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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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新しくなった「関連当事者の開示」規制について(その1)

M&Aや組織再編の結果、従前は存在しなかった親子会社関係が新たに発生することはよくありますが、この場合、親会社の株主と子会社の株主は、各会社の個別財務諸表とグループ全体の連結財務諸表に加えて、「親子会社、グループ会社間の取引に関する情報」を入手したいと思うことでしょう。なぜなら、親子会社、グループ会社間の取引は、独立当事者間の取引とは条件や収益性が異なる可能性が高く、会社の経営成績や財務諸表に思わぬ影響を与えるおそれがあるからです。この点、アメリカでは、FASB(財務会計基準審議会)が、会社と関連当事者(親会社・子会社・主要株主・役員など)との間の取引内容について開示することを求めており、また、国際会計基準でも、同様に「関連当事者の開示」が求められています。

日本においては、1998年以降、有価証券報告書の「企業集団等の状況」の中で親子会社間の取引を開示することが求められてきましたが、企業会計基準委員会は、会計基準の国際的なコンバージェンスの動きに伴って企画された国際会計基準審議会(IASB)との共同プロジェクトの中で、この「関連当事者の開示」制度をリニューアルし、2006年10月17日に「関連当事者の開示に関する会計基準」および「同適用指針」を公表しました。この新しい「関連当事者の開示」制度は、2008年4月1日以降開始する連結会計年度および事業年度から強制適用されますので、この機会に簡単に規制内容を見ておきたいと思います。

そもそも、親会社が継続開示企業でない場合、子会社の株主は親会社の存在を確知することができるのでしょうか?・・・この点、国際会計基準においては、会社は、親会社の存在、究極的支配者の名称を開示しなければならないとされています。子会社の株主にとっては、親会社の存在と名前さえ開示してもらえれば調査への手掛かりが与えられるからです。

日本においても、数年前に発生した「上場していない親会社」の不祥事をきっかけに親会社情報の開示要請が強まり、現在では、有価証券報告書において、財務諸表の注記事項として、親会社の存在と名称を記載することが求められています。更に、親会社自身は、親会社の株式の所有状況、役員の状況、計算書類、事業報告・附属明細書、監査報告書などを提出しなければなりません(金商法24条の7第1項、企業内容等の開示に関する内閣府令19条の5)。これによって、子会社株主にとっては親会社情報を入手しやすくなったわけですが、日本では、連結財務諸表の作成・開示が原則であるアメリカと異なり、「大会社であっても金商法上の有価証券報告書提出義務がない会社」は個別財務諸表を作成・開示すれば足り、連結財務諸表の作成・開示義務は存在しませんので(会社法444条1項、3項)、かかるケースでは、株主が連結計算書類を入手する手段はないということになります。この点の是非は現在議論がなされているところであり、今後、親会社自身が有報提出会社であるか否かに拘らず、株主保護のために連結計算書類の作成:開示が義務づけられる方向で制度が変わっていくこともありうると考えています。

さて、関連当事者開示制度(以下、「本会計基準」と言います)に話を戻しますが、本会計基準は、財務諸表において開示を必要とする「関連当事者との取引」について、

① 「関連当事者」の範囲
② 「取引」の範囲(重要性の判断基準を含む)
③ 開示項目


を定めていますので、以下、順に見ていきます。

1.「関連当事者」の範囲

まず、「関連当事者」とは、「ある当事者が他の当事者を支配しているか、又は、他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等」と定義されており(第5項)、具体的には以下のものが含まれます。

① 親会社
② 子会社
③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
④ 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(以下、「その他の関係会社」という)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会社
⑤ 関連会社及び当該関連会社の子会社
⑥ 財務諸表作成会社の主要株主(*1)及びその近親者(*2)
⑦ 財務諸表作成会社の役員(*3)及びその近親者
⑧ 親会社の役員及びその近親者
⑨ 子会社の役員のうち重要な役員及びその近親者
⑩ ⑥から⑨に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
⑪ 従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る)


このうち⑧⑨⑩⑪などは今回の新基準によって新たに設定されたもので、純粋持株会社の増加などを踏まえて、関係当事者の範囲が拡大されたことが分かります。続きは次回のコラムで見ていきたいと思います。


(*1) 「主要株主」とは、保管態様を勘案した上で、自己又は他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主を言います。
(*2) 「近親者」とは、二親等以内の親族を言います。
(*3) 「役員」とは、取締役、会計参与、監査役、執行役又はこれらに準ずる者を言います。なお、「これらに準ずる者」としては、相談役、顧問、監査役設置会社の執行役員等であって、経営に対して強い影響力を持っている者が含まれます。

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