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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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三角組織再編の手続と留意点(その1)

早いもので、2007年5月1日付けで三角組織再編が解禁されてから1年以上が経過しました。また、株式会社日興コーディアルグループは、2008年1月29日を効力発生日として、米国の金融大手であるシティグループ・インクの普通株式を対価とし、日興コーディアルを、米シティの100%子会社である日本法人シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社の完全子会社とする株式交換を実施しましたが、これは日本初の三角株式交換でした。

本ブログでは、三角組織再編については、これまでに<合併の税務(その6)~三角合併の場合~><合併の税務(その7)~逆三角合併の場合~>において三角合併の税務を紹介しましたが、今回から数回のシリーズで、三角組織再編に関する他の論点についても整理しておきたいと思います。

三角組織再編とは、組織再編行為の結果消滅する会社(株式交換では完全子会社となる会社、会社分割では承継会社)の株主に、「存続会社の株式」ではなく「存続会社の親会社の株式」を交付する組織再編スキームです。以下では、存続会社をA社、対象会社(消滅会社)をT社、A社の完全親会社をP社として説明していきたいと思います。例えば、単純にA社とT社が合併すれば、T社の株主にはA社株式が与えられますので、P社は(T社と合併した後の)A社を100%支配することは出来ません。その後、A社を完全子会社としたければ、A社の少数株主にP社の株式を交付する株式交換を実施しなければならないでしょう。ところが、三角合併を用いれば、最初から、T社の株主にP社の株式を交付出来ますので、三角合併終了時点で、(T社と合併した後の)A社はP社の完全子会社となっています。すなわち、100%の資本関係を維持しながら、一回の取引コストで子会社を他の会社と合併させられる点に、三角合併の特徴があると言えます(株式交換、会社分割においても、三角方式を利用しなければA社には少数株主が発生してしまいます)。

そもそも100%子会社にするメリットは、少数株主を排除して親会社による自由な経営を行えるとか、意思決定のスピードを上げられる点にあると言われます。また、少数株主への配当を行なわずに済むのであれば、グループ内の経営資源が外部に流出する事態を避けられますし、親会社への配当をあまり行なわず内部留保を増やした上で成長投資に当てるとか、逆に親会社への配当を増やした上で成長余地の大きい他の系列子会社に貸し付けてグループ全体の利益を増やす資金再分配などが容易になります。そこで、これらのメリットを享受したいのであれば、少数株主の締め出し(スクイーズ・アウト)を行なう必要がありますが、そのためには三角組織再編が便利ということになります。とりわけ外国会社にとっては、税制適格要件を充たした三角組織再編を行なうというのが、実際上採り得る数少ないスクイーズ・アウト手法の一つになってきます。

ただ、他方で、親会社の株式を交付することによるリスクも考慮する必要があります。設例で、P社の株式をT社の株主に交付すれば、P社株式において「株式価値の希薄化」が発生します。T社の元株主が三角合併によって交付を受けたP社株式を一斉に市場で売りに出せば、P社の株価は下がってしまいます。また、T社を子会社として取り込んでしまうことで、P社の連結決算に影響を与えますので、業績の悪い会社を吸収する際には注意が必要です。三角合併は子会社の合併ですので、親会社レベルでの株主総会承認は不要であるケースがほとんどだと思いますが、その場合であっても、親会社の取締役は常にその株主から責任を追及される立場にありますので、自社のバランスシートを傷めたり、株価の下落を引き起こすような三角合併については、そう簡単には踏み込めないと言えるでしょう。

さて、実際に三角組織再編を行なう手順ですが、T社が上場会社の場合、合併や株式交換を行うために必要な株主総会の特別決議(議決権ベースで過半数が出席し、その3分の2以上の賛成が必要)を得やすくするために、第一段階としてキャッシュを対価とする公開買付けを行い、第二段階として三角合併や三角株式交換を行なうのが通常ではないかと思います。第二段階の選択肢としては、キャッシュを対価として全部取得条項付種類株式を強制取得する方法もありえますが、この場合に発生する可能性がある取締役の責任(会社法464条1項)などを考慮して、三角組織再編を利用する方法が好まれているようです。

では、第二段階のスクイーズ・アウトの手法を更に細かく見た場合には、三角合併と三角株式交換のいずれが良いのでしょうか?・・・すぐに思いつくのは、三角株式交換であれば対象会社は法人としては残り続けるので(設例であれば、T社はA社の完全子会社になるものの法人としては存続する)、対象会社が有する業務上必要な許認可の再取得や、資産の移転手続などが不要であるのに対し、三角合併であれば対象会社は消滅しますので、許認可の取り直しや資産移転手続(必要に応じて登録・登記なども)が発生してしまうという違いです。また、これ以外に、三角組織再編が税制適格要件を充たさない場合、それが株式交換であれば株主に対するみなし配当課税(*1)は発生しないが、合併であればみなし配当課税が発生するため、株式交換の方が望ましいという意見もあります(*2)。

次回のコラムでは、引き続き三角組織再編に関する手続や論点について紹介していきます。


(*1) 合併における解散法人に留保利益があった場合、課税なくして合併が認められると、株主に対する配当課税のチャンスが失われてしまうため、消滅会社の利益を原資とする部分(利益積立金)が存続会社の資本金および資本積立金に組み入れられる場合、法人税法では、その資本組入部分について、「一旦株主に配当として分配し、その分配部分を再び株主から出資を受けた」ものとみなします。この株主への配当とみなされる部分(別の言い方をすれば、「株主が交付を受けた財産の時価合計額から消滅会社の資本金および資本積立金の額を控除した残額」)について行われる課税が、「みなし配当課税」です。みなし配当が発生する場合、合併法人は一株当たりのみなし配当額を株主に通知する義務があります。
(*2) 石綿学「三角組織再編をめぐる実務上の諸問題」(商事法務1832号44頁)

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