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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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米国におけるM&A契約条項の分析(その1)

弁護士も当事者も、「最近世間では一体どんなディール・テクニックが利用されているのだろうか」ということが気になります。ディール・テクニックは、必ず何らかの理由があって開発され利用されていますので、自分たちの案件が抱える問題点の解決に他社の事例が役立つ可能性があるからです。そこで、今回から数回のシリーズで、米国のPrivate Equity案件(バイアウト案件)(*1)において近年利用されている各種契約条項の「流行」を追いかけてみたいと思います。なお、フォローできる案件に限界があるため、データとしては必ずしも正確でないことをご了承ください。また、アメリカの実務は日本の法制度や文化に馴染まないこともありますので、その点もご注意いただければと思います。

1.買収価格の修正条項(Purchase Price Adjustment)

買収案件における最もシンプルな対価の定め方は、「T社の株式を総額1,000億円で買い取る」といった対価確定型ですが、契約書の締結からクロージングまでの間、あるいはクロージング直後の半年や一年といった期間において対象会社の業績が変動した場合、契約書締結段階で決めておいた買収価格が結果として高すぎた(安すぎた)ということになる場合がありますので、双方合意の上で適切な調整を行なうべく、買収対価を後で修正できる条項を入れるケースが増えています(感覚的には、バイアウト案件ではほとんどのケースで価格修正条項が採用されているように思います)(*2)。

修正の基準となる数値としては、Net Assets(純資産)、Income Statement(損益計算書)、Inventory(在庫)などが使われるほか、最も頻繁に利用されるのがNet Working Capital(正味運転資本)です。なお、買収対価を決める要素はケース・バイ・ケースですので、価格修正の理由となる事象もケース・バイ・ケースであり、上記に挙げた要素以外にも対象会社特有の事情が契約書に盛り込まれることがあります。

なお、価格修正については、買主にだけその権利が与えられるとは限りません。おそらく過半数のケースにおいて、当事者双方に価格修正権が与えられていると思われます。すなわち、買主側に特定の場合における減額権が与えられるのであれば、売主にも増額権が与えられることがフェアであると考えられるため、対象会社の企業価値等の変動に応じて、買収対価が上にも下にも修正されうるということになります。

2.補償条項(Indemnity Clause)における上限額(Cap)

いわゆる補償条項においては、通常、Capを設けます。近年のバイアウト案件でCapを設定しないケースはほとんどないと思われ、Capを設定するケースでは、通常、買収価格の数%から20%程度の数値が利用されているようです。ただし、これもケース・バイ・ケースであり、買収価格と同額のCapを設定するケースもないわけではなく(ただし、稀です)、また、買収価格が高くなればCapのパーセンテージが高くなる、低くなるといった関係もあまり明確には見受けられません。

なお、多くのケースでは、いざ補償が必要となった場合に売主側に支払うお金がなかったということにならないように、当事者で合意した金額をEscrow(エスクロー口座)に入れて別途管理する運用がなされています。


(*1) Private Equity案件とは、プライベート・エクイティ・ファンド(Kohlberg & Co., Texas Pacific Group, Merrill Lynch Capital Partners, The Blackstone Group, Warburg Pincus LLPなど)が非上場会社を買収する案件を指します。
(*2) 価格修正条項を入れない場合には、対象会社がクロージングまでに予定されていなかった配当を行なったり、通常の業務態様(ordinary course of business)を超えて大きな買い物をしたりしないように、別途コベナンツ条項で制約を課す必要が出てきます。

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