プロフィール

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本企業による海外企業の買収手法(その1)

<三角組織再編の手続と留意点(その3)>において、「新しい会社法では、消滅会社の株主等に対して親会社株式を交付するのに必要な限度での親会社株式の取得を認めていますので(会社法135条2項5号、同施行規則23条8号)、日本企業が海外で三角合併を行うために、海外に子会社を設立し、その子会社に日本の親会社の株式を取得させることができるようになりました。」と書きましたが、日本の会社が海外の会社を買収したり海外の会社と合併したりする場合の方法や問題点について更に紹介して欲しいというリクエストがありましたので、ここでまとめておきたいと思います。

そもそも日本企業が海外企業を買収する場合、日本板硝子によるピルキントン(英)の買収(2006年2月)や、JTによるガラハー(英)買収(2006年12月)に見られるように、現金を対価とするケースが多いようです。その理由としては、税務上の問題(原則的な考え方としては、対価として「現金」を受け取ると、資産・負債を移転した対象会社においてその譲渡損益に関する法人税処理が必要となり、対象会社の株主に関しては株式譲渡益課税やみなし配当課税が行われる)に加えて、対象会社国の証券規制の問題が考えられます。後者に関して言えば、例えば、日本企業が米国企業を吸収合併するケースで、米国在住株主に存続会社(日本企業)の株式を交付する場合、1933年証券法に従ってSECに対してForm F-4と呼ばれる登録届出書を提出しなければなりませんが、この作業が相当手間と費用の掛かるものとなっています。

それに加えて、海外企業の株主に日本企業の株式を交付するということは、日本企業が当該外国の証券取引所に上場していない場合には、当該外国では流動性が不十分な株式を交付するということになりますので、それが障害となり対象会社株主の同意が得られないことも十分考えられます。この問題は、日本企業が買収の対象となる三角組織再編に関して、日本側の抱く懸念として既に十分議論されている点ですので、同じ問題が相手国側でも当然に起こりうるということです。このような問題があるために、株式を対価とする海外企業の買収・合併が少ないのが現状です。

では、法律上、株式を対価とする海外企業の買収・合併ができないのかと言えば、そうではありません。最初に述べたように、会社法によって、消滅会社の株主等に対して親会社株式を交付するのに必要な限度での親会社株式の取得が認められるようになりました。従来、海外子会社に日本の親会社株式を取得させて、それ(あるいはそれを原株とするADR(*1))を対価として海外企業を買収する手法(*2)には、

①子会社による親会社株式取得規制
②自己株式取得規制
③現物出資規制


の3つが障害になると指摘されていましたが、少なくとも①については立法的に解決されたわけです(*3)。そこで、以下では、具体的に日本企業が海外企業を買収する手法のうち、株式を対価とする方法について、順に見ていきたいと思います。

1.プロセス

日本企業による海外企業買収のプロセスは、海外企業が日本企業を三角組織再編によって買収する手法とほぼ同じです。すなわち、原則として、以下のプロセスを踏むことになります。ただ、100%子会社とするか否かに関しては、上記で述べた京セラ方式の問題点②との関係で、京セラがそうしたように意図的に95%といった数字に抑えておく手法が考えられます(100%であれば、「100%子会社に親会社株式を取得させることは経済的に見れば自己株式の取得に他ならない」という指摘がなされる可能性がより高いため)。

① 海外に100%子会社を設立する。
② 海外子会社に日本の親会社株式を取得させる。
③ 海外子会社と海外の対象会社を合併させる(株式交換でも良い)。
④ 海外の対象会社株主に日本の親会社株式を交付する。


なお、日本の会社法は日本企業が海外企業と直接合併や株式交換を行うことを依然認めていませんので、上記①の「海外子会社の設立」は必須のプロセスとなります(既に存在する子会社を利用しても構いません)。

次回のコラムでは、親会社株式の取得に関わる論点や、準拠法の問題等について具体的に見ていきたいと思います。


(*1) 米国預託証券(American Depositary Receipt)
(*2) いわゆる京セラ方式。
(*3) ただし、海外子会社が日本の親会社の株式を取得した上で、それを対価として海外企業の株主から「株式買取り」を行なうことは新会社法でも認められていませんので、その点は注意が必要です。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://taiigaki.blog62.fc2.com/tb.php/141-c2971534

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。