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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
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買収価格の算出方法(その3)~DCF法の基礎(3)~

それでは、いよいよ、求めた予想フリー・キャッシュフローとWACCを用いて、将来キャッシュフローの現在価値への引き直しを行ないます。

具体的には、例えば予想期間を5年と設定すると、1年目から5年目までの各年の予想フリー・キャッシュフローを(1+WACC)の年数乗で割って得られた毎年のキャッシュフロー現在価値を5年分合計したものに、いわゆるターミナル・バリュー(企業の残余価値)を加え、最後に対象会社の借入れ金額を控除します。借入れ金額を控除するのは、もともとフリー・キャッシュフローが借入れを除いた営業利益ベースの数字だからです。

ターミナル・バリューは、

予測最終事業年度の翌年度の予想フリー・キャッシュフロー/(WACC-g)

という計算式で算出します。ここで”g”とは、「永久成長率」を意味し、予測される商品総消費量の長期成長率にインフレ率を加えた数字(通常、0~5%程度)が用いられます。ターミナル・バリューを用いるのは、一定期間以降(上記設例であれば6年目以降)のキャッシュフローを予想するのが困難であるため、インフレ率を考慮しつつ、「予測最終事業年度の翌年度の予想フリー・キャッシュフロー」が未来永劫続くと仮定して算出するしか方法がないからです。

さて、DCF法で最も大きなインパクトを与えるのが、WACCやgといった割引率算定のために用いられる数字です。これらの数字が1%変わってくるだけで、DCFの算定結果は大きく変わってきます。特に、ターミナル・バリューはインパクトが大きく、どのような計算を行なってもその結果に関して説得的な説明をするのはなかなか困難です。

例えば、カネボウ事件の東京地裁決定ではgが0%とされていましたが(そのこと自体はそれほど珍しいことではありません)、gの値はターミナル・バリューに大きな影響を与えますので、当事者であれば当然この点を争うでしょう。また、WACCを求めるために使用する株式リスク・プレミアムについても、何年間の平均を取るのかという点を中心として当事者間で揉めやすい点です。カネボウ事件でも、株主側は裁判所が採用した8.5%というリスク・プレミアムに関しては高すぎる(リスク・プレミアムが高いと、株主資本コストが高くなり、WACCも高くなり、その結果、企業価値と株価は低くなります)という批判をしています。

このようにDCF法は、他により説得的な算定手法がないという理由から現在の主流となっていますが、割引率によって結果が大きく異なることから、実務上は、DCFで計算した後に、念のために純資産方式や類似事例比較方式を用いて、DCFで求めた数字の検証を行なうこともあります。いずれにしても、M&A実務に携わる場合、DCF法の基礎を理解しておくことは重要であると考え、今回のテーマとして取り上げた次第です。

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