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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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米国におけるM&A契約条項の分析(その5)

11.開示されなかった債務に関する責任

買主側は対象会社の負担する債務についてDue Diligenceによって把握してから買収契約を締結しますが、Due Diligenceの過程では判明しなかった債務の存在が後日明らかになるケースがあります。この場合、その債務に関して誰が経済的に責任を負うべきでしょうか?

この問題を解決するために、No Undisclosed Liabilities Representationという表明保証条項を設けることがあります。書き方としては、

Except as set forth in the Disclosure Schedule, the Company has no liabilities or obligations of any nature except for liabilities or obligations reflected in the Balance Sheet and current liabilities incurred in the Ordinary Course of Business since the respective date hereof….

といったパターンが一般的ですが、このように売主側に「別途開示したもの、バランスシートに記載されているもの、日々の業務で発生する債務を除いて、いかなる債務も負担していない」と表明保証してもらうことで、これに反する事態が発生した場合は、補償やクロージング義務の免除といった買主の救済につなげていくという仕組みです。

さて、ここで、このNo Undisclosed Liabilities RepresentationのCarve Out事由(例外事由)について見ておきたいと思います。まず、上記の例でも見られるように、売主が別紙(Disclosure Schedule)で開示した債務、バランスシート上に記載されている債務、Ordinary Course of Businessで発生した日常的な債務については、表明保証の範囲外とされるのが一般的です。その他、MAEのレベルに至らない「重要でない債務」についても除外されるケースがあります。この場合、何をもって「重要でない債務」と言うのかについて解釈問題に発展しやすいため、実務上は安易に用いない方が良いと考えますが、もしも「重要でない債務」を除外事由とするのであれば、別紙で内容を特定するなどして、後の紛争につながらないような方法を考える必要があります。

また、もう一点注意したいのは、日本語の契約書でもよく使われる「売主が知る限り」という一言を入れるか否かです。英語では、

To the Company's knowledge, the Company's intellectual property is not subject to any material encumbrances
(訳: 売主の知る限り、売主が保有する知的財産権には何らの担保、負担も付着していない。)

といった書きぶりになりますが、最近では、この「売主が知る限り」という一言は、No Undisclosed Liabilities Representationにはあまり利用されていないようです。売主としては、「知らなかった」と言えれば楽なのでしょうが、買主側から見れば、売主が債務の存在を知らなかったという事態はたやすく容認できるものではありません。実際に知っていたのか、知らなかったのかを巡って、かなり詳細な事実認定も必要となってくるでしょう。よって、「知っていたか、知らなかったか」という問題は抜きにして、非開示債務が出てくれば補償の対象とするといった運用が好まれているようです。

少し脱線しますが、「売主が知る限り」という一言は、<米国におけるM&A契約条項の分析(その3)>で取り上げた「表明保証条項のBring Down」のケースでは効果を発揮しないことがあります。すなわち、例えば、表明保証条項において、「売主の知る限り、売主が保有する知的財産権には何らの担保、負担も付着していない」と書いた上で、これをクロージング時点でも表明保証してもらうことでクロージング条件に落とし込んだとします。一見、有用に見えますが、実は、買主側が契約締結の後クロージング日までに、知的財産権についている負担を発見して売主側に通知すると、その時点で、「売主は知ってしまった」ことになります。よって、この場合、「売主が知る限り」という一言を入れなかったケースと同様に、買主はクロージング義務の履行を拒否できることになります。細かいですが、このように、契約締結時に売主が知らなかったとしても、その後クロージングまでの間に知ってしまえば、結果としてクロージング条件を充たさないことになるケースがあることについては、注意が必要だと言えます。

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