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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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公開買付制度の概要(その4)~意見表明報告書②~

意見表明報告書の記載事項のうち、まだ触れていない以下の点を見ていきたいと思います。

⑥ 会社の支配に関する基本方針に係る対応方針
⑦ 公開買付者に対する質問
⑧ 公開買付期間の延長請求


まず、「会社の支配に関する基本方針に係る対応方針」ですが、そもそも、会社法上、この基本方針を会社が定めている場合には、事業報告においてその内容を開示しなければならないこととなっています(会社法施行規則127条)。具体的には、「基本方針の内容」に加えて、

ア 会社財産の有効活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針実現に資する特別な取組み
イ 基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業方針の決定が支配されることを防止するための取組み(いわゆる買収防衛策


を開示するとともに、上記の取組みが、基本方針に沿うものであるか、株主の共同の利益を損なわないか、役員の地位の維持を目的するものではないかについて、取締役の判断およびその理由を記載することが求められています。

その結果、事業報告(有価証券報告書でも開示されます)を見ればその会社の基本方針と買収防衛策の中身は分かるわけですが、具体的に公開買付けが行なわれた場合に、実際に当該防衛策が発動されるか否かまでは分からないため、対象会社が提出する意見表明報告書において、現に進行中の公開買付けに関して買収防衛策発動の予定があるかどうか、発動する場合はどのような内容となるのかについて具体的な記載が求められることとなったわけです。

続いて、既に<ブルドックソースとスティール・パートナーズ間のやり取り>などでお馴染みとなっている「公開買付者に対する質問」ですが、株主への情報提供の充実という観点から、対象会社は意見表明報告書の中で公開買付者に対して質問を行なえることとなり、その質問の送付を受けた公開買付者は、受領日から5営業日以内に「対質問回答報告書」を提出することが義務づけられています。この質問と回答のプロセスは、1回きりと定められているわけではありませんので、対象会社は、公開買付者の説明が不十分であれば追加の質問を行なうことが可能ですが、近時は、この質問を繰り返すことによって買収提案の検討期間を徒に長期化させることの弊害が指摘されつつあるところです。経済産業省・法務省は、2008年6月30日付けで、新たに買収防衛策のあり方に関する報告書をまとめ<「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」>(以下、「新指針」と言います)として公表しましたが(*1)、ここにもこの点の問題意識が現れています。なお、新指針は、「対象会社側の情報開示の在り方」として、

対象会社側は、例えば、①現経営陣の経営ビジョン・経営方針や、代替案、②買収価格に対する現経営陣の評価、③現経営陣が買収により株主共同の利益が毀損されるという判断をする場合にはその旨を、財務的数値を示すなど具体的に開示することが望ましい。

とする一方で、「買収者側の情報開示の在り方」については、

買収者はデューディリジェンスを行っていないことと、買収者が買収後の利益等の具体的な数値まですべてを開示することは自らの手の内をさらすことになり買収戦略上も困難が生じることからすれば、買収者による情報開示にはおのずから限界がある。すなわち、買収後の詳細な経営計画・見通しや業績予想の開示については限界があると考えられる。

として、現実的視点から、買収者に対する情報開示要求に歯止めをかけています(*2)。支配権の交替の場面では、買収者と対象会社経営陣がフェアな立場に立って交渉して初めて株主の適切な投資判断を可能にすると言えますので、上記スタンスには個人的にも賛成です。

続いて、公開買付期間が30営業日を下回る場合には意見表明報告書の中で買付期間の延長請求が可能となりましたが(27条の10第2項2号)、この延長請求がなされると、買付期間は30営業日に延長されます(27条の10第3項)。延長請求を行なった対象会社としては、これを株主に周知させる必要があるため、公開買付開始公告が行なわれた日から10営業日以内に、期間延長請求公告を行なわなければなりません(*3)。


(*1) 新指針の「案」は、2008年6月30日付けで正式な指針として公表されました。
新指針: http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g80630a01j.pdf
指針案との変更履歴比較データ: http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g80630a02j.pdf
(*2) 新指針は、更に、「例えば、①買収価格の算定根拠として、算定の前提となる事実や仮定、算定方法、算定に用いた数値情報並びにシナジーの額及びその算定根拠について、買収者に網羅的に開示を要求し、あるいは、②買収後の経営方針として、事業計画、財務計画、資本政策、配当政策、資産活用方策等の内容について、買収者に網羅的に開示を要求した上で、提供されない情報があることをもって買収防衛策を発動することは、被買収者側の開示状況と対比するに、不適切である。」として、望ましくない行為を具体的に提示しています。
(*3) 公開買付期間は、平成18年改正前は、買付公告の翌日から起算して20日以上60日以内とされていましたが、改正後は初日算入方式に変わり、かつ、実日数ベースから営業日ベースに変更された結果、「買付公告の当日から起算して20営業日以上60営業日以内」になっていますので注意が必要です。

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