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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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日本企業による海外企業の買収手法(その3)

前回のコラムで、日本企業の株式を対価として海外企業の株主から株式を取得する場合の注意点としては、公開買付け規制現物出資規制の2点が挙げられると書きましたが、現物出資規制に関しては、取締役の財産価額填補責任の存在に気をつける必要があります。すなわち、現物出資財産の価額が、蓋を開けてみれば株式発行決議時の評価額と比較して著しく不測していたというケースでは、その決議に参加した取締役は、注意を怠らなかったことを立証できない限り(*1)、不足額に関して連帯して会社に払い込む義務を負います(会社法213条1項・2項・4項、同法施行規則44条以下)。

すなわち、現物出資対象となる海外企業の株式に関して株式発行決議の後に株価が下落した場合、取締役はその価値下落分に関して責任を負わされる可能性が出てきます。これは現物出資財産が日本企業の株式であるか海外企業の株式であるかを問いませんが、海外企業の場合は日本企業の場合と比べて将来の株価変動につながるような資料・情報が入手しにくい場合があると思われ、しかし、だからといって対象会社に関して十分な調査を行なわずに現在と過去の株価だけを見て現物出資財産の価額を決めてしまうと、調査不測、すなわち過失ありと認定される可能性がありますので、より慎重な価額決定プロセスが要求されると言えるでしょう。なお、対象会社が非上場であれば、もともとその株価は目に見えにくいものですので、取締役の財産価額填補責任が問題となる可能性は減るものと思われますが、この場合は「市場価格のない有価証券」になりますので、検査役の調査、あるいはそれを回避するための弁護士・公認会計士・税理士等の証明(会社法207条9号)が必要になってきます。

また、別の問題として株式の有利発行規制にも注意する必要があります。なぜなら、株式の大量取得を目指している場合、既存株主からは、支配権移動に伴うプレミアム付き価格で株式を買い取ることが通例だからです。これを株式を対価とする株式買取りに当てはめれば、例えば、現物出資財産の価額が1億円しかないのに、既存株主には1億3000万円分の新株を発行するといった形になりますので、発行する株式1株当たりの払込金額が減ることにつながります。よって、有利発行の度合いが大きい場合は株主総会の承認決議(会社法201条1項、199条3項)を経ることも検討しなければならない場合が出てくると考えられます。ただ、そもそも、「現物出資財産の価額」自体が、支配権移動の価値も含んでいるものであるはずだから、単純な株価相当額の1億円ではなく、プレミアムも含んだ1億3000万円であると考える余地も有りますので、この点は、解釈論の更なる充実を待ちたいところです。

最後に、海外企業を100%子会社にするためには、株式買取り後にShort-Form Mergerなどを利用して残存株主をスクイーズ・アウトすることになりますが、Short-Form Mergerといった手法が採れるか否かということと、スクイーズ・アウトの許容性(少数株主保護の問題)についてはまさにその海外企業側の法律・判例の問題ですので、現地のM&A専門弁護士との十分な事前協議が大事になってきます。


(*1) この取締役の財産価額填補責任は旧法下では無過失責任でしたが、会社法になって過失責任となりました。

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