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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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公開買付制度の概要(その3)~意見表明報告書①~

前々回のコラムで、今回の法改正では以下の諸点について見直しがなされたと書き、1の「脱法的取引への対応」については既に述べましたので、今日は2について説明したいと思います。

1. 脱法的取引への対応
2. 株主への情報提供の充実
3. 買収防衛策とのバランス調整
4. 全部買付義務の導入
5. 買付者が競合する場合の処理


第三者から公開買付けがなされた場合、会社支配権に対する争奪戦が始まったと言えます(敵対的買収の場合)。とすれば、株主から見ると、買付者がどのような経営プランを持っているのか、また、現経営陣が当該買付けを評価しているのか、何か問題があるものとして敵対視しているのかなど、気になることはたくさんあると思います。この点、旧法下では、対象会社による意見表明は任意だったために(*1)、株主が的確な投資判断を行うために必要な情報が提供されないケースもあったものと思われます。

そこで、平成18年改正によって、対象会社は、公開買付開始公告がなされた日から10営業日以内に意見表明報告書を提出しなければならないこととされました。そのほか、同改正によって、意見表明報告書を利用して買付者に対する質問を行なうことができるようになり(27条の10第2項)、また、公開買付期間が30営業日を下回る場合には意見表明報告書の中で買付期間の延長請求が可能となりました(27条の10第2項2号)。

まず、意見表明報告書の提出義務ですが、これは文字通り「報告書の提出義務」であり、改正後の現在においても意見の表明義務自体はありません。ただし、改正前と異なり、沈黙することは認められておらず、意見を表明できない場合は、意見表明報告書を提出した上で、その中で、理由付きで「意見を留保すること」を明記しなければなりません。また、改正前は存在した「役員の意見表明報告書提出義務」は改正後は存在しません。よって、役員が会社と異なる意見を表明した場合でも、当該役員が意見表明報告書を個別に提出する義務を負うことはありません。

意見表明報告書の記載事項は内閣府令25条2項で定められていますが、具体的には以下のとおりとなっており、このうち⑥⑦⑧は平成18年改正で新設された項目です。

① 公開買付者の名称・所在地
② 当該公開買付けに関する意見の内容および根拠
③ 当該意見を決定した取締役会の決議の内容
④ 役員が所有する当該公開買付けに係る株券等の数および当該株券等に係る議決権の数
⑤ 役員に対し公開買付者またはその特別関係者が利益の供与を約した場合、その利益の内容
会社の支配に関する基本方針に係る対応方針
公開買付者に対する質問
公開買付期間の延長請求


意見表明の仕方としては、「公開買付けに応募することを勧める」「公開買付けに応募しないことを勧める」「公開買付けに対し中立の立場をとる」「意見の表明を留保する」など、分かりやすく記載する必要があります(*2)。そして、意見の根拠については、意思決定に至った過程を具体的に記載しなければなりず、中立の立場を採る場合と意見を留保する場合もそれぞれ理由を書かなければなりません(留保の場合は、それに加えて、将来意見表明を行なうか否かの予定も記載)。

また、上記④⑤のとおり、対象会社役員に利益相反問題があるときは、その点を明らかにするとともに、利益相反回避措置についても具体的に記載することが求められています(*3)。ただし、これは、対象会社が相反回避措置を採っているときにそれを開示せよという要求に留まり、相反回避措置を採ることそのものは求められていません。また、役員の株券等所有状況は有価証券報告書でも開示されている情報ですので、意見表明報告書に特有の開示事項というわけではありません(*4)。

次回のコラムでは、「会社の支配に関する基本方針に係る対応方針」などについて説明したいと思います。


(*1) 旧法下でも、対象会社(の役員)が意見を対外的に公表した場合には、ただちに意見表明報告書を提出することが義務づけられていましたが(この開示義務は、証券取引所の適時開示規則でも定められていました)、完全な沈黙を守ることも可能でした(ただし、実務上は、ほぼ必ず対象会社による意見表明が行なわれていました)。
(*2) 4号様式の「記載上の注意」参照
(*3) 同じく、4号様式の「記載上の注意」参照
(*4) ここでいう「役員」とは、取締役、執行役、会計参与(法人の場合は職務を行なう社員)、監査役を指します。

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