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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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公開買付制度の概要(その5)~買収防衛策とのバランス調整~

公開買付開始公告がなされると、当該公開買付けの撤回を行なうことは原則として認められません(金商法27条の11第1項本文)。撤回を認めると、株式市場が混乱しますし、株価操作につながることもあるからです。しかし、対象会社側に破産、M&A、上場廃止といった予期せぬ事態が発生したり、あるいは、最近流行の買収防衛策が発動されたりすると、公開買付けの維持を強制することは公開買付者側に不測の損害を与えることになります。そこで、以下の条件を共に充たした場合には、公開買付けの撤回が認められています(金商法27条の11第1項但書)。

(1) 発行会社またはその子会社の業務または財産に関する重要な変更その他公開買付けの目的の達成に重大な支障となる事由が発生したこと
(2) 公開買付開始公告および公開買付届出書に撤回することがある旨が記載されていること


平成18年改正以前における上記(1)の撤回事由は、対象会社において、株式交換、株式移転、会社分割、合併、解散、破産・再生・更生手続開始、資本金額の減少、事業譲渡・譲受け、上場廃止などが発生した場合(施行令14条1項1号)などでしたが、改正によって、これに、

① 株式分割
② 株式または新株予約権の無償割当て
③ 株式・新株予約権・新株予約権付社債の発行
④ 自己株式の処分
⑤ 既に発行されている株式に拒否権条項または取締役・監査役選解任権を付すること
⑥ 重要な財産の処分または譲渡
⑦ 多額の借財


が撤回事由として追加されました。なお、これはいずれも、公開買付開始公告後に「公表」された場合に初めて撤回事由として機能します(*1)。また、買収防衛策が消却されないことを理由に買付者が公開買付けを撤回すると決めた場合には、公開買付撤回届出書の「撤回等の理由」欄に、防衛策消却のために買付者側が講じた方策について具体的に記載することが求められています(その方策を採らなかったからといって公開買付けの撤回そのものができなくなるわけではありません)。

さて、上記事由が生じたとしても、公開買付者や対象会社に対する影響が軽微なものは除かれています(軽微基準)。例えば、①②③④については、議決権割合の低下が10%未満であれば撤回事由とはならず、⑦については総資産の帳簿価額の10%未満の借財であればやはり撤回事由にはなりません(⑥については基準なし)。

続いて、これまでに述べた公開買付撤回とは別に、「買付価格引下げ」という手段も、平成18年改正によって買付者に与えられました。具体的に買付価格引下げが認められるのは、

① 対象会社が株式分割を行なった場合
② 対象会社が株式または新株予約権の無償割当てを行なった場合


であり(施行令13条1項)、この場合、「決定」だけでは足りず、現に上記の行為が行なわれることが必要です。なお、「買付価格引下げ」には軽微基準が存在しないため、「撤回はできないが、買付価格引下げはできる」というケースが出てくることになります。買付価格の引下げを決めた場合、買付者は公告によって買付条件の変更およびその理由を株主に知らせる必要があります(金商法27条の6第2項)。


(*1) いつの時点のどのような行為がこの「公表」に該当するかについては何ら基準が公開されていませんが、意見表明報告書の中で対象会社における買収防衛策の方針が記載されることからすれば、この記載等を通じて「公表」が行なわれたかどうかを判断することになると思われます。

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