承継会社サイド
分割会社サイド
備考
2008年1月31日
 
公取委への事前相談開始(*1)
公取委の事前相談手続が第二次審査まで進む可能性を想定し、株主総会の6ヶ月前に案件を持ち込むこととしました。
2008年3月31日
 
国税庁への事前照会開始
余裕を持って株主総会の4ヶ月前に事前照会を開始することとしました。
2008年5月30日
     分割契約締結承認&株主総会招集に関する取締役会決議
     プレスリリース(適時開示)
     吸収分割契約締結
     臨時報告書提出(金商法24条の5第4項)
     分割契約締結承認&株主総会招集に関する取締役会決議
     プレスリリース(適時開示)
     吸収分割契約締結
     臨時報告書提出(金商法24条の5第4項)
     労働組合または労働者代表との協議開始(*2)
     労働者との個別協議開始(*3)
 
     労働者との協議開始日をプレスリリースと同日に設定することで混乱が回避できます。
     労働組合・労働者代表との協議は、「労働者との個別協議の開始」までに開始する必要がありますが、ここでは同日設定にしました。
     労働者との個別協議は「株主総会の2週間前までに行なわれる労働者・労働組合への通知」までに完了している必要があります。ここでは、上記通知の45日前に個別協議が開始するスケジュールになっています。
2008年5月31日
基準日公告(会社法124条3項)
基準日公告(会社法124条3項)
基準日公告は、基準日の2週間前までに行なう必要があります。
2008年6月15日
基準日
基準日
ここから株主確定手続に入りますが、その手続と株主総会招集通知の準備に1ヶ月かかると想定しました。
2008年7月15日
     株主総会招集通知(会社法299条1項)
     株主宛て通知(会社法797条3項)
     事前開示書類の備置(会社法794条1項、2項、施行規則192条)(*4)
 
     株主総会招集通知(会社法299条1項)
     株主宛て通知(会社法785条3項)
     事前開示書類の備置(会社法782条1項、2項、施行規則183条)(*4)
     労働者・労働組合への通知(*5)
 
     招集通知は総会の2週間前までに発送する必要があります。
     株式買取請求権に関する株主宛て通知は、組織再編行為の効力発生日の20日前までに行なう必要がありますが、通知の手間と費用を抑えるために株主総会招集通知と併せて行なうことが考えられます。その結果、今回は効力発生日(9月1日)の45日前の発送となりました。なお、この通知は一定の場合には公告に代えることができます(会社法797条4項、785条4項)。
     事前開示書類の備置は、組織再編の効力発生後6ヶ月間経過するまで維持する必要あり
     労働者・労働組合への通知については、法律上、株主総会の2週間前までに行なう必要があり、かつ、労働契約承継法ガイドラインは、「事前開示書類備置開始日または総会招集通知発送日のうちのいずれか早い日に通知することが望ましい」としています。
2008年7月29日
 
労働者からの異議申述期間最終日(*6)
異議申出は、労働者への通知がなされた日から最低13日間は受け付けなければなりません。
2008年7月30日
株主総会
株主総会
反対株主の意思通知は株主総会に先立って行なわれる必要があります。
2008年7月31日
債権者異議申述公告・催告(会社法799条)
 
     債権者異議申述公告・催告(会社法789条)
     公取委への事前届出の期限
     債権者異議申述期間については、1ヵ月以上設ける必要あり
     公取委への事前届出は、待機期間を考慮し、原則として効力発生日の30日前までに行なわなければなりません(独禁法15条の2第3項、15条4項)。
2008年8月12日
株式買取請求権行使可能期間開始(会社法797条5項)
株式買取請求権行使可能期間開始(会社法785条5項)
株式買取請求権行使可能期間は効力発生日の20日前から開始
2008年8月31日
     株式買取請求権行使可能期間終了
     債権者異議申述期間終了
     株式買取請求権行使可能期間終了
     債権者異議申述期間終了
株式買取請求権行使可能期間は効力発生日の前日に終了
2008年9月1日
     分割効力発生日
     事後開示書類の備置(会社法791条1項、2項、801条3項)
     分割効力発生日
     事後開示書類の備置(会社法791条1項、2項、801条3項)
 
2008年9月15日
変更登記の期限(会社法923条、商登法46条他)
変更登記の期限(会社法923条、商登法46条他)
変更登記の期限は本店については効力発生日から2週間以内、支店については3週間以内
2008年10月31日
価格に争いがない場合の株式買取請求支払期限
 
株式買取請求に対する支払いは効力発生日から60日以内に行なう必要あり
2009年3月1日
事前開示書類・事後開示書類の備置期間満了
 
会社分割無効の訴えに関する提訴期限についても、効力発生日から6ヶ月以内(会社法828条1項9号)


上記のとおり、上場会社間のM&Aでは、簡易・略式組織再編が利用できる最もシンプルなケース(<M&Aのスケジューリング(その2)~簡易型のシミュレーション~>)に比べて、公取委・国税庁への事前相談・照会の手続を除いても2ヶ月早くプレスリリースを行なって各種手続を進めていかなければならないことが分かります。


(*1) 公取委への事前相談手続としては、原則として、事前相談の申し出があった日から20日以内に第1次審査が始まり、特段の問題が見当たらなければ審査開始日から30日以内にその旨通知されます。第1次審査の結果、独禁法上の問題が考えられるという場合には、第2次審査に進みます。第2次審査に進むと、公取委は相談内容を公表し、関係者からの意見を募集しますので、それを前提に報道発表の準備などを行う必要があります。第2次審査においては、企業側が必要な資料を提出した日から原則として90日以内に、結果の通知がなされます。詳細は、<M&Aと独禁法(その7)(日本の場合-事前相談制度)>をご覧ください。
(*2) 会社は従業員の「理解と協力」を得るために、労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と協議しなければならないとされています(労働契約承継法7条、6条2項、同法施行規則4条)。
(*3) 会社は、労働組合や労働者代表との協議とは別に、株主総会の2週間前までに「従業員との個別協議」も行なわなければなりません(平成12年商法等改正法附則5条)。これは、労働計画書等の内容を事後的・一方的に従業員に告知するだけでは、自分がなぜ承継対象なのか(承継対象でないのか)、今後どのような業務を行うことになるのかといった点について従業員がきちんと理解することが難しいからです。
(*4) 事前開示書類は、
ア 株主総会開催日の2週間前の日
イ 株主への通知または公告の日
ウ 債権者への公告または催告の日
のうち、最も早く到来する日から
備置を開始しなければならないとされています。
(*5) 各従業員の雇用契約が承継されるか否か、また、承継される場合の雇用条件・就業場所などは従業員にとって非常に大事な話になりますので、会社は、分割契約書等を承認する株主総会の2週間前までに
① 「承継される営業に主として従事する労働者」全員
② 「承継される営業を従たる職務とする労働者」であるが承継対象となっている人
③ 労働組合

に対して、書面により法律で定められた事項を通知しなければなりません(労働契約承継法2条1項、2項)。
(*6) 「承継される営業に主として従事する労働者」であるにも拘らず、分割計画書・契約書に記載されなかった人は、異議申出権を行使することによって承継会社に移ることができます。また、逆に、「承継される営業を従たる職務とする労働者」であるにも拘らず、分割計画書・契約書に記載されてしまった人についても、やはり異議申出権を行使することによって、分割会社に残ることができます(労働契約承継法2条1項1号・2号、3条ないし5条)。

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