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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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M&Aの労務(その3)~会社分割における雇用契約の取扱い~

会社分割は、個別の権利・義務移転行為がなくとも事業や権利義務関係が分割会社から承継会社に移転するという点で合併と同じ「包括承継」ですが、合併と異なり、一部の事業や権利義務関係のみの移転が可能な結果(*1)、会社に居る従業員のうち、承継対象事業に従事する人たちだけ新会社に移り、他の人たちはそのまま残るという現象が発生する点が合併とは異なります。この場合、「誰が新会社に移ることになるか」という問題が発生します。

そこで、会社分割に関しては、労働者保護の観点から、<「労働契約承継法」(正式名称:会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)><同法施行規則>および<指針>(*2)が定められています。

原則から確認してみたいと思いますが、会社分割は前述のとおり「包括承継」行為ですので、会社分割によって切り出す事業に従事する従業員として分割計画書または分割契約書に記載された従業員は、特別なプロセスを経ることなく、当然に承継会社に移転することになります。会社分割は、事業譲渡や資産譲渡であれば必要になる「契約の相手方(従業員も含む)」の個別の同意を得ることなく、契約関係を当然に承継会社に承継させる点にメリットがありますから、ここに会社側から見た場合の使いやすさがあるわけです。しかし、従業員からしてみれば、新会社に移りたくないのに強制的に移されたり、逆に、当然移れると思っていたのに自分だけが取り残されて移れないケースも出てきます。穿った見方をすれば、特定の従業員を排除するために予め承継対象事業を行なう部署に配置換えを行い、事業とセットで切り出してしまう、あるいは逆に、新体制下では居て欲しくない従業員を意図的に排除するために分割計画書・契約書にその従業員の名前を載せないというケースもありえます。

そこで、平成12年商法改正と同時に制定された労働契約承継法は、分割計画書・契約書に記載された従業員は当然承継されるという原則論を基本としつつも、従業員を上記のような不利益的取扱いから守るために、会社分割に先立ち労働者の「理解と協力」を得ることを求めた上で(承継法7条)、以下のプロセスを踏むことを要求しています。

(1) 会社の通知義務(承継法2条1項、2項)
従業員の雇用契約が承継されるか否か、また、承継される場合その従業員が今度従事することになる業務の内容・就業場所などは従業員にとって非常に大事なポイントになりますので、会社は、分割計画書等を承認する株主総会の2週間前までに
① 「承継される営業に主として従事する労働者」全員
② 「承継される営業を従たる職務とする労働者」であるが承継対象となっている人
③ 労働組合

に対して、書面により法律で定められた事項を通知しなければなりません。

(2) 従業員の異議申出権(承継法2条1項1号・2号、3条ないし5条)
「承継される営業に主として従事する労働者」であるにも拘らず、分割計画書・契約書に記載されなかった人は、異議申出権を行使することによって承継会社に移ることができます。また、逆に、「承継される営業を従たる職務とする労働者」であるにも拘らず、分割計画書・契約書に記載されてしまった人についても、やはり異議申出権を行使することによって、分割会社に残ることができます(*3)。
異議申出は、上記(1)の通知がなされた日から最低13日間は受け付けなければなりません。よって、スケジュールとしては、例えば6月30日に株主総会を開くのであれば、6月15日に従業員に通知を行い、6月29日に異議の受付けを締め切るといった流れが一般的であると考えます。

(3) 従業員との協議(承継法7条、6条2項、同法施行規則4条)
上記の通知と異議申出とは別に、会社は従業員の「理解と協力」を得るために、労働組合(労働者の過半数で組織する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)と協議しなければならないとされています。
また、それとは別に、更に会社は株主総会の2週間前までに「従業員との個別協議」も行なわなければなりません(平成12年商法等改正法附則5条)。これは、労働計画書等の内容を事後的・一方的に従業員に告知するだけでは、自分がなぜ承継対象なのか(承継対象でないのか)、今後どのような業務を行うことになるのかといった点について従業員がきちんと理解することができないからです。

なお、会社分割の際に労働条件の変更が許されるかという問題がありますが、これについて前記「指針」は、「労働条件はそのまま維持される」べきとしています。また、有給休暇の日数や退職金の算定基礎となる勤続年数についても、旧新会社における「通算」が要求されています。これは、会社分割が「包括承継」であるという考え方に忠実に基づいており、従業員の立場になるべく変化が発生しないようにとの配慮から提唱されているものと言えます。


(*1) 旧商法時代は、少なくとも「事業の一部」の移転が必要でしたが、新会社法になって、「事業に関して有する権利義務の全部または一部」の移転も可能となりました(会社法2条29号、30号)。
(*2) 正式名称: 分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針
(*3) もともと「承継される営業を従たる職務とする労働者」であったがために分割計画書・契約書に記載されてなかった人については、承継会社に移れないことに関し異議申出権を行使することはできません。

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