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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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三角組織再編の手続と留意点(その2)

三角組織再編を行なうためには、対価として交付する親会社株式を存続会社(株式交換では完全親会社となる会社、会社分割では分割会社)が事前に取得している必要があります(*1)。

この点、日本の会社法は、原則として、子会社が親会社の株式を取得することを認めておらず、親会社株式を取得した場合には相当の時期に処分しなければならないと定めているのですが(会社法135条)、これでは三角組織再編ができなくなってしまいますので、三角組織再編に必要な範囲に限って親会社株式を取得し保有することを認めています(会社法800条1項、2項)

さて、問題は、子会社が事前にどのような方法で親会社株式を取得するかですが(既にたまたま親会社株式を保有していた場合を除く)、この点については、

① 市場において親会社株式を取得する
② 市場外で、第三者から親会社株式を取得する
③ 親会社から新株の発行を受ける
④ 親会社が自己株式や新株を子会社に対して現物出資する


といった方法が考えられます。順に検討しますと、

①については、市場内で大量の買い注文を行なえば株価が高騰して親会社の株を取得するための資金が膨れ上がってしまいますし、そもそも必要数買い切れる保証はありませんので、実務上は採りにくいであろうと思います。

②については、相対取引になりますので、やはり必要数を買い揃えられるかという問題があるほか、買付数によっては親会社株式に対する公開買付け義務が発生するという問題もあり、ケースによってはあまり現実的ではありません。

③については、子会社が親会社の新株に対して払い込む資金をどうやって獲得するかが次の問題となります。通常は、親会社からの借入れや親会社に対する新株発行による資本金の注入が考えられますが、この点については、元々親会社の資金だったお金で親会社の増資の原資に充てることが資本空洞化につながり、仮装払い込み(見せ金)と評価されるリスクがあります(*2)(見せ金となれば、公正証書原本不実記載・行使罪(刑法157条)が成立するおそれあり)。しかし、親会社からの貸付金や出資金によって親会社株式を取得することができないとなると、三角組織再編のために子会社による親会社株式の取得を認めたこととの整合性にクエスチョン・マークがつきます。個人的には、親会社サイドで現実のキャッシュ増加がなくとも、三角組織再編のための親会社株式取得のためであれば認めてよいのではないかと考えています。

④については、若干細かくかつ理論的な話になってしまうのですが、そもそも現物出資においては、「出資財産の給付」が先で、それがあって初めて「その日に引受人から株主になれる」という法律上の順序があるところ(会社法209条)、上記例では、まず、親会社が自社株を財産として保有しており、それを子会社に給付することで株主となって子会社から親会社に子会社の株式が発行されるという順番にならなければなりません。しかし、親会社と子会社が相互に新株発行または自己株式の交付を行い払込義務を合意相殺するような形では、そもそも「親会社が自社株を財産として保有している瞬間」が存在しないため、理論的にお互い新株発行ができないのではないかという疑問が生まれます(*3)。この点は、親会社が既に保有している自己株式を子会社に給付するケースであればクリアできるようにも見えますが、自己株式の処分の効果が、子会社から親会社に対する新株発行に順序的に先立っていると言えるのかどうかも日本の会社法上実は明確ではありません。よって、この点は、立法的に解決されるべき部分ではないかと考えます。

その他、実務では、親会社株式の取得方法としていろいろな手法が提案・指摘されているところではありますが、今のところ、親会社からの借入金または出資金で親会社株式を取得する方法か、親会社が保有している自己株式を現物出資として受け取る方法が現実的ではないかと考えています。なお、この際には、もちろん親会社の準拠法を確認することも重要になってきます。


(*1) アメリカでは、親会社から消滅会社等の株主に親会社株式を直接交付できるのですが、日本ではそれは認められていません。よって、最初に、将来の三角組織再編に備えて親会社株式を取得しておくというプロセスが必要になってきます。
(*2) 子会社側に返済能力と返済予定がある場合には親会社の子会社に対する貸付債権は実質的なものであり、仮装払い込みには該当しないとする学説もあります。また、当該三角組織再編における親会社が外国企業であれば、その外国の法規制をチェックしなければなりません。
(*3) 払込義務の合意相殺については、そもそも登記通達上許されていないとして、相互に現物出資として新株を発行する方法を否定する見解も存在します。

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