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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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M&Aにおいて取締役の義務違反が問題となる主なケース

M&Aにおける取締役の義務違反が問題となる主なケースとしては、買収防衛策を導入・実行する場合(取締役の保身の手段として利用される可能性があるため)、M&Aの交渉過程において取引保護条項を利用して他の競合買主を排斥する場合(株主にとってより良い条件のM&Aが排斥される可能性があるため)、MBO(取締役の買主としての利害と株主の売主としての利害が正面から対立するため)などが考えられます。

買収防衛策に関しては、①平時に事前警告型等の防衛策を導入する、②有事に、新株(予約権)を発行する、敵対的TOBに応じないように株主に呼び掛ける、ホワイトナイトを探してきて推薦する、といった具体的状況が考えられますが、いずれにしても、取締役の義務違反の観点からは、手段の合理性に加え、内容の明白な不合理性の有無を問う判例の基準を満たす必要があると考えます。

取引保護措置に関しては、オークション(入札)手続を採用することが取締役の義務違反リスクを最も軽減する方法ですが、実際には、入札手続を選択すると目の前の買主候補が去ってしまう可能性もあり、交渉過程上取引保護措置を入れざるを得ないことが多いものと考えます。しかし、その場合でも、いわゆるFiduciary Out条項や最近アメリカでの利用頻度の増えているGo-Shop条項を利用することで、株主にとって最善の選択をしたと評価できる環境作りが重要になります 。

近時、平時の防衛策に関しては、株主総会の承認を得ることが重視されています。これはそのとおりですが、株主総会にかけることで取締役の義務が消滅するわけではありません(*)。<ヤクルト本社事件>でも、判断の内容面については経営者の判断が原則として尊重されていますが、判断のプロセス面については合理性が正面から検討されています。株主にとってより利益となる他の選択肢があるか否かに関し、十分な情報に基づき検討するその判断過程が極めて重要になると言えます。

(*) 取締役は経営を任されている以上、「株主総会にかけさえすれば、取締役としての適正な判断義務は履行しなくてもよい」というわけではないという意味で、この表現を用いています。実際に、訴訟を起こされて取締役が責任を負担するかといえば、「株主総会の承認を得ている以上、責任は負担しない」と言って良いと考えますが、取締役の行為規範としては「株主総会で判断してもらえれば済む」ではなく、常に義務違反を問われるリスクを念頭に判断しなければなりません。防衛策だけを考えれば総会の判断が一番重要ですので総会にかければ取締役の義務がそこで消滅すると言ってもよいかも知れませんが、取引保護条項については契約書に盛り込まれてそのまま株主総会の承認を経たとしても、その後になって、どうしてオークションをしなかったんだとか、他の会社が手を挙げていたのにどうしてそこに売らなかったんだというような異議が、当該取引に反対した株主から出てくることがありうると考えます。厳密に言えば、ここは、反対株主の救済手段は株式買取請求権に限定されるのか、それともディールそのものの差し止めまで求められるのかという論点につながりますが、取締役としては常に反対株主から責任追及されることを考えておかなければならないと思います。また、総会に提出した議案の中で取締役会が賛成意見を書いたり推薦した場合において、取締役が不十分な資料を元に最善の選択肢と判断した上で推薦していたとすれば、たとえ総会で承認されても、その総会の判断の正当性は根底において揺らぎますので、その場合にやはり取締役の善管注意義務・忠実義務違反の問題にはつながりうると考えます。

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