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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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ヤフーとマイクロソフトの攻防(Tin Parachutes)(その2)

さて、Golden ParachutesとTin Parachutesの違いの2点目は、導入方法です。日本の場合、Golden Parachutesは役員の退職慰労金に関するものですので株主総会の決議が必要であるのに対し、Tin Parachutesは従業員の退職金に関するものですので労働法所定の手続に加えて取締役会決議で導入できます。よって、Tin Parachutesの方が機動的に導入できるといえるでしょう。なお、米国では、Golden Parachutesについても株主総会の承認は不要ですが、機関投資家が株主総会での承認を得ているGolden Parachutesについては異議を唱えない傾向があることから(金額にもよります)、会社が進んで株主総会にかけることがあります。

Golden ParachutesとTin Parachutesの違いの3点目は、効果です。「Tin Parachutesの方が、一旦導入された後に買収者が交渉によって撤去するのが難しい」とか「裁判所から見た場合、Golden Parachutesは無効と判断しやすいが、Tin Parachutesでは利益相反状況がないからこれを無効というのは難しい」といわれることがありますが、対象人数の多さや相手が従業員であるということを考えれば、買収者側から見てより嫌なのはTin Parachutesの方であろうと思います。また、Tin Parachutesには、買収におけるコスト戦略としてターゲット会社の従業員の整理解雇(lay off)に重点を置いている買収者を排除するという効果もあります。

ところで、ヤフー社のTin Parachutesの内容は、同社がSECに提出したフォーム8-Kによれば、

企業支配権の移動から2年以内に、被用者が「理由」(“cause”)なく当社により解雇された場合、または、被用者が「正当な理由」(“good reason”)をもって退職を願い出た場合、
(1)退職金として、退職日以降指定期間(社員の職位に応じ、4ヶ月から24ヶ月)中、社員の年俸ベースの給与支給を継続する。
(2)退職日以降24ヶ月間の再就職費用の償還(職位に応じ、3,000ドル~15,000ドルを上限とする)
(3)退職金支給期間中の医療団体健康保険及び歯科保険の継続
(4)退職時に未行使のストックオプション、制限付株式その他エクイティベースの権利の繰上げ行使を認める


というものでした。果たして、この内容は一般的なものなのでしょうか?実務家としては、「先例として使えるかどうか」が気になります。

Tin Parachutesは原則として開示されないために調査が難しいのですが、オラクルがピープルソフトを買収しようとした2003年に、ピープルソフトは、総額2億ドルに及ぶTin Parachutesを導入しました(*1)。また、古い例なども調べていくと、「敵対的買収の場合には雇用期間1年当たり1ヶ月分の給料相当額の退職金(下限3ヶ月、上限24ヶ月)を支給する」とか「敵対的買収の場合にはボーナスも含めた年俸の50%から250%を支給する」といった例があるようです。Golden Parachutesの場合、アメリカでは、税法によって、過去5年間の平均報酬の3倍以上の退職金を役員に支払うとそれをもってGolden Parachutesに該当するとされています(Golden Parachutesに該当すると、平均報酬を超える部分に関して20%の超過税が課されます(*2))。よって、「Golden Parachutesは年俸の299%まで」といったイメージが存在するのですが(これはあくまで税務的な観点からのアドバイスにおいて299%に留めておいた方がよいと言われるものに過ぎず、実際のGolden Parachutesプランでは300%以上支給することを定めているものもあります)、その点からしても、Tin Parachutesは2年分程度が穏当な範囲かという印象を持ちます。その他、様々な資料を読んでみたのですが、
1.対象者は、Change in Controlから2年以内に解雇された従業員
2.雇用期間1年につき2週間から1か月分の給料相当額を退職金として支給する
3.支給額上限は2年分の給与相当額前後
4.支給期間に相当する期間中、保険や福利厚生関連のサービスは継続する
5.各種権利の待機期間については撤廃され、即権利行使が可能になる

といった内容が多いように感じました。そうすると、ヤフーのTin Parachutesプランは特段目新しいものではなさそうです(*3)。

なお、これらのParachutesプランについては批判も少なくありません。ここに潜む利益相反の問題や株主の利益との関係については、また別の機会に述べたいと思います。

(*1) 12 Harv.Negotiation L.Rev.1
(*2) IRC Section 280G and 4999
(*3) そもそもTin Parachutes自体は目新しいものではありません。アメリカでは1980年台に登場し、いくつかの州ではTin Parachutes法まで成立しました。例えば、マサチューセッツやロードアイランド州では、Change in Controlから2年以内に解雇された従業員に対して、それぞれ「雇用期間1年につき2週間分」の給料相当額を退職金として支給するという法律ができました。なお、いくつかの州のTin Parachutes法は、裁判所によって、<「アメリカの連邦法であるERISA(Employee Retirement Income Security Act)という労働者保護法が優先する結果、適用されない」という判断>を受けています。

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